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「いつでも相談して」よりも満足度がグッと高まる…「部下との1on1」で頭のいい上司がやっている"四段話法" を 読んでみて思うこと
部下の本音を引き出すためにはどうすればいいのか。(中略)「部下との1on1で『いつでも相談して』と声をかける人がいるが、残念ながらこの言葉にはまったく効果がない」という――。
今回はこの記事を一緒に見ていこう。
よく、
知り合いに対して『いつでも相談して』と声をかける人がいるが、残念ながらこの言葉には責任感が無い」と私は思う。
引用元の筆者である野原裕美さんは
『いつでも相談して』と声をかける人がいるが、残念ながらこの言葉にはまったく効果がない」
とはいえ『いつでも相談してね』と言う人の心理はわからないでもない。社交辞令と親しみが半々くらいの割合で言っているというのが 当たらずとも遠からず といったところではないだろうか。
なお、親しみを込める意味で「いつでも相談してね」と言いたい気持ちはよく理解できる。ただし、親しみそのものは必要だと思うが、社交辞令は意味がないと考える。この箇所は、多くの人が共感される考え方ではないだろうか。
もし本当に「いつでも相談してね」という発言が責任も効果もないとしたならば、そのような発言を見直す必要があると私なら考えるのだが、皆さんはどう考えるだろうか?
ーーーでは、ここからは、このnoteを見る読者の方々と一緒に考えていきたい。
結論:社交辞令は意味がない
当記事は長いので、最後まで見ている時間がない読者の方々のために、引用元の記事(野原さん著)の結論から先に述べたい。それは、「社交辞令は意味がない」ということに集約することができるだろう。
では、この結論を念頭におきながら以下の当記事を一緒に読み進めていこう。ただし、会社に属していない人も見るだろうから、上司や部下などの用語は自分の組織に適したキーワードに頭の中で変換しながら見ていただきたい。そして、あなたのマネジメントの一助にしていただければ幸いに思う。
なお、当記事の都合上、複数の引用をするが、いずれも引用元は変わらず冒頭の通り。
営業職3年目のAさんは、最近ミスが多く、成果を上げられていません。(中略)
落ち込んでいるAさんが同じミスをしないように、上司のBさんは、Aさんに1on1を提案しました。
失注に対して叱責を受けるのではないかと、最初は少し緊張した様子だったAさんも、Bさんが優しく話を聞いているうちに表情がほぐれ、悩みを話し始めました。(中略)そして、もっと早くから提案書作成を進めるべきだったと反省しているとのことです。
Aさんの話に対してBさんはいろいろとアドバイスをし、Aさんも笑顔で「わかりました。ありがとうございます」と言いました。
Aさんから前向きなコメントが聞けたBさんは、「何かあったら、いつでも相談して」と会話を終え、「個別に話をして良かった」と安心したのです。
なぜ「いつでも相談して」は無意味なのか
けれど、その後AさんからBさんに1on1が依頼されることは、ありませんでした。そして、Bさんがアドバイスしたことも活かされず、他の顧客へのAさんの対応の遅さに気付いた社員からアラートが上がってきたのです。
「何かあったら、いつでも相談して」と言っただけに、こちらから再度1on1を提案すると相手を追い込むことになる気がして、Aさんのモチベーションに配慮してどのように指導すべきか、Bさんは考えています。
実は、「いつでも相談して」と優しく部下に寄り添う上司の言葉は、多くの場合、残念ながら効果がありません。
1on1を終えた時の晴れやかなAさんを見たからこそ、「これできっとAさんの営業成績も上がるはず」とBさんは安心したのに?
