お城の香水 Castle Forbes 1 −出会い−
「何故あなたはそんなにマイナーな香水を知っているの?」
これは筆者がよく言われる言葉だが、なんのことはない、単に気になった人物名や地名に "Parfume" とつけて検索しているだけなのだ。すると地域色民族色溢れる個性的な香水と巡り会える。それだけのことなのである。景勝地や植物園で検索すると美しい香水と出会えるチャンスが高めだ。香水沼なら時間のある時に是非お試しを!
今回はふとスコットランド製の香水が気になり検索した。そして香水への情熱を持つ23代フォーブス卿夫人レディ・ジニー・フォーブスの香水、キャッスル・フォーブスに出会った。
スコットランドのハイランド地方、アバーディーシャー、川を見下ろす高地にそのように城はある。
火災で消失したのを期に城は再建され、1830年に現在の姿になった。エジンバラ城を思わせる中世後期から近世初期の建築を合わせたスコットランドバロンアル様式の城となったのは19世紀、17代当主の時代だそう。フォーブス家は1440年にスコットランド王ジェームス2世よりこの地を賜った。この栄光を記念した香水はこのメゾンの代表作だ。
https://www.castleforbes.com/1445.html
フォーブス家も中世初期の様な半独立国化した小領地がせめぎ合うスコットランドの血なまぐさい15,16世紀を過しつつ、19世紀まで貴族院スコットランド代表を代々務めた名家なのだ。
城と庭園はスコットランドの歴史的建造物(Historic Environment Scotland)として登録されている。12世紀に端を発する一族は新大陸にもその歴史の足蹠を残す一族なのだ。
https://www.amazon.co.uk/Forbes-Family-History-Scotland-Tennessee/dp/1507721919
一族には歴史に名を残した者も勿論多数存在する。
時代は移り1996年、現当主夫人のレディ・ジニー・フォーブスは精油や香水への愛から敷地内の乳製品加工室だった部屋を香水生産研究ラボラトリーに改築。はじめは個人的な友人のためにだけ香水を作っていたが、友人の調香師アンドリュー・フレンチの手を借り、上質の天然香料にこだわった香水、メンズグルーミング製品、リネンウォーターなどを世界一小さな香水工場で手作りすることとなった。
ヨーロッパの床屋情報サイトでの男性用クリームやアフターシェービングローションの評価は高い。価格も70ユーロから100ユーロほどで購入できるのは実に喜ばしい。他社も見習って頂きたい。
現在のラインナップは19世紀初頭、紳士の社交場ブリティッシュ・バーバー路線のメンズグルーミングラインとメンズコロン、マニッシュなユニセックス香水を扱っている。
数年前までは女性用香水とボディコロンも販売していた。2023年2月現在、一部廃番製品が海外香水販売サイトにて購入可能だ。
200ml超過の特大ボトルがやって来る日が待ち遠しい。
このフォーブス城は滞在中に釣りとゴルフが楽しめる。ハイランド地方の自然に囲まれたリゾートなのだ。敷地内には美しい庭園と先史時代の遺物もあるという。
貴族夫人が作ったベストセラー香水といえばサンタ・マリア・ノベッラの「マレッシャラ」。あの香りは1600年代にフランスのダウモント公爵夫人が匂い袋用に調香したレシピが元となっている。レディ・ジニーの香水が世紀を跨いで愛されるというロマンチックなお話も生まれるかもしれない。
(お城の香水 2に続く https://note.com/dosukoi_cat_edt/n/n4806e1e181fa )
出典
○『スコットランド女王メアリ』
アントニア・フレイザー著 松本たま訳 中央公論社
○Castle Forbes (Parfume)
https://www.castleforbes.com/
○Castles Forbes
https://www.castle-forbes.com/
○Clan Forbs
https://www.clan-forbes.org/castle-forbes
○Voreia
https://www.voreia.ca/collections/castle-forbes
○Historic Environment Scotland
https://portal.historicenvironment.scot/designation/LB9058
○1830 – Castle Forbes, Newtownforbes, Co. Longford | Archiseek
https://www.archiseek.com/2015/1830-castle-forbes-newtownforbes-co-longford/