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Sam Apple Pie – Sam Apple Pie (1969)

 ブリティッシュ・ブルース・ブームの後期に現れたSam Apple Pieのファースト・アルバムは、Andy JohnsonとMick Smithの両名によるツイン・ギターのスタイルでよく知られている。当時はすでにサイケデリックの熱は最高潮を迎えた後で、多くのバンドが何らかのクロスオーバーや、ライブ映えするような気の利いたインプロヴァイゼーションが求められつつあった時代でもあった。本作にもそうした〈風変わりな〉要素がちりばめられてはいるが、やはり根っこの部分ではブルースを掴んで離さない。半ばタイトル・トラックのような趣きの「Uncle Sam's Blues」などは、ある種彼らの頑固さの表明のようなものだ。
 サイケとは違った浮遊感のある「Annabelle」は美しいラブソングである。Fleetwood Macの「Albatross」を意識したぼんやりとしたリズムと酩酊的なコーラスが印象に残るが、二人のプレーヤーが繰り広げる静かなギター対決も十分に印象的だ。
 Elvis Presleyで有名になった「Tiger Man」や、泥臭い7分越えのハード・ロックである「Moonlight Man」のように激しいナンバーもある。長尺曲としては重厚なブラスをフィーチャーした「Winter Of My Love」もあるが、この中で炸裂するギターから察するに、やはり彼らに影響を最も与えているのはMacのようだ。
 バンドのセカンドは、紆余曲折と数年のブランクを経てイギリスのインディー・レーベルであるDJMから発表されている。『East 17』というタイトルで、古き良き雰囲気を醸すロックンロール・カバーが含まれたこのアルバムは、実際本作よりもストレートなロックを展開しているのも興味深いところだ。