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Parcels – Live Vol.1 (2020)

 Parcelsによるこの挑戦的なライブ録音は、2020年の春に彼らの〈隔離先〉となったベルリンのハンサ・スタジオで行われた。YouThubeで公開された1時間にわたる映像の中には、ニューウェーブの聖地で粛々とバンドが音楽を作り出す様子が捉えられている。
 無観客が強いられる現在の風潮に合わせたコンセプトとも受け取れるが、かねてから24トラック・テープでの完全なスタジオ・ライブを望んでいた彼らにとっては、これは昔ながらのやり方でアルバムを作る絶好の機会でもあった。〈このビデオは2年も前から計画されていたんだ。僕らが最初のレコードを作るより前からね〉と彼らは語る。
 Parcelsは際立って目立つボーカリストを持たないが、代わりに美しいコーラスの才能がすべてのメンバーに等しく与えられている。そして、観客を相手にする必要がないスタジオに満ちているのは、完璧な音楽を生み出すための一体感と心地よい緊張感だ。
 「Overnight」はDaft Punkがプロデュースしたことで話題になったナンバーで、フレンチ・テクノのエッセンスと彼らのファンクネスがぴったりとはまった名曲だ。インストの新曲「Elude」でPatrick Hetheringtonが披露するキーボードのソロは、本作の中でも最高の瞬間とも言うべき出来だ。Louie Swainの表情は、楽曲の合間合間にラジオのつまみをいじってノイズを演出する時も真剣そのものだ。引き出しの多いギタリストJules Crommelin(なんともThe Beatles的な風貌だ)は、ファンクからサイケまで幅広いプレイで聴く者を虜にする。
 70年代の音楽雑誌から飛び出したようなファッションや80年代的なディスコのサウンドにとどまらない、数えきれないほどの要素がこの作品には詰まっている。しかし、Parcelsの持つポップ・センスはどこか時代を超越しているようにも映る。レトロ趣味を楽しめるのはいつだって最先端の人間なのだ。