尾張徳川家の至宝
夏休み、予定していた広島帰省がなくなり、妻は風邪気味で体調不良。夏休みの課題はそれなりにあるという状況。連日、朝、喫茶店に行き、原稿書きなどしていた。しかし、せっかくなので平日できないことがないかなぁと思っていたお盆ど真ん中の8月15日。午前中、原稿の合間に美術館の情報を調べてみると、サントリー美術館の情報が目に入った。展示は「尾張徳川家の至宝」展。私の訪問診療の現場の1つでもある戸山ハイツは、尾張徳川家の下屋敷跡ということもあり、多少の親近感もある(ちなみに独身時代住んでいたアパートは下屋敷内にあった池の底にあった)。すぐに思い立ち、至宝に会いに行くことにした。
六本木の東京ミッドタウンは何度か行っているが、その中のサントリー美術館は初訪問。思い立ってからサントリー美術館の入口まで30分弱。思い立てばこんなに身近にあるのかと痛感した。
休日ということもあり、多くの観覧者で賑わっていた。展示品はもちろん江戸時代のものもあるが、それ以前の南北朝から受け継がれたものもあり、展示カードを見ながら日本の中世にタイムスリップ。ある太刀の所有者は、「織田信長、明智光秀、…徳川綱吉、…」と歴史上の人物が並んでいた。もちろん、日常的に保持していたわけではないだろうが、歴史があって今があることを痛感した。
展示品は刀剣や衣服、陶磁器や茶道具など多岐にわたる。その1つ1つに歴史と物語があり、その次代を想像するだけでも楽しい。歴史に詳しい訳ではないし、美術、骨董品に明るい訳でもないが、当時の美意識の高さは感じ取れた。
意外なこともあった。歴史的な展示品ばかりだが、古臭さを感じない。いや、新しさを感じるものも多かった。中世のものであれば重厚感があり、少し薄暗い色合いをイメージしていたが、イメージで言うとどれも鮮やかだった。それも贅を尽くした金ばかりでなく、モダンな青であったり、きれいな赤だったり。言われなければ中世と思えないものも多かったように思う。ある衣装などは、このまま羽織って原宿を歩く女性がいてもおかしくないなぁと思うほどだった。
同時に「国宝 源氏物語絵巻」の一部展示もあった。ここは人が多く、十分に見れなかったが、12世紀前半の作品が目の前にあるというだけで興奮した。現代ならともかく、1000年近く前から現代までこのような状態で保存してきた技術にも感銘を受けた。
2024年8月15日(木)、サントリー美術館にて。