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なぜ1本1000万円の時計が在庫切れで買えないのか?

私は機械式時計が好きで収集しています。
妻はカバンが好きで収集しています。

それらを集めているうちに、ハイブランドそのものの魅力や戦略、存在意義などを考える機会が増えました。

今回は、ハイブランドに関する分析をご紹介します。

高いリセールバリュー

私はお金を無駄にしたくはないので、価値が下がりにくく、リセールバリューがあるものを意識して購入しています。特にロレックスがそうです。

いつでも換金することができるので、「モノを買った」や「金が減った」と思っていなくて、お金をモノに一時的に変えただけという感覚があります。

希少で正規店でなかなか買えないものの場合、中古屋にそのまま持っていけば利益が出てしまうものもあります。なので、お金を払ってお金を買っているような感覚になることがあります。

ブランド物の一部はヴィンテージ品になって後に値が上がることもありますから、趣味と投資を兼ねている人も珍しくありません。そういう人は、株式を買うか不動産を買うかロレックスを買うか、といった比較をしていることもあるようです。

また、フリマアプリや並行店、中古店の流行もハイブランドの敷居を下げました。昔は「背伸びしていい財布を買う」という感覚があったと思います。しかし、今では「買っても同じ値段で売れる」ということで、気軽に中古のブランド品を楽しむ文化が醸成されています。セカンドマーケットが身近になりました。

人間関係の希薄化

現代社会では、交通網の発達により、人が集まる場所ができました。生活していても多くの人に接します。空港や駅、商業施設などは人でごった返しています。希薄な関係で多くの人に接する社会といってもよさそうです。

また、オンラインでの人間関係も出現しました。SNSでのフォロワーとの浅い関係などはその代表です。

以前は、「近所の人」や「お隣さん」という概念がありました。サザエさん的な世界観です。

ところが、今ではマンションの隣にだれが住んでいるのか知らないというケースも珍しくありません。リアルでの人間関係が希薄になっているのです。

昔は「(こんな狭い世間で)悪目立ちしたくないからハイブランドはいらない」という考えがあったと思います。たしかに、サザエさんがバーキンを買ったら、悪目立ち以外の何物でもありません。メリットよりもデメリットが多いでしょう。

しかし、現代では人間関係が希薄になったので、「私はお前らとは違う」「舐められたくない」といった感じで、地位向上を図るためにハイブランド品を購入する人が多いことと推察されます。

一言で言いますと、「自慢がしやすくなった、自慢することの影響が大きくなった」といえると思います。

コミュニケーションツールとしてのハイブランド~限られた階層での連帯感~

また、ハイブランドには上流階級でのコミュニケーションツールという側面もあります。「その時計、リシャールミルでしょ?私も集めてるよ」「そのバーキンは珍しい色だね。入手するの大変だったでしょう。」などと会話が弾み、連帯感が得られるでしょう。

つまり、「お前らとは違う」という感覚と、「私たち一緒だね」という感覚が両方得られるのがハイブランドの魅力です。

富が二極化した現代社会とハイブランドは相性が良いようです。

識別機能


有名なブランドはだれが見てもわかるようなアイコニックな商品をラインナップしています。

エルメス:バーキン、ケリー、ピコタン
ロレックス:デイトナ、サブマリーナー、GMTマスターⅡ、エクスプローラー、デイトジャスト、デイデイト
オーデマ・ピゲ:ロイヤルオーク
パッテックフィリップ:ノーチラス、アクアノート、カラトラバ

車ですと、メルセデスベンツのゲレンデとかランボルギーニ、フェラーリが該当します。

識別機能が高い商品とは、簡単に言えば、「その時計ロレックスじゃん!!」「その車ランボルギーニじゃん」と他人から言われるような、「一目であのブランドとわかる商品」ということです。

ハイブランドの格が上がれば上がるほど、識別機能が高い商品を多数抱えています。

余談~識別機能が弱い商品はブランドロゴが重要~

一方で、セダンは、識別機能はあまり高くありません。セダンという形にあまり特徴がないためです。

ドレスウォッチも識別機能は高くありません。革ベルトに個性が出しにくいのと、ベゼルが薄くケースデザインをそこまで差別化できないという事情があります。

そういった商品はブランドロゴが重要になっています。ハイブランドのTシャツなどはその最たるものです。また、いわゆるビックロゴの商品は商品デザインそのものはノーマルであることが多いというのも興味深いと思います。

人気商品はマイナーチェンジのみ

ブランドの顔としての商品を、長い年月をかけて販売し続けることで、認知度を上げていき、識別機能を高めるというのがハイブランドの戦略です。

したがって、人気商品は基本的にマイナーチェンジです。築き上げた商品のイメージを毀損しないように慎重にアップデートされていきます。

そうすることで、高い広告費がかかっていても、そのモデルやブランドそのものが認知され続けます。広告の効果が蓄積されていくようなイメージです。年月をかけて、世代をまたいで、ブランドや商品が認知されて行きます。

メーカー買いが多い~顧客になるということ~


最近では、メーカー買いが多いです。

どういうことかというと、「私はパテックフィリップの顧客だ」や「私はランボルギーニの顧客だ」というように、正規販売店でお付き合いをしながら継続的に購入していく人が増えました。

