【アスタリスクの花言葉】の道しるべ +謎解きや創作のコラム
VRChatのワールドで、いわば"曰く付き"な有名な作品があります。
ヨツミフレーム氏の、「アスタリスクの花言葉」。
しばらくクリア不可能な時期が続いていたものの、2024/10/06に修正。
また、8月末にスタンミ氏がPROJECT: SUMMER FLARE(ヨツミフレーム氏作)を実況プレイしております。
すなわち、改めてクリアを目指す方や、新規ユーザーが注目する折!
ただし、このワールドは良い体験がある一方、注意したい点もかなりあります。
そこで、ここでは直接的な攻略情報は触れず、新規にチャレンジする方が楽しむガイドを簡単にまとめます。
ついでに、(アスタリスクの花言葉に限らず)謎解きや創作について思ったことをコラム的にまとめたのでした。
直接的な内容はありませんが、以降は抽象的なレベルでのワールドの方向性や、検索で容易に知り得る範囲での情報を含みます。
完全に真っ白な状態で取り組みたい方は、まずはワールドに行ってみる方がいいかもしれません。
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完全に真っ白な状態で挑むのは、全くお勧めしないのですけどね!
さて、このワールドは極端なまでに賛否両論の評価となっています。
ヨツミフレーム氏自身も阿鼻叫喚と評するほど。
ある人は神作、またある人は愚作と二分される状況。
良い体験ができる一方で、真面目に行くとかなり痛い目を見かねません。
そこで、どんな人が行くべきか、どんな気持ちで行くべきかをできる限り中立的な視点でまとめることにいたします。
なお、私は2024/10/06以降のバージョンで攻略、"イト"の閲覧もしている一方で、ヨツミフレーム氏とは一切関係の無い立場ですので、ご了承くださいませ。
謎解き全般の話だけ気になる方は、コラムだけ読むのもありかも。
どんな人が行くべきか?
VRChatに慣れ親しんで仲良くなってきた3名以上のグループ
攻略班的なノリに長く耐えられ、Discord等で根気強くチャレンジできるグループ
奇ゲーを愛し、世間一般では苦行とされる攻略も含めて楽しめる方
一人の人間の狂気的な情熱や意志に触れてみたい方
※大体の方向性を書いたもので、全てを満たす必要はありません。
箇条書きからにじみ出ているのですが、要するにこういうことです。
「結構時間がかかるし、高難易度どころか真っ当に挑むと詰まり得るポイントがいくつもあるよ? 本当にいい?」といったところ。
過去のバージョンより易化しているという話もありますが、個人的には難化と解釈することもでき、依然としてヤバいレベルという評価は変わらないと考えます。
ヤバさも含めて知ってみたいとか、挑戦してみたいという方は、一層楽しめるかも。
初心者はあまり向かないかも、という話
VRChatに慣れていない方がとりあえずやって楽しめるかというと、正直、ちょっとお勧めしません。
初心者がよく分からないうちに来て、攻略者から情報を聞きながら進めて「???」ってなる人がいるらしく、検索で見かけては怖いな~怖いな~ってなっていました。
ヨツミフレーム氏の他作品を見てみたい! という需要にしても、「1%の仮想」展でさくっと楽しませる方が無難な選択かと。
Exhibition˸ 1٪ of Virtuality
謎解きをやってみたいんですよねってくらいの人も、安直にトライすると火傷してしまうぜ。まずは、もっと易しいワールドを試してみるほうが良いと思います。
難題にどう立ち向かうか
事前にグループでどのような時間を過ごしたいのか相談しておくことが大事と考えます。特に、正攻法(といってもネット検索は推奨される)で行くか、SNSや動画サイト、協力者等から情報を得る邪道な攻略法もありで行くかは要検討。
正攻法が真っ当に見えるのですが、正直、仲の良い人と途方に暮れる時間を無為に過ごすのは、あまり健全な時間の使い方といえないと考えます。
以下の記事のように、協力者を用意し、ヒントを貰いながら進むのも一つの手でしょう。
では、その労力に見合ったコンテンツですか? と問われたら。
私は「好きだよ。好きだけど、見合うかどうかは人によるんじゃないかなあ…」という感想です。
絶賛の声も多いし、私自身は結構好きだけど、持ち上げ過ぎになるのが怖くて控えめな表現となりました。
「良さ」と「悪さ」が水と油のように混ざらず色濃く存在しています。その強烈な良さと悪さがどういうものなのか、確かめること自体に楽しさを見出すのが吉でしょう。
どう楽しむか?
