アウトドア原体験
今でこそ空前のアウトドアブームですが、実は僕が大学の頃(約30年前)にもブームがありました。その頃にはすでにBEPALなど、ちょっとオシャレでナンパなアウトドア雑誌もありましたが、当時はそんなものは軟弱で邪道だ!と敵視してました(笑)。
それもこれも椎名誠さんの「怪しい探検隊シリーズ」と出会ってしまったからなのでした。どこでいつ手に取ったのか正確には覚えてませんが、確かどこかへ旅行する時に文庫本を買ったのが初めてだったと思います。
大学1年の冬休みに、今はとっくになくなってしまった地元のデパートで短期間アルバイトをしたことがあり、なぜか配属されたのはデパ地下の♡バレンタインのチョコレート売り場でした。
そんな訳で空き時間には綺麗な包装紙でチョコレートをひたすら包み続けたので、今でもデパートのようなあの包み方ができます。その頃から売り場やお客さんのおばさま達にはウケが良かったように思いますし、それがその後の仕事でも大いに役立ちましたが、気がつけば今は僕も立派なおじさんです(笑)。
そうやって貯めたお金で、大学1年の春休みに当時からも行きにくかった小笠原父島へ一人旅に行きました。もしかしたらこの本はたぶんその時に買ったのかもしれません。
小笠原へは東京竹芝桟橋から客船「おがさわら丸」で当時なんと25時間半!かかり、今は確か24時間にちょっと短縮されましたが(笑)、行きと帰りで最低でも6日ぐらいかかる、今でも日本で最も遠いところの1つなんです。それをどこかで知って「こりゃ学生じゃないと、もうたぶんもう行けない!」と思い立ち、一念発起で旅行を計画します(実際には後に仕事でもう一度小笠原に行くことになります)。
計画といっても、行きの船のチケットと一番安い民宿を取っただけのほぼノープランでしたが、毎日毎日楽しかったので行きに乗った便では戻らず、次に来た便で戻ることにしたので合計12日ぐらいいたことになります。
昼はまるでジャングルのような島を歩いて探検したり、レンタルの原付バイクで周遊して見つけた誰もいない海で泳いだりして、雨の時や夜は今や懐かしのウォークマンで音楽を聴きながら読書したりして、まさに"晴耕雨読"的にの〜んびりと気ままな一人旅を謳歌し過ごしていました。
実はこの時、どうやら皆既日食が小笠原だけで見られるということで、臨時便の船などで沢山の人が来ていたらしく、全く知らなかった僕はそれを現地で初めて知ることになりましたが(笑)、実際に運よく皆既日食も見ることができました。大自然の中で体験する皆既日食は、日中に徐々に薄暗くなると少し恐ろしい感じもして、それまで体験した皆既日食とも違う特別な経験になりました。
そこで出会ったやはり離島マニアみたいな人達と、夜はお酒を酌み交わしながら色んな話をしている中で、全面的に勧められ次の照準を沖縄の西表島に定めます。
沖縄は流石に飛行機でチケット代の値が張るため、大学2年はまた違うバイトをすることになります…
この本に書かれている、椎名誠とその仲間達の離れ島天幕生活の面白おかしい行状は、作家や画家から弁護士まで色んな職種の人たちが「酒宴マネージャー」「チリ紙管理」「トイレ穴掘り最高責任者」などのユニークな役割で「男は黙ってサッポロビール」的体育会系的なキャンプをしたりしていて(笑)、いい大人が子供みたいに本気で楽しんでいるのが本当に痛快なのです。
今では僕もオシャレな感じのキャンプも楽しんでますが、今でも心のベースはこの椎名さん達の怪しい探検隊なのです。
椎名誠さんのエッセイや怪しい探検隊シリーズは大好きで、その後大学時代にほとんどの本を読みあさりました。
そしてこの怪しい探検隊の仲間の中に先日亡くなったカヌーイストの野田知佑さんがいて、野田さんの書くカヌーがらみのエッセイも読むようになり、カヌーへの憧れを募らせることになります。ということで次回は、現在楽しんでいるカナディアンカヌーと、野田さんのカヌーの本にまつわるお話を書きたいと思います。