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<ありがとう 和歌山静子さん②>子どもにほんとうに伝えたいこと――絵本

前回、童心社での和歌山静子さんの紙芝居のお仕事をご紹介しました。
今回は、絵本についてご紹介します。


色のふしぎ、楽しい! 『くろねこさん しろねこさん』

『くろねこさん しろねこさん』(得田之久・ぶん 和歌山静子・え)

和歌山静子さんといえば、というくらいたくさん描かれてきたモチーフが、ねこです。
和歌山さんご自身が大好きだったねこの魅力がたくさん味わえる絵本『くろねこさん しろねこさん』をご紹介します。

くろねこさん、どこ?

あそびに出かけたくろねこさんとしろねこさん。

家の影にかくれてしまったくろねこさん、どこ?
せんたくものの白いシーツの前にいるしろねこさん、どこ?

くろねこさんしろねこさんとあそびながら、色の不思議を楽しむ認識絵本。
元気よくあそぶ2ひきのねこの動き、愛らしさが魅力です。

絵本で伝える性のこと『ぼくのはなし』

『ぼくのはなし』(和歌山静子・さく)

和歌山静子さんがはじめて文章と絵を手がけた絵本は、「おかあさんとみる性の本」シリーズの『ぼくのはなし』でした。

このシリーズは、小さな子どもといっしょに読める性の絵本として、その先進的な内容とともに、刊行当初から大きな話題となりました。

『ぼくのはなし』をつくるきっかけとなったのは、和歌山さんご自身の子育ての経験です。
当時は中高生向けの性教育の本しかなかった中で、絵本ならもっと小さいうちから親子で大切なことを話しあえるのではないかと考えました。

「ぼく」が今の自分からさかのぼり、みんなに愛され育てられたこと、祝福されうまれてきたこと、愛しあって命がうまれたこと――とたどっていきます。
幼い子の「ぼくはどうやってうまれたの?」という問いにこたえる1冊になりました。

性交についても真正面から説明する本作の内容は、とても覚悟がいることだった、という和歌山さん。ですが、「ぼくがぼくとしてうまれたことがよかった」といえる絵本を描きたかったのだとのちに話しています。

刊行30周年を記念した2022年のインタビューはこちらから全文をお読みいただけます。

『ぼくのはなし』から約30年後、和歌山さんは産婦人科医の遠見才希子さんとともにふたたび性をテーマにした絵本『おとなになるっていうこと』をつくりあげました。

『おとなになるっていうこと』(遠見才希子・作 和歌山静子・絵)

この作品では、和歌山さんご自身がずっと描きたかったという月経のこと、また性自認のありかたについてもとりあげられました。

日・中・韓 平和絵本『くつがいく』

『くつがいく』(和歌山静子・作)

「日・中・韓 平和絵本」とは、日本、中国、韓国の絵本作家が