ネットの世界は、いつの世も両極に走ります。そうなると、自由に意見が言えなくなってしまいます。
そこで、神作でも愚作でもなく、人作として楽しみましょう。
神の作品にしては、愚痴をこぼしたくる点がポロポロ出てきす。
かといって、愚作として一蹴できない、類稀なる制作者の意志が作品に込められています。
やりたいことは分かる。コンセプトはとても良質だ。なのに、ああ、どうしてこんな謎に仕上がってしまったんだ!
人としての不器用な点が垣間見えて、私はなぜだかとても愛おしく感じたのです。欠点があるから人や作品を愛せるんだ。
神として持ち上げず、「この謎、ヤバくね?」と仲間内でぼやきながら進む。気分は、奇ゲー探検隊。良いと思ったところも、悪いと思ったところも、素直に丸ごと語るのがよいでしょう。
ワールド制作者。それはどんなに有名になったとしても、一人の人間です。
"もっと親しい人に向けた内容なのだろうか"とか、"好きな作品に方向を近づけたかったのだろうか"とか、思いを馳せることができます。
良い感想も悪い感想も、笑って話すことができる。
そういう友達と一緒に遊んでみたいものですね。
コラム1: 人やコンテンツの魂的なやつ
アスタリスクの花言葉にあたって、制作者の言葉を引用したいと思います。
それはそう。それはそうだが、謎解きどころかあらゆる創作物に対して言えてしまう。狭い意味での利己主義の立場を取れば、人間のあらゆる行動はエゴともいえる!
人間なんて所詮タンパク質の塊と表現できるし、VR上ではデータ上の塊と表現できる。でも、魂だか何だか本質的なものがあると思い込んでいるから、世界に色づきを与えることができる。
受け手側からすれば、「こんなの制作者のエゴなだけじゃん」と解釈するのは簡単。でも、そうしたら味気ない作品に感じてしまいます。
「プレイヤーにこんな体験をさせたい」、「ワールドを通じてこんなことを感じてほしい」、などなど。こうした意図も全部エゴかもしれないけれど、それを超えてにじみ出る強い意志を感じられたところに、このワールドの良さがあったと感じています。皮肉にも。
このワールドや人間に限らず、「エゴの塊」であるとか、「タンパク質の塊」であるとかと超えたところにこそ、何かしらの良さがあるんじゃないかと思ったのでありました。
マニアックな話。
こういう、魂的な力をどうしましょうねって話は古代ギリシャの頃から話されていて、この力をアレテーと呼んでおりました。このアレテ―、ラテン語でvirtusと訳され、英語のvirtualの語源になったのでした。めでたし、めでたし。
つまり、VRで人類の最先端を語っていると思っていたら、人類最古レベルの哲学をしていたってことになるぜ! なんか浪漫ある〜!
そういう本質的な力、どういうあり方がいいんですかねって話はずっと哲学されてきたことだけど、今一度自分なりに考え直したいものでありますね。
この辺は制作者さんも散々テーマにしていたところなので、そこも意識した補足的な部分でもありました。
コラム2:狂気の謎 vs ジャンクフードコンテンツ
ヨツミフレーム氏が言及されているところ(かつ、攻略に無関係なところ)に、パズルゲームWitnessの長時間ムービーがあります。
奇遇。私もまた、プレイしながらこのムービーを思い出していたのです!
良くも悪くも、イースターエッグ探しだなあ、と感じていたのです。
Witnessのムービーについては、以下にざっくり要約しますが、原文や参考動画として、以下が参考になります。
謎解きって何度かブームが来ているのですが、そのうちの一つは、1979年のマスカレードという絵本作品が一端を担っておりました。
絵本を一度読んで終わりにさせたくない。そのモチベーションで、著者は謎解き要素を絵本に入れたのです。謎解きの答えは、一つの場所。そこに、金と宝石で出来たうさぎが眠っている。探せ! 世はまさに大宝探し時代!
