167/366 【寄る辺なしブルース】 コロナの波間にぷかぷかと
4月末にはコロナという見たことのない深い海の上で、なんとか浮いていようとひたすらにもがいていた。
背中でただ浮いて体力温存をして、ちょっと復活したら、岸はこちらかいなとある程度見当をつけて、そちらに向かって犬かきしたりしていた。
それに疲れたら、配信コンテンツを眺めながらまたぷかぷか浮いていた。ラッコみたいにお腹にデバイスを置いて。
それを繰り返していたら、5月半ばくらいに何やら潮目が変わった。ぷかぷか浮くのにも慣れたくらいの頃だった。
波の温度が違う。流れが違う。あれ?と思って水面で寝返りを打ち、犬かきをしながらどちらが前かも分からないまま前を見てみよう、と思ったら...
足が着いた。
まだ水は胸元まで来るけれど、足は着く。垂直二足歩行ができる。水中散歩なので歩きにくいけれど、それでも歩けるだけで随分と心地が変わる。地に足が着くってこういうことか。
陸はまだ見えないけれど、そのまま歩き続けているうちに、水深は少しずつ浅くなってきた。
今はまだ胸元くらいの水の中を歩いている感じがする。
まだ岸は見えない。
水は透明ではないので、足元も見えない。陸があるということしか分からない。その水底がいつまた深くなるかも分からないし、底なし沼みたいなものが突如現れるかも知れない。なんせ見えないからよく分からない。
ひとまずは、無重力の水面に浮かぶという、形のない寄る辺無さからは少しだけ解放されたような心持ちでいる。
来月からはまた犬かきが始まりそうだから、とりあえず今は体力を付けて、準備をしよう。
明日も良い日に。
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