親身に相談に乗る「いつでも相談して」という上司のセリフが、なぜ効果がないのか、部下が頻繁に直面する困りごと別に見ていきましょう。
親身に相談に乗る「いつでも相談して」という上司のセリフが、なぜ効果がないのか、部下が頻繁に直面する困りごと別に見ていきましょう。
部下が頻繁に直面する困りごと
1)何を相談すればいいのかわからない(問い自体が立てられない)
上司が、「わからないことや悩みがあれば、何でも話してくれればいい」と思っていても、部下からすると、上司に相談するからには、さすがに「何でも」というわけにはいきません。
上司と話したことでわかった気になったとしても、改めて自分一人で考えるとまた悩んでしまうという部下は、珍しくありません。
上司と話している時に、本当の意味で問題を理解できていないからそうなるのですが、「自分が何につまずいているのかわからない」「何が問題なのかわからない」、つまり「何がわからないのかわからない」という状態なのです。
問題の解像度が低いために、上司の時間を取ってもらったところで、そもそも効果的な相談ができそうにもないと、部下は考えます。
「相談したいことをもっとはっきりさせてから、相談しよう」と思っているうちに時間がたってしまい、さらに相談しにくくなってしまうのです。
よくある話だと思うので、そのまま引用した。
続いて、
2)どこまで正直に悩みを伝えていいのかわからない(問いの解き方がわからない)
責任感が強い部下ほど、「自分の役割は自分で果たさなくては」と考えます。
その結果、「できる限り自分でなんとかしよう」と仕事や問題を抱え込んでしまいます。
何を解決すべきなのかはわかっている(問い自体は立てられる)のですが、解決方法で行き詰まってしまう(問の解き方がわからない)状態です。
上司からすると「『何かあったら相談して』と言っているのだから、部下から問題解決方法について壁打ちを気軽に依頼してくれればいい」のですが、それは、能力的にも立場的にも状況を俯瞰して見られる上司だからこそ言えることです。
部下は「自分なりの答えや仮説が出来てからでないと、上司に頼るべきではない」と思ってしまいがちです。
そして、答えが出せないうちに、状況がどんどん変わり、さらに窮地に追い込まれてしまいます。そこで力尽きて「自分には無理だ」と考え、転職もしくは精神的にダウンしてしまう可能性もあります。
3)相談したいけれど上司の忙しさに気後れする
予定表を部下が見られるようにしておられる上司も多いと思いますが、まるでテトリスのように、朝から夕方まで埋まっている上司の予定表を見て、部下はこう思います。
「こんなに忙しい上司に、自分のためにさらに1on1をお願いするのは申し訳ない」
上司が「相談してくれれば、時間は作るよ」と思っていても、部下は気後れするのです。
ここまでは非常に良くある話なので、状況は違えど、誰しも経験はあることだろう。
実際に家族内などの身近な関係性であっても、このようなことは多々あるし、小学生くらいの子供でも親に対して記事に登場した部下のような心境を抱く事はある。
今ほど状況変化が質的にもスピード的にも大きくなかった時代には、上司と部下が時間をかけて信頼関係をつくることができました。また、上司や先輩の仕事を見ながら、部下が少しずつ成長することが可能でした。
けれど、今は違います。
転職が当たり前で、ライフイベント等で長期休暇を取る機会も増え、同じ人とずっと同じ仕事を続けられる(関係資本で戦える)状況だとは限りません。そして、仕事の内容や進め方も、昔の成功法則が今も使えるとは限らないうえに、短期間で成果が求められることも少なくありません。
つまり、「上司の姿を見て学び、時間をかけて成長する」余裕が、以前ほどない状態なのです。
では、指導的な立場の人はどうすれば良いだろうか?参考までに見ていただきたい。
(中略)このように「初めて」ばかりの状況でも、プロジェクト開始直後から成果を出してクライアントに価値を感じてもらわなければ、仕事が成り立たない世界です。
コンサルティング会社でどのように部下をマネジメントしているかを参考に、上司としてAさんは1on1で何をすべきだったかを整理します。
1on1で満足度を高める「四段話法」
1)相手と一緒に「問題」の解像度を上げる
ちなみに、
「問題の解像度」とは、問題をどれだけ細かく、詳細に理解できるかを示す表現のことを指す。
私は「解像度」という言葉は使わないが、
問題をどれだけ広く・深く・細かく・詳細に理解できるかによって問題の原因(影響や関連する要因など)が明確になり、曖昧さが減ることは間違いない。
曖昧さがない状態によって、問題は解決され、再発防止や予防・長期的な改善が可能になる。
つまり、問題を深く理解することが問題解決能力を促進させる。
正しい問題解決は、問題を正しくとらえることから始まります。
部下が自覚している問題が、取り組むべき問題だとは限りません。