絵本の世界と現実の世界を結びつけるという試みが、この頃からあったのですな。
これが飛ぶように売れ、日本ですら8万部のヒット。
実際に宝を入手するわけでもなく、一種の浪漫を感じさせたからなんじゃないかと思います。
隠し要素というのは、往々にしてヒットの一因を担っています。
ゼビウスの裏設定や隠しキャラ! ポケモンのミュウ! かいけつゾロリシリーズなんかも、遊び心で作者の顔などが潜んでいたりする!
制作者や世界との繋がりを感じ、とても甘美でワクワクする!
……しかし、それは危ない魅力でもあるのです。
うさぎ探しの絵本。答えではない、"Rabbit Hill"という公園に人々が集まり、穴でボコボコになってしまったのであるとか。
謎に執着するあまり、心療内科でカウンセリングを受けることになった人もいたのだとか。
答えが容易に見つからない、イースターエッグを探す状況下においては、藁をも掴む思いで得た些細な情報を結びつけて、正解と言いたくなってしまう。難易度が高い謎というのは、人々を陰謀論めいた狂気にいざなう危険性も持っているのです。
さて、見事うさぎを手にしたトンプソン氏。なんとマスカレードを意識したゲームを開発した上、謎解きの報酬に件のうさぎを用意したのです。
結果、そのゲームは誰にも理解できない謎になってしまい、クリア者も現れず、会社は倒産してしまいましたとさ。そんな童話みたいな展開あるんだ。
トンプソン氏のゲームはそもそも情報が不十分等、クオリティ自体がかなり低かったものと思われますが、それでも高難度の行く末を暗示しているようにも見えてしまうのでした。
難解なアドリブ披露の場と化して理解されなくなったジャズは、聞きやすく落ち着いたものに揺り戻しが起きました。
格ゲーやシューティングゲームも、易化しては盛り返すといったことが何度も繰り返されてきました。
謎解きにおいても、そうした動きがきっとあるだろうな。
……と思う一方、話はまだまだ終わらない。
易化というのは、いわば大衆受けを狙う行為です。伝わりやすく伝わりやすくとするのは、大衆の意志にチューニングするもの。作者が表現したい、自分らしさといったものが失われかねません。
ジャズにしても「やっぱり表現したいように表現したいぜ」と揺り戻しの揺り戻し……といったムーブメントが起きたりします。
大衆受けは、保守的で、自分らしさを失うかも。だけど、革新的に振れば、難解でただの独りよがりになるかもしれない。
ただ、歴史は繰り返すというわけでもありません。
きっとそれは、螺旋階段の形をしている。横から見ると、左右にムーブメントが行ったり来たりしている形状。
しかし、元の位置には戻ってきません。過去を礎に、未来の一方向に歩む形で進んでいきます。
螺旋階段のように進んでいかなければ、ただの円に過ぎません。コンテンツとして同じところを回り続け、停滞するのは良くないよね、といえます。
遺伝子だって螺旋階段の形して進化してるからそう言ってる。一見繰り返しているようで、何かは進化しているんだ。
イーターエッグ探しの映画を見た。スピルバーグ監督。
ど派手で見応えのある演出。深く考えずとも流して見られる分かりやすさ。自分好みで最高だった。
だけど、洋画特有の、非常に既視感のある台本構成。テーマだけゲームやサブカル要素を多分に含むってくらい。
ポエミーに表現すると、どこかジャンクフードの味がする作品でした。
バズや商業的成功のため、今って易化しているものにとても溢れている。
でもなあ。ジャンクフードでフレーバーが新しいんですよってだけでも、自分は「これこれぇ!」って安心して楽しめちゃうんだよな~。
大衆受けするものをコンスタントに排出する、ジャンクフード職人。
それはそれで、結構尊いものであるように思うのでした。
芸術にしても、謎解きにしても。
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