新潟の訛ことばについて
ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聞きにゆく
石川啄木が歌ったものだが、故郷というものは、妙な思いがあるもので、そこで暮らしている時は空気のようなものだが、一たび離れると、お国言葉が懐かしくなる。
そればかりか、同郷というだけで、妙な連帯感が生まれ、心を許しがちになる。
頑固者 お国訛りで 扉開け
訪問セールスはいらないと思っても、同郷の言葉を使われると、思わず扉をあけてしまう。
私の故郷の言葉である新潟弁は、そこまでイントネーションや、語尾に特徴が無いので、一見標準語のように思えるのが曲者で、時々、標準語のようにして、まるで違う言葉をつかってくる。
暑い日は、危険だ。
バッグの中に入れていた、のど飴。個包装を開けて思わず飛び出る言葉。
「ないてる」
周囲の人には、泣いている人など見えないものだから、ちょっと不気味になる。
新潟弁では、暑さなどで溶けてベトベトになることを「なく」と言うのだ。
夏の暑い日などは大変だ。
「飴がなく、チョコレートがなく、徳光和夫が泣く」という感じとなる。
あるドラマ、俗にトレンディドラマといわれていた、バブルでお洒落なドラマにも新潟弁の魔の手が降りかかった。
主人公の同僚の、いけ好かないプレイボーイ。
シティボーイを気取っている男が、仕事でお客さんの機嫌を損ねた時のセリフ。
「言い方が悪かったのか、お客さんが鼻を曲げちゃって・・・」
新潟では、機嫌を損ねることを「鼻を曲げる」と言うのだが、そうでない人たちは、このセリフが何を言っているのかが分からない。
脚本家と監督が、どちらも新潟出身だったため、それが分からずに、放映され、かくしてシティーボーイは、本当は新潟出身の田舎者であったと気づいたしだい。
(ここまでで10分)
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