いつかおばあちゃんになるあなたへ…昭和のチャラ男
認知症が進み、徘徊するようにってからうちのデイを利用することになった山川さん。まだ年齢的にはお若く、70代。奥様も60代後半です。
徘徊する方は、足腰がしっかりしていて自分で歩く脚力や体力はあるけれど認知症がだいぶ進んでいるケースが多いです。
ご家族も度重なる徘徊や保護してくれた警察とのやりとりで心身ともに削られ消耗していらっしゃいます。
そんな山川さん。カラオケがお好きで、来たばかりの頃は石原裕次郎を素敵なビブラートと甘い歌声で聴かせてくれました。
現在はもうカラオケに合わせて歌を歌うことはできません。食べ物も口に入れて味覚を刺激しないと食べ物と認識出来ない時があります。
デイサービス利用中も、施設内をウロウロしたり、ちょっと前までは外に出て行ってしまいそうになることもありました。(もちろんスタッフが付き添って一緒にデイルームへ戻ります)
かなり痩せてしまったけれどまだまだ歩く体力があるのはご立派。
一度に大勢のスタッフで囲むと不穏になってしまうので、1人が少し離れた前方から近づいて
「ヤマさんお久しぶりです(*^^*)」
「お待たせしてごめんなさいね」
「とりあえずお茶でも(*^^*)」
と、馴染みの関係がある雰囲気で笑顔で接することを統一して対応しています。テンションを合わせるのがコツです。
山川さんもお茶目な感じで
「ナンチャッテ〜(*^^*)」
「ベロベロバァ〜」
他、辻褄は全く合いませんがおどけたお返事をしてくださったりします。
お風呂もあんまりお好きでは無いのでスタッフで連携して、基本1対1で関わります。うまく行かない時は時間を置いたり、メンバーチェンジします。
マリ「ヤマさん、そろそろ行きましょうか」
ヤマさん「うん、でもこの◯☆#@がねー」
マリ「あら、本当ですね、困ったわ〜。じゃあ、あっちでピピピッとやっちゃいましょう(*^^*)」←自分で言ってて意味が分からない(笑)
ヤマさん「オマエは何調子のいい事を言ってるんだよ(♯`∧´)…なんちゃって!ププーッ」ズッコケる仕草
会話は日本語を繋ぎ合わせた宇宙語で、もはや話は通じません。でも時々偶然だったり本当にたまたま通じたり?会話のキャッチボールが繋がったりして、皆試行錯誤しながら心を込めて対応しています。
帰りのカンファ終わりで「今日のヤマさんの面白かったフレーズ」なんて報告しあったりして。
徘徊があり、デイの建物から出て行ってしまう利用者様は、対応に苦慮しているうちに施設への入所が決まったり、サービス以外の時間帯で自宅や外で転倒して入院してしまうケースが多いです。
ヤマさんの場合は逆に、デイの利用回数を増やし「自分にとって馴染みのある場所」「自分がいつもいて安心できる場所」という方向へ持って行くという対策を仮にやってみました。
これが意外と良かったのか、スタッフに対しても覚えてはいないようですが悪いことはされない雰囲気は察してくれたようです。
スタッフ側も、関わる時間が増えたことで対応のコツが掴めて愛着も持てるようになりました。
かなり認知症が進行したヤマさんですが「昭和のチャラ男」的なキャラで今日もデイでチャラチャラおどけています。