現代では希少性が高い商品のほうが売れるので、メーカーもあえて供給を制限しています。

ですので、購入者はいろいろなメーカーのものを買いそろえるよりも、特定のメーカーの顧客となり、定期的な購入で信頼を勝ち取り、希少性の高い商品を売ってもらうという戦略をとっています。

ブランド側も、人気商品を作るというだけでなく、ブランドそのものの価値を高めていくブランドが多いです。

歴史あるメーカーが躍進する現代


また、購入者側も、メーカーには歴史や信頼を要求しています。

特に、歴史は重んじられており、腕時計でいうと、基本的には古くからあるメーカーが人気です。

歴史が重んじられるということは、振興ブランドが生まれてこないということになります。

腕時計でいうと、「ノルケイン」は2018年に設立されたスイスメイドの機械式腕時計ブランドですが、なかなか今後も苦戦すると思いますね。

また、保証やバックアップ体制なども考慮されますので、巨大なロレックスやメルセデスベンツなどはやはり強いです。

メーカーの立場が上になり、客はしもべに成り下がる

そうなってくると、老舗ブランドが神格化、重鎮化していくことになります。誤解を恐れずに言えば、権力を握るようになるのです。

エルメスやパテックフィリップにしても、顧客はしもべにすぎません。

お金を払う人が、「お売りください」といって、メーカーに懇願しているのです。

熱狂のための苦しみ

しかし、心理的には、それでいいのです。在庫がありませんというのは苦しみですが、同時に魅力でもあるのです。

心理学的な話になってしまいますが、熱中するには苦しみや負荷が必要なので、「驚くほど値段が高い」や「珍しくてかなり手に入れるのが難しい」というのは、購入者からすれば心理的に魅力的な商品なのです。

ですので、繰り返しになりますが、販売価格は高いほうがいいのです。それも、驚くほど高いほうが現代では売れます。ハイブランドの特定の所品はモノではなく記号になっているのです。

リシャールミルの躍進

リシャールミルというのは、とても興味深いブランドです。

2001年に誕生した若い時計ブランドで、時計界のF1をコンセプトに発足したそうです。時計の価格は1本1000万円以上します。

とにかく、「値段が高く」「希少性が高い」のが特徴です。そこに、現代人は酔いしれました。

また、アイコニックなトノー型(樽型)のデザインや、カーボンなどの新素材、超複雑機構など、商品群の識別機能も非常に高い水準です。

新興ブランドで唯一成功したブランドといっても過言ではありません。

さいごに

ハイブランドを様々な側面から論じてきましたが、現代では浪費家(自己顕示欲が強い人)が買うというわけではないというのが面白いと個人的に思っています。

金無垢のロレックスなんて、昔は悪趣味な成金や反社のアイテムでした。

というより、ハイブランドは、芸能人、夜の人、経営者のためのものでした。

ところが、今ではその裾野が広がり、さまざまな人がハイブランドを愛用しています。

倹約家、投資家、転売屋、知識層、経営者。

本当に様々なバックグラウンドの人がハイブランドを求めますが、それぞれに意味合いは異なるでしょう。

資産価値に重きを置く人は、倹約家や投資家の側面が強いです。
ビジネスアイテムとして、相手からの信頼を得ようという人は、経営者や営業職の人かもしれません。
目立ってなんぼ、という人もいるわけで、夜のお店の人ももちろんハイブランドが大好きです。舐められたくない、成り上りたいという人にハイブランドはピッタリです。Youtuberもハイブランド大好きですよね。
また、みんなが持っているから自分も欲しいという人もいるでしょう。医局の先輩が持っているから、なんてよくある話です。

ロレックスにいくと、店の前に列ができていることがあるのですが、服装を見ていると多様で面白いですよ。

Tシャツ・短パン・サンダルにリシャールミルをつけている人は経営者っぽいです。「俺は誰にも縛られないから普段からこんな適当な格好だよ」という自慢をしたいのかもしれません。
上下ユニクロに金無垢のデイトナなんて人もいます。こういう人は倹約家でFIREを狙っているのかもしれませんね。
もちろん、スーツの人もいますし、全身ルイヴィトンという人もいます。

ロレックスは守備範囲広いな~なんて思いましたね。
むしろ、そこから本noteの着想を得ています。

今回は最後までお読みいただきありがとうございました。
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最後に、いくつかおすすめのブランドをご紹介します。

おすすめブランド

腕時計はパッテクフィリップ、ロレックス、オーデマ・ピゲがおすすめです。
かばんはエルメス、シャネルがおすすめです。

いずれも、独立しているブランドであることと、歴史があるブランドであるという特徴を有しています。

腕時計では、ランゲアンドゾーネやヴァシュロンコンスタンタンも有名ですが、リシュモングループに属していて独立していないため、私の中では評価が低くなっています。

カルティエはダークホース的存在で、リシュモングループに属していますが、識別機能が極めて高く、希少性もあることから最上級モデルであるCPCPは資産性が保たれるでしょう。

リシャールミルは、諸刃の剣です。今は勢いがありますが、歴史がないのと、どうしても「飽きられやすそう」なデザインをしているので、私は買いたいと思いません。ロイヤルオークオフショアあたりを買ったほうが、安定感あると思います。

かばんはLVMHに属しているものは、基本的に資産性が乏しいです。どうしても買うのであれば、ルイヴィトンを中古で買い、きれいに使っていれば、大きな値落ちはしないと思われます。

この度は、最後までお読み下さりありがとうございました。

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