仮に「わかりやすい資料が作れないこと」が部下の悩みだとしましょう。部下の言葉をそのまま受け取って、資料の効果的な作成方法についてアドバイスをします。けれど、問題の原因が、本当は「作成方法」ではなく「資料を読む関係者への根回し」(合意形成)の問題だとしたらどうでしょう? 例えば、関係者に事前に方向性を承認してもらい、提案の方向性にOKをもらっておけば、資料を出した時点でひっくり返ることはありません。
このような場合、上司が部下に資料作成についてアドバイスしても、問題は解決しないでしょう。
問題解決は、問題を正しくとらえることができれば、半分成功したようなものです。
成果を出せていない部下ほど、そもそも「何を悩むべきか」が間違っていることが多いのです。だから、部下の言葉をそのまま鵜呑みにせず、部下の話を聞きながら、本当の問題は何かを明らかにする必要があります。
ただし、部下から悩みを聞いて、瞬時に問題の解像度を上げることは難しいかもしれません。そのため、普段から部下の仕事を観察して、何が問題なのか上司としてあらかじめ仮説を持っておくことが大切です。
2)問題解決のためにすべきことを具体的に合意する
解決すべき問題が合意できたら、それを解決するためにすべきアクションを具体的に確認します。
「アクションを具体的に」というのが非常に重要で、悩んでいる部下はアクションを自力で考えられない可能性があるので、部下任せにせず会話の中で確認します。
なお、「具体的」とは、そのアクションをとったかとらなかったかが、明確に判断できるレベルです。具体的になっていないアクションは一意的な評価ができず、人によって評価がばらつく危険性があります。
そのような状態では、問題解決が進んでいるのかどうか正確に判断できません。その結果、「がんばっているのに、成果が出ない(もしくは成果が出ているのかどうかもわからない)」という状態になってしまいます。
3)アクションの期限を決める
アクションには、期限が必要です。
いつまでに誰が何をするのかが決まっていなければ、ずるずると後回しになってしまうかもしれません。
4)次に話すスケジュールを決める
アクションの期限を決めると同時に、次にいつ改めて会話するか、その時にはどのような話をするかも、最後に決めます。
次の1on1のスケジュールを決めておけば、アクションの後回しも、忙しくて会話できなかったということも回避できます。
ここまでの記事をみて、私自身は概ね共感することができた。特に、以下の引用箇所には共感している。
求められるリーダーのスタイルも年々変わってきていると感じるし、役職そのものの定義は根本的に変わりつつある。
このように多様化するスタイルの中で成果をあげる人たちは以下のような傾向を見てとることができる。
それでは見ていこう。
求められるリーダーのスタイル
時代によって、求められるマネジメントスタイルは変化します。もちろん上司一人一人にも個性があり、その人らしいリーダーシップはありますが、状況に応じて動き方を変化させることは、管理職にとって大切な役割です。
かつては「正解を知っていて、部下を引っ張ってくれる頼りがいのある上司」が、優秀な上司像だったかもしれません。けれど状況変化が激しく、仕事も複雑化している今は、上司が常に「答えを知っている人」でいることは難しいでしょう。
また、価値観も多様化しているため、上司の仕事の仕方や考え方を部下が目指せる・目指したいとは限りません。
今求められているリーダーシップとは、部下の仕事に伴走する伴走者スタイルです。
考えるべき問いを設定し、部下と共に問いの解き方と進め方を考え・実行支援する人です。
「私が問題の答えを知っているから教えてあげる」ではなく、「私は問題を解くプロセスはわかっているから、あなたが悩んでいる問題の解き方を一緒に考えよう」という立ち位置です。
あなたはどう感じただろうか?
改善方法について
冒頭の上司Bさんの場合、Aさんが「顧客のニーズにマッチする提案をするように調査に時間をかけていた」と言っても、それをそのまま受け取ってアドバイスせず、より深く問題の本質を検討すればよかったのです。
「提案の段階になってからニーズを調査しているということは、普段から顧客と十分に会話してニーズを把握できていないのではないか」という仮説を、もしBさんが持っていれば、「本質的な問題はAさんの資料作成力ではなく、顧客との関係性づくりだ」と気づけたかもしれません。
「自分の課題認識はズレていた」とAさんが気づき、本当の問題が何かAさんとBさんの認識が揃そろったら、次に打ち手を合意します。顧客との関係性づくりのために、普段からAさんは何ができるか、それはいつまでにするのかを考えます。そして最後に、その打ち手を実行した結果をAさんから上司Bさんに報告するために、○月○日○時に、次回の1on1を実施しましょう、というところまで合意できればよかったのです。
(中略)
正解で部下を引っ張るスタイルと、部下の仕事に伴走するスタイルでは、難しさが異なります。そして、後者のほうが、往々にして上司に負荷がかかるため、上司に時間的・精神的余裕が必要です。
