もう一つの振袖火事について
振袖火事というと明暦の大火ともよばれる江戸時代の大火事が有名である。
寺小姓に一目惚れした娘が、恋の病で食も進まず、病に落ちる。
不憫に思った家族が寺小姓が着ていた服と同じ柄の振袖を作って慰めようとするが、治らず娘は終に死んでしまう。
不憫に思い、娘の葬儀の際は、その振袖を一緒に埋葬したが、あろうことか住職が、その振袖をこっそりと転売してしまう。
すると、その振袖を買った娘が病死。
次の娘も病死、ということが繰り返され、供養のために、その振袖を寺内で焼こうとしたところ、炎に包まれた振袖が、風にあおられ飛び上がり、江戸の街を焼きつくしたという話だ。
奇妙なことに、地方でも同様の話がいくつかある。
新潟のある町での伝説もそうで、娘が若くして死んで、住職が、こっそりと転売するという話も同じ。そして、振袖を寺内で焼こうとしたら、街を焼き尽くすというところまで同じだ。
おそらく、その町で大火事があった際に、明暦の大火を知っていたものが、そんな噂を流したのだろう。
ただ奇妙なことに、そこは寺町と呼ばれているのに、寺が一つもないのだ。
なんとなく、因縁があったということだけは分かる話ではある。
(ここまでで10分)
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