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社会学

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記事一覧

菊地夏野『日本のポストフェミニズム 「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店、2019年)

主題…フェミニズムとネオリベラリズムはいかなる関係にあるのか。また日本の「ポストフェミニズム」とはいかなる状況を指すのか。理論的・実践的な視点から「ネオリベラル・ジェンダー秩序」がいかに編成されるのかを明らかにする。

 1章では、ジェンダーとセクシュアリティの視点から新自由主義を分析するための視座の提供がなされている。
 菊地氏は新自由主義の特徴をまとめた上で、ミシェル・フーコーの「新自由主義統

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北条かや『整形した女は幸せになっているのか』(講談社、2015年)

主題…近年、美容整形はより身近なものとなってきている。しかし、その反面、整形をタブー視する見方も依然として存在する。近年の美容整形の一般化の背景には何があるのか。また、美容整形を決意した女性は幸せになっているのか。整形をめぐる議論と女性の幸福について考える。

1章では、近年の整形技術や整形に対する価値観について述べられている。
近年、整形技術はかつて以上に身近なものになっている。とりわけ、

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『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』/菅野仁

主題…人と人との「つながり」は人生を豊かにするものである。しかしながら、現代の社会における人々の苦しみや不安は、たいていの場合は「つながり」に起因している。人生を豊かにするはずの「つながり」が、なぜ人々の苦しみや不安の根源になっているのか。「つながり」の本質を考察し、生の豊かさとしての「つながり」を実現する方法を考える。

1章は人と人の「つながり」の歴史から、なぜ人は「つながり」を求める一方、時

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『社会は絶えず夢を見ている』/大澤真幸

主題…無意識的に見る「夢」は、現実に対して何かしらの示唆をもたらすことがある。しかし「夢」は起床してすぐに忘れ去られてしまう。その「夢」を明確に記述し、言語化することができれば、現実を捉えるための回路を獲得することができる。これは社会がみる「夢」も同様である。社会が絶えず見ている「夢」を記述し、現代の社会に現れる諸問題に対するアプローチを模索する。

1章ではジャック・ラカンが日本人は精神分析

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『夢の原子力 Atoms for Dream』/吉見俊哉

主題…国内の原子力発電所の設置数は、他の先進諸国と比べて多い。日本は唯一の被爆国であり、原子力の脅威を深く知り得ているのにもかかわらず、なぜ原子力発電所の設置が積極的に支持され、誘致されてきたのか。その背景には、50年代以降の人々が共有していた「原子力の夢」にあったという。「原子力の夢」がいかに描かれ、なぜ人びとはそれを受容してきたのか、分析を行う。

序章では戦後日本とアメリカの関係から、「

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『戦後の思想空間』/大澤真幸

主題…1945年に終戦を遂げた日本社会は、戦後から現在にかけてどのように思想を形成してきたのか。侵略戦争を正当化したファシズムや、終末を希求したオウム真理教など、それらを下支えした日本の思想はいかに形成されたのかを構造的に考察する。

1章では日本社会における戦後の位置づけや戦後の思想がいかにして可能であったかについて論じられている。
 大澤氏は第一に「戦後」という時期区分について説明を加えている

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『嗤う日本の「ナショナリズム」』/北田暁大

主題…なぜ「嗤い」を中心としたコミュニケーションが行われる2ちゃんねるの空間にて、『電車男』のような「ベタな感動」の物語が生まれたか。なぜ窪塚洋介のような若者は自分と世界の関係を短絡的に結びつけるのか。自己と世界の関係を規定する「反省」の変遷を1970年代から辿り、2000年代以降の反省やコミュニケーションの本質を考察する。

1章では連合赤軍における「総括」のメンタリティとその起源について論

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『文明の内なる衝突 9・11、そして3・11へ』/大澤真幸

主題…2001年に起きた9・11事件は、世界をリードしてきたアメリカに対するテロリズムによる抵抗として理解される。この構図は、価値観の対立によるものとみなされるが、大澤氏によれば9・11は、資本主義における「内なる衝突」であったのだという。21世紀における資本主義と、その内部における対立の発生の姿を考察する。

序章では社会哲学の3類型と9・11の関係について述べられている。
社会哲学におけ

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『パラサイト・シングルの時代』/山田昌弘

主題:未婚化・晩婚化を背景として増加してきている「パラサイト・シングル」 。「パラサイト・シングル」とは成人して働いているにも関わらず親と同居している独身男女のことを指す。「パラサイト・シングル」はなぜ増加したのか、またそれは何が問題なのかについて迫る。

1章では「パラサイト・シングル」の生活の姿や心理について述べられている。
「パラサイト・シングル」とは成人して就労しているにも関わらず、両

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『ふしぎなキリスト教』/橋爪大三郎 大澤真幸

主題:近代社会を形成した欠かせない要素としての「キリスト教」。日本人は「キリスト教」について存在は知っているものの、正確な理解には程遠く、「西洋」を十分に理解するのが困難なのであるという。「一神教」や「イエス・キリスト」など聞き慣れた単語について、その本質に接近する。

第1部では「キリスト教」の母体である「ユダヤ教」について説明がなされている。
日本人が「キリスト教」及び「ユダヤ教」について

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『「自由な時代」の「不安な自分」 消費社会の脱神話化』/三浦展

主題…数多くの広告には、その商品やサービスを消費することで「自分らしさ」を得ることができるというメッセージを載せている。このメッセージに惹かれ、人々は消費行動に走るわけだが、なぜ「自分らしさ」というメッセージがここまで多くの人にとって魅力的に聞こえるのか。そしてそもそも「自分らしさ」とは何なのか。消費社会をあらゆる側面から考察する。

1章では日本の消費社会の変容とそれに伴う「自分らしさ」を求

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『「心」はあるのか』/橋爪大三郎

主題…人々は悩みや葛藤に苦しめられるとき、それは自分の「心」の問題だと考える。しかし、そもそも「心」というものは本当にあるものなのか。当たり前にあるものとして捉えられがちな「心」の存在について考え直す。

1章はこれまであらゆる学問が「心」をどのように扱ってきたかについて論じられている。
橋爪氏によれば、心理学、哲学、宗教学のいずれの学問も「心」の存在には懐疑的であり、正面から「心」の存在を

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『現代社会はどこに向かうのか 高原の見晴らしを切り開くこと』/見田宗介

主題:何気なく使っている「現代社会」という言葉であるが、そもそも「現代社会」とはいかなるものを指しているのか。そして私たちが生きている「現代社会」のその先にはいかなるものが広がっているのか。過去と未来の視点から、展望を切り開く。

序章は「現代」といかなる時代かについて、「近代」が辿ってきた道筋を振り返りながら検討を行う。
資本主義や合理化を掲げて加速してきた「近代」は「無限」を追求する時代であ

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『歴史の<はじまり>』/大澤真幸 北田暁大

主題…近年、人々の予想を反するかのような出来事が次々と起こり、それらの出来事が「歴史」の中に刻み込まれている。そうした「歴史」を捉えるということは何を意味するのか。多様な視点から接近する。

第1章では、「オウム」の一連の騒動と「連合赤軍事件」の時代性について議論が展開されている。
大澤氏は「連合赤軍」と「オウム」の関係を反転図式として説明する。「連合赤軍」の場合、「連合赤軍」の関係者たちは

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