Jimmy Smith – The Cat (1963)
1962年にヴァーヴ・レーベルに移籍したJimmy Smithは、本作でついにLalo Schifrinとの本格的な共同作業を果たすことになる。ブルーノートでは叶わなかった大々的なオーケストラを率いて録音されたヴァーヴの諸作は、Smithの新境地を惜しげもなく切り拓いていった。
まずは豪華な映画音楽だ。同年公開のフィルム・ノワールのためにSchifrinが書いた「Theme From "Joy House"」は、始まりは不穏に、そしてだんだんとオーケストラと呼応するようにSmithのソロが熱を帯びていく。続く「The Cat」で彼のオルガンとまるでダンスを踊るようにギターを絡めていくのは、いつにも増して軽快なKenny Burrellだ。
一方で、「Basin Street Blues」や「St. Louis Blues」といったブルースの古典が、ファンクやラテン調に生まれ変わってもいる。Smithのオリジナルである「Delon's Blues」は、俳優のAlain Delonに捧げられたミディアム・テンポのブルースだ。彼の十八番である熱っぽいブルース感は、ラスト曲の「Blues In The Night」まで続いている。ただ豪快なだけではないのがSmithのオルガンの魅力でもあるが、特にこの曲で披露されるソロの繊細さには思わず息を吞む。
本作でもそうだが、Smithの肩書きには常に〈インクレディブル〉だとか〈ファンタスティック〉といった最上級の形容詞がついて回っていた。オーケストラにも負けない彼の圧倒的なファンキー・サウンドは、どんな言葉で賛美してもしすぎることはない。