そのためには、上司が自分の仕事の棚卸をして、徹底的に仕事のムダを無くし、余裕をつくらなくてはなりませんし、どのような問題にも対応するためのベースとしての論理的思考や問題解決力も大切です。
プロフェッショナルとしての成長に終わりはありません。上司が常に新しいことに挑戦し学び続けること、つまり継続的なリスキル・アップスキルが必要な時代になっていると言えます。
以上、野原裕美さんの記事を引用させていただいた。URLは冒頭に引用した通りである。
ここから下は私の意見を見ていただきたい。みなさんの感想やコメントをいただけるとありがたい。
無責任な発言=いつでも相談して
誰しも一度は見聞きしたり、自分自身も昔は言ったことがある「いつでも相談して」という声かけ。
このように声をかける人は、
残念ながらこの言葉には責任感が伴っていないことが多い。
このフレーズを口にすることで、相手にとって親しみやすさや安心感を与えようとする意図があるかもしれないが、その実、具体的なサポートや責任を負う気持ちが欠けていることがある。
例えば、
友人や同僚の立場にたってみよう。
友達や同僚が深刻な問題を抱えており、「いつでも相談して」と言われたとしても、いざ相談に乗ってもらおうとした時に相手が忙しかったり、話を真剣に受け止めない場合、相談する側の友達や同僚は一層の孤立感や失望を感じることになり得る。
この「いつでも相談して」という言葉が無責任に使われることのリスクは大きい。
実際に助けが必要な時に、頼りになる人がいないと感じさせることで、相談者の信頼感を損なうこともある。相談業務に携わる人ならよくわかるはず。
これは特に、精神的なサポートが求められる場面で顕著になる。
相手が本気で悩みを持ち、その問題に対処するためのサポートを必要としている場合、この言葉が空虚に響くと、相手は「あの時、いつでも相談してね」と言ったのに」とか「誰も私のことを真剣に考えてくれない」と感じる人は多い。
信頼感を与える発言と 発言の責任の狭間で何を選択するか
「いつでも相談して」という言葉を社交辞令のように安易に使うことで、自分自身が対応できない問題に巻き込まれるリスクもある。
もちろん、
親しい友達同士の「暗黙の了解」というのもあるから、このような言葉に救われる人もいるわけだし、リスクばかりとは言わない。
ただ、信頼関係の構築には「あるある」の決まり文句になりつつあるし、相談事の締めくくり定番であり、「イイヒト」の代名詞にもなりつつある。
要するに、とりあえず「いつでも相談してね」と言っておけば嫌われる事はないし、イイヒトに思われる決め台詞だ。
よって、シニカルに受け止められることも少なくない。安易な慰めや気休めと受け取られ、その人の言葉の信頼を失うリスクも潜在的に存在する。
有名企業の面接で耳触りの良い言葉を安易に使うと落とされるのと同じように、
トップクラスの厳しい現場では当たり前のように言葉遣いから中身を問われ、評価に直結する。
冒頭にも述べたが、
「いつでも相談して」という言葉は、多くの場合、相手への親しみや安心感を伝えたいという思いやりから使われる。しかし、社交辞令的な側面もあり、必ずしも実際の助けや責任を伴うものではないことが多い。
このため、表面的な優しさや関係の円滑さを保つために使われることもあるが、実際の行動に結びつかない場合もあるだろう。
例えば、深刻なトラブルや法律問題、精神的な病に関する相談を受けた場合、適切な知識や経験がないと、かえって事態を悪化させる可能性がある。
まとめ:自分自身の言葉の検討を!
私が言いたいことをまとめるが、
決して「無責任なのだから いつでも相談して という言葉をかけるな」と否定しているのではない。その背後にある責任感や真剣さが問われかねないために、自分自身の言葉の検討をしませんか?ということです。
「いつでも相談して」という言葉に対して、本当に自分が責任を持てるならば、本当にいつでも相談してもらったらいいと思う。ただ、いつでも相談してもらっても相談に乗れるわけではないのならば、言葉を検討・吟味した方が無難だろう。
私の場合なら、右記のように「あなたのタイミングで相談の依頼をしてきてください。方法はメッセージで、そのメッセージを送ることがご負担になる前に連絡をください。その時すでに相談に乗れるかはわかりませんし、内容によっては力になれないこともあるかとは思いますが、あなたの悩みを私の悩みのように真摯に考えて共に解決できればいいなと本心から思っています」と言うようにしている。
いずれにせよ
どんな言葉でも口にするのであれば、それに見合った行動を取る準備があることが大切なのは明白です。言葉の重みを理解し、適切に正しい言葉をかけていくことが指導者にとっては必要不可欠であり、その努力に則って真摯な対応をすることこそ、真のサポートの形と言えるのではないだろうか。
なお、1on1の会話の際にも体調管理は重要な要素です。その点、以下の動画をご覧いただき、見よう見まねで実践してもらえるならば、体調管理にも1on1にも、社内研修にも有効です。
撮影協力モデル:京都大学
環境マネジメント専攻 社会基盤親和技術論分野 修士課程 城ノ口 卓さん