保守主義とは?
「保守主義」と称する思潮が、はっきりとした輪郭をもたないのは、保守思想を掲げる人間たちの中で一貫する「保守すべきもの」が具体的に何なのかがはっきりしていないからだろう。
そもそも、保守主義という思想は、近代の所産的な思想であり、「進歩」「啓蒙」を目標とする進歩主義に対する対抗思潮として生まれたものなので、反変化という消極的な形態でしか目標を設定できないようだ。異端が生まれてはじめて、正統が生まれるのと同じ(正統は、具体的な目標のある異端に対する「反異端」という器でしかない)。
また、保守すべき対象となるはずの「伝統」や「過去の秩序」を特定する時間軸がふらふらしているということもあるのだろう。人が「昔」と認識し始めるために要する時間は、存外短い。伝統とされるものの起源が昭和以降の現象であるということは結構、珍しくない(ねつ造されたものを除く)。
保守政党が信奉する対米同盟が、太平洋戦争までしか遡れないことなどは自明であり、保守すべき伝統秩序とは、詰まるところ「今」でしかないことが多い。
結局、保守思想とは、現状維持思考ということでしかないのだろう。
ただ、保守「回帰」の名の下に、適宜都合の良いつまみ食い的なルール変更の立論がなされることには注意が必要だろう。