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バイブル「モルトウイスキー・コンパニオン」で最高得点を獲得したウイスキーは?

本格的にウイスキーを飲み,勉強するなら,どこかのタイミングで手にする本だろう.バイブルと言える.

Michael Jackson's Malt Whisky Companion

本書「モルトウイスキー・コンパニオン」の初版は1989年に出版されてベストセラーになった.その著者であるマイケル・ジャクソンは2007年に亡くなったが,彼の遺志を継いで,ドミニク・ロスクロウとギャビン・スミスによって2015年に出版されたのが,この改訂第7版である.改訂第7版の日本語訳は2021年に出版されたので,かなり時差がある.

モルトウイスキー・コンパニオン 改訂第7版
マイケル・ジャクソン (著),山岡秀雄 (翻訳),土屋希和子 (翻訳),パイインターナショナル,2021

全体で400ページを軽く超える分厚い本だが,最初の70ページで,シングルモルト・スコッチウイスキーを中心に,モルトウイスキーの起源,ラベルの読み方,地形がフレーバーに与える影響,スコットランドにおける地域差,熟成と樽などについて解説されている.とてもよくまとめられている.

そして,約300ページを割いて書かれている本書の主要部分は,シングルモルト・スコッチウイスキーのテイスティング・ノート「シングルモルトのA to Z」である.

テイスティング・ノートはハウス・スタイルに関するコメントから始まる.ハウス・スタイルとは,熟成年数とボトリングの違いから生まれる多様性を知る以前に,それぞれの蒸留所の製品に何が期待できるか,その全体が一瞥してわかるものである.各蒸留所のウイスキーを一番美味しく飲める機会も示している(夕食の前とか,就寝時に本を読みながらとか).

モルトウイスキー・コンパニオン 改訂第7版

ここでは,「モルトウイスキー・コンパニオン 改訂第7版」で最高得点94点を獲得したシングルモルト・スコッチウイスキーをメモしておく.なお,テイスティング・ノートに書かれている,色・香り・ボディ・味・フィニッシュのうち,香りと味のみを示す.

点数については,以下のように説明されており,94点のシングルモルト・スコッチウイスキーはどんでもないレベルであるとわかる.

テイスティング・ノートには100点を満点とした点数がつけられている.・・・本書で50点台につけられたものは,私の見解ではバランスに欠け特徴がないモルトを指しており,公正に考えて,恐らく決してシングルモルトとしてボトリングするつもりはなかったものであろう.60点台は楽しむことはできるが,平凡なモルトを指している.70点台であればどんなものでも味わう価値がある.とくに75点以上がそうである.80点台は,私の見解では他とは比較できないほど際立っている.90点台は偉大とした言いようがない.

モルトウイスキー・コンパニオン 改訂第7版

最高得点94点を獲得したシングルモルト・スコッチウイスキーは僅か5銘柄である.

ブローラ 35年 スペシャル・リリース 2014,56.3度

蒸留所:CLYNELISH(クラインリーシュ/クライヌリッシュ),北ハイランド
香り:煮たレモン.ドロップ.肉のよう.蜜蝋.蜂蜜.埃っぽいスモーク.
味:蜂蜜のよう.甘いタンジェリン.メープル・シロップ.ライチ.甘い洋ナシ.底には土っぽいピートと穏やかなパプリカ.ソフトなリンゴ.マジパンの痕跡.

ザ・ダルモア 64年 Trinitas(トリニタス),40度

蒸留所:THE DALMORE(ザ・ダルモア),北ハイランド
香り:みずみずしく,複雑.イチジク,ナツメヤシ,マンダリン,バニラ,焼きリンゴ,シナモン,温かいレザーをともなう.
味:ダイダイ,糖蜜のトフィー,プレーン・チョコレート,リコリス.

グレン・ギリー 1986,54.6度

蒸留所:GLEN GARIOCH(グレン・ギリー),東ハイランド
香り:レモン.クリームの中のピーチ.タバコの煙.
味:ビッグ,甘く,リッチで,風味が強いピーチとリッチなクリームをともなう.風味が強く,非常にフルーティ,アルコールの入ったシャーベットのよう.絶対的に優れたウイスキー.

モートラック 18年,43.4度

蒸留所:MORTLACH(モートラック),スペイサイド
香り:トロピカル・フルーツ.過熟のリンゴ.甘いミックス・スパイス.バニラ.ヘーゼルナッツ.
味:糖蜜.色の濃いトフィー.多くのスパイス.よりトロピカル・フルーツ.キャンプのコーヒー.チョコレート.いくぶん甘いフルーツ.

タリスカー 18年,45.8度

蒸留所:TALISKER(タリスカー),スカイ島
香り:海辺.ピート,海草,リッチな胡椒.
味:素晴らしく,リッチ.典型的なタリスカーだが,10年物よりリッチ.たくさんのリッチなフルーツ.オークとピートは後からくる.

ザ・ダルモア 64年という超長期熟成ウイスキーが最高得点を獲得している一方で,モートラックやタリスカーは18年と比較的短い.実際,同じ蒸留所のモルトウイスキーであっても,熟成期間が長いと点数が上がるというようなことはない.

それにしても,64年とは化け物ウイスキーだ.そんなに樽で熟成できることに驚く.価格も凄まじく,10万英ポンド(2010年時点で約1300万円)で購入されたらしい.

世界最高額の10万英ポンド、日本円約1300万円でウイスキーが購入された。売れたのはスコッチシングルモルト「ダルモア64年トリニタス」(写真)。限定3本の超レアモルトで、ウイスキー愛好家や一般投資家が手にした。同ブランドを輸入販売する明治屋が12日、発表した。トリニタスとはラテン語で「三位一体」の意。ダルモア蒸留所マスターディスティラー、リチャード・パターソン氏は「2度と造ることのできない唯一のもの」としている。

日本食糧新聞社


Dalmore 64-year-old Trinitas

これら94点を獲得したシングルモルト・スコッチウイスキーとは言わないが,90点台のをいくつか飲んでみたいと思っている.

© 2023 Manabu KANO.


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