【病院で働くということ】・・・Vol.27:業績目標は病院経営に必要か?
【病院経営における業績目標】
公立の病院ではあまりなじみがないかもしれませんが、民間の医療法人や病院では月単位や年間の売上目標などが診療科・部門・医師ごとにそれぞれ設定されることがあります。
私は以前勤めていた中規模病院で診療科の責任者だっこともあり、経営陣から年度初めに売上目標を(やや一方的に)設定されていました。
しかし、このような業績目標は病院や介護施設にはそぐわない印象があります。
【病院における業績目標の意義】
病院の収入である診療報酬は国が定めた公定価格です。収入増・売上増を目指すには診療する患者数を増やし単価を上げる必要がありますが、
一般企業のように保険診療を行う病院・医療法人は広告に対して非常に厳しい制約もあります。
スーパーのように診療の値段を下げて集患を図ることは出来ません。
(自由診療の場合はこの限りではありません)
【病院経営者の考え方】
そこで経営者は
「ベッドの稼働率を上げろ」
「急患(救急車)は断るな」
と現場に指令を出すわけですが、
現状ではベッドの稼働率を上げるため
患者さんの入院期間を延長(退院調整)
すると平均在院日数が伸び、診療報酬が下がる要因になります。
また急患を見境なく受け入れていれば
現場スタッフが疲弊するばかりでなく
重症患者であった場合に高次医療機関へ転院搬送する可能性もあり、
十分な事前情報なく患者さんを受け入れることは最終的に患者さんの不利益になることがあります。
現場のスタッフはそのような状況に陥らないよう日々様々な取り組みをしていますが、
現場に意識が向かない経営者は数字だけを追い求める傾向にあり、あたかも現場や患者を軽視するような業績成績向上を命じることがあります。
【実績は臨床現場の奮闘の結果だ】
あくまで病院の売り上げ実績は、
患者さんを診療し
診療報酬として受け取った総額
です。
病院も民間企業と考えれば
黒字経営を目指すのは当然であり、
当然経営計画や売上目標は立てるわけですが、
その数字にこだわるばかりに医療の質や患者・地域のニーズに合わない診療を提供し続けることは避けなければいけません。
あそこの病院はすぐに検査をする
なぜか余計にお金がかかる
といった風評は病院のために決していいことではありません。
【結論としては…】
業績の目標は目標として、
それを超えるために必要な方法を考える前提
とし、
決して現場に無理強いすることがないように
する。
目標未達の場合は、
その原因がどこにあるのか
経営・現場一体となって考える
必要があると思います。
目標に達していればよし、
未達はダメ、
と簡単な線引きは、持続可能な病院経営とは言えないと考えます。
以前に書いた、「経営者が現場の感覚を無視して稼働率を気にしている」内容の回です。
ご参考までに。
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