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「会って、話すこと。」で幸せになるために必要なことを考える

大阪人がツッコミを全否定した本.なぜなら,日常会話でツッコミをする人は不機嫌そうに「私は賢くて,お前はバカ」と言いたいだけだから.クソリプも同様.オチを求める奴も同罪.価値があるのはボケのみ.

あのスティーブ・ジョブズも "Stay foolish!" と言ったではないか.そんな話から始まる.いや,それが書いてあったのは中盤だったか.まあどうでもいい.

会って、話すこと。
田中泰延,ダイヤモンド社,2021

本書「会って、話すこと。」を書いた目的を,著者の田中泰延氏は次のように書いている.

この本は,他人との会話を重ねる中で,
・自分のことをわかってもらおうとして苦しんでいる人
・他人のことをわかろうとして苦しんでいる人
こんな思いをしている人に楽になってもらいたい,その一心で書かれた.

なので,該当する人は読もう.読む価値はあると思う.それに面白いし.

なお,会話のハウツー本ではない.まったくない.本文中にさらっと書かれているけど,会話について書くことになって,書店の会話術のコーナーに行ってベストセラーなど40冊ほどを買って読んだと書いてある.徹底的に調べるという田中泰延氏の姿勢はこういうところにも現れているのだと思う.前作「読みたいことを、書けばいい。」には「物書きは調べることが9割9分5厘6尾」とあった.

その上で,どの本にも判で押したように同じことしか書いていないと指摘する.傾聴が大事だの,相槌を打てだの,そんなことばかりだと.

これは,「結局,人間は他人の話を聞きたくない」ということではないか.

そうであるならば,「わたしの話を聞いてもらわなければならない」とか「あなたの話を聞かなければならない」とか,そういった考えを捨てたら楽になると,著者は言う.「それこそ,わたしが会話において,ずっと意識してきたことなのだ」と.

本書では,会話で幸せになるために必要なこととして,仮説を提供する「ボケ」に加えて,「知識」が挙げられている.

なぜ人は勉強する必要があるのか?
それは世の中の「おもしろい会話」「楽しく盛り上がる話」のほとんどが「知識」をベースにしているからである.
だから「知らないと何もおもしろくないし,楽しそうな会話に入れない」のである.

加えて,機嫌よく生きることの大切さも書かれていた.それで思い出したのが,いや忘れていたわけではないのだが,今年の元日に掲げたのが「いつも機嫌よくいること」だったことだ.

これは本当に大事だと思う.会話以前に.

本書「会って、話すこと。」を楽しく読んだが,ドキッとしたところがあった.

エトスなき会話は虚しい.もし,あなたがだれかになにかを伝えようとするなら,世界をどう捉え,世界とどう向き合うか,つまり哲学をも持たなければならない.

これが一つ.もう一つは距離感についてで,おかしい人は「距離の取り方」がおかしく,詰めすぎ・踏み込みすぎであると指摘されている.

自分がするべき仕事をしたり,自分にしかできない能力を発揮すれば,他人が距離を縮めようとしてくれる.そうなればあなたが応じるか,応じないかを決めることができる.それが主体的に生きるということなのだ.

まさにその通りだろう.

大きい文字でページ数を稼いでいる本なので,すぐに楽に読める.それでいて面白いので,お勧めしたい.

UNICORNファンの家人は,本書の帯に「奥田民生」の文字列を発見して反応していた.タイトルはどうでもよさそうだった.

© 2021 Manabu KANO.

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