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タイ焼きの尾の餡子

 世の中には、知っていても無駄な、というか知っていると厄介な知識というものがある。
 と言っても陰謀論などでは無く、もっと些細なものだ。
 「タイ焼き」の尾の餡子も、その類のものだ。

 これは、かつて文壇でも論争になったことであるそうだが、「尾まで餡子が入ったタイ焼きは有りか無しか」という話だ。

  昔は、タイ焼きは尾まで餡子が詰まっているものは少なかった。
 なぜなら、タイ焼きはもともと職人のおやつで、作業で手が汚れている職人は尾を持ち手としてつまんで食べていた。
 そして汚れた手でつまんだ尾の部分は捨てていた。
 だから、尾まで餡子が入っているものではない。
 と、その説を聞いた私は、その時から何となくタイ焼きの尾を食べるのに、小さな罪悪感というかモヤモヤを浮かべる。

 桜餅を包んでいる桜の葉を食べるか,否かというものもある。
 塩漬けの桜の葉は、さして美味しくも無いが、桜餅の甘さの口直しにはよい。
 しかし、これは食べないのが正解だと言う。
 古来、桜餅は河原での行楽の際に、食べるもので、その際には「川の方を向いて食べる」方が風情があってよろしい。
 だから、桜餅も「皮をむいて食べる」のだとか。
 この駄洒落に困惑され、私は桜餅の桜の葉を食べることに躊躇している。

(ここまでで10分)

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