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【病院で働くということ】・・・Vol.18:有能なスタッフほど早期退職しがち

 有能で将来の病院を背負って立つと期待されていたスタッフに急に退職されてしまうことをよく聞きます。病院としては働き手としての欠員というだけでなく、将来の病院の中核スタッフになるべき人材が流出することになり大きな痛手となります。これは病院に限った話ではありませんが、国家資格を有する病院の多くのスタッフは転退職へのハードルが他業種よりも低く、人材活用において大事な要素だと思います。

 有能なスタッフ

 周囲とのコミュニケーションも良好で、視野が広く、業務も効率的にこなす有能なスタッフは、年齢や経験値にかかわらず現場において一目置かれる存在となり、早い時期からリーダー的な業務も求められることになります。
 通常業務に加えて他部署との調整や、上層部からの指示を現場に伝達・浸透させていくことなどにより、病院内での人間関係や業務内容などをより俯瞰的に見ることが出来るようになります。
 
 そういった業務こなしているうちに、優秀な人ほど院内に存在する多くの問題点や課題、さらに組織内の矛盾などに気付くことになります。

上層部との壁

 責任感が強い人ほど直属の上司やさらに上の上席者に問題点を指摘し、改善を提案することになりますが、指摘事項が的を射ていればいるほど上層部にとっては耳が痛い内容になるはずです。

 既に検討済みの案件だったり、様々な院内ルールやその時点では不可侵となってしまっている内規により現状の改善が見込めない場合、やむを得ず上層部は黙認しなくてはいけなくなります。黙認で済めばいいですが、時と場合によっては「これ以上口を出すな」、と釘を刺すこともあるかもしれません。事情(ブラックな人間関係などは中々新人管理職には伝わらない)を知らされず、ただ正しいことを指摘しても押さえ込まれる様な組織に未来はない、と指摘した側は幻滅することは間違いありません。
 
 責任感が強い人ほど、上層部と対立し、問題を棚上げされた状況を許容できません。
場合によっては
「この組織は腐っている、このままここにいても仕方がない」
という結論に至り、退職を決意することになります。

 ただ所属する組織への愛着(育ててもらった恩義、引き立ててもらった謝意)があればあるほど、退職に至るまでの決意には相当なエネルギーを要しますし、心身ともに疲弊します。
 

有能なスタッフをつなぎ止めるには

 このような事態を避けるには様々な意見を吸い上げ、現状で出来ることと放置せざるを得ないことを理路整然と、大人の事情も踏まえながら上席者が説明することが必要です。有能なスタッフの仕事への熱意を冷ますことなく、可能な限り指摘された課題点を組織運営の改善につなげていきたいものです。
 上層部も耳の痛い話はなるべく避けておきたい心理も働きますし、正論を述べる人間を取り込んで意のままに動かすことは難しいことも理解しているはずなので、なかなか上手くかみ合わないことが多いと思います。
 
 ただ組織の活性化の熱量が奪われれば、今後の成長やさらには新しい人材の確保も難しくなります。
 病院管理者は、元気で組織への愛着を持ち責任感と正義感を有する人材を気持ちよく働いてもらう環境を提供することが求められます。
 人材育成は人材活用と不可分であるということであり、管理者の力量がより求められるということです(自戒を込めて…汗)。


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