中小企業の社長向け ~ 新型肺炎関連倒産と今、取れる策
この記事は中小企業の社長向けに新型肺炎関連倒産についてまとめた記事です。忙しい社長向けに3分強で読めます。
この記事を書いている私は、
・地方の再生案件に従事してきた元再生ファンドの人間
・災害に遭った企業に常駐して建て直しをやっていた
という立場で、実戦経験に基づき書いています。
①新型肺炎の影響の出る前から倒産は増えている
【引用】
2020年1月の倒産件数(713件、前年同月比2.7%増)は、5カ月連続で前年同月を上回り、1月としては2015年1月(708件)以来5年ぶりに700件を超えた。
今回のコロナの影響が本格化する前の1月から、暖冬、消費税等の影響で既に倒産は増えていました。2月、3月の倒産速報には、この1月の状況にさらに今回のコロナに伴うイベントキャンセル等の影響が上乗せされます。旅行、ホテル、イベント、小売関係だけでなく、資材が中国から仕入れられなくなって現場が止まる建設業、卸売業まで、影響はこれから広がってきます。
既に関連倒産が出始めていますね。
2003年のSARSのときは、旅行関連会社を主要顧客にしていたITの会社も倒産しました。政府の休業支援策は小売とホテルに今のところ限定されてますが、影響の広がりを見て、ルールは変わるかもしれません。
②東日本大震災関連倒産の9割は間接倒産
東日本大震災からの8年間、1900件の震災関連倒産がありましたが、9割が「取引先からの売上減」に伴う間接被害です。東北から遠い沖縄でも関連倒産があったことを考えると、今回のコロナの影響による倒産も、大半は取引先の「巻き添え」を喰らう「間接被害」と想定されます。
③今、取れる対策
A:資金繰りは力 / 借りられる会社は借りる
B:「巻き添え」を喰らわないように手当てする / ちゃっかり問題
C:競合を潰しに行く / 人の不幸は蜜の味作戦
過去の災害時に自分が常駐していた会社が実際にやったことから考えてみました。見方によってはこういうトラブルは自社の躍進のチャンスです。
A:資金繰りは力
中小企業向けの支援策の中心は「国が保証するからお金を借りてね」です。減った売上を補填する補助金ではありません。しかも、「前年同期で20%売上が減っていること」等の条件がついています。
国の保証があっても、すべての会社が銀行からお金を借りることが出来るわけではありません。
・国の制度の情報を自分で取りに行けない情弱会社
・売上減少の根拠を出せない会社(粉飾してる、管理がテキトーetc)
こんな中小企業も多いです。
今、銀行の審査が進んでいる会社は、既に他社に先んじています。
手元に資金があれば、落ち着いて経営者は作戦を練ることが出来ます。
売上が数か月以上吹っ飛んでも問題ないキャッシュを手元にお持ちの会社は、後述のC案/競合のシェア奪取を既に実行されているかもしれませんね。
中小企業にとって、現金は正義です。
実績も理想も現金の前に吹き飛びます。
「なんで日本企業は現金を貯めこむんだ」と言われたら、「日本は災害が多いし、損害保険や政府の支援も頼れるとは限らないから」と返してやりましょう。
B:巻き添えを喰らわない
会社が倒産した時、取引先の会社同士で
「いやあ、うちもX社に売掛が〇百万円ありまして」
「御社もですか、うちも〇百万円です、大変ですなあ」
みたいな会話が交わされますが、ちゃっかり「相殺条項」が取引基本契約に入っていて、倒産の数か月前に売掛金と買掛金がきれいに相殺されてたりとかよくある話です。勘の鋭い経営者は、他社の数か月前に動いて、「相殺適状」を使い、巻き添えを最小限にしていますし、そこまで考えて取引基本契約を作っています。「法律とか難しくてわかんない」とかいう経営者はズルズル損だけします。
C:競合を潰しに行く
これは表立っては皆さん言いませんが、優秀な経営者は既に今の時点で実行されていると思います。
業種によりますが、例えばメーカーで、
・競合は中国からの部品供給が止まって工場停止
・自社は国内生産なので工場が稼働している
という場合、競合からの供給が止まっている取引先に真っ先に連絡して「当社なら何日以内に納品できます」と営業すれば、一気に取引先を拡大できます。(私達が赤字会社を建て直せたのはこの点が大きい)
もちろん、増産に耐えうるだけの経営と現場の連携が取れている前提です。普段から社長が生産現場とコミュニケーションを取って「ここが頑張りどころだから協力して欲しい」と説明できるかがポイントです。
取引先、競合、市況等の情報を定期的に社員に発信している社長と、普段からテキトーにやってる社長の差が出ます。
一見、「エグい」やり方に見えますが、「経済の停滞を乗り越えるため」というテンションで私達はその当時やっていました。
3月に思う
私が一連の発信をしているのは
「自分のように倒産で嫌な思いをする人を減らしたい」からです。
父が社長をやっていた会社は3月の資金繰りを乗り越えられず、3月20日に倒産しました。忘れもしない、母の誕生日でした。
一連の発信が読んでくださった方のお役に立てば幸いです。
倒産による影響はマイナスだけではなく、プラスもあり、その点は別の記事「倒産家族の生活」で書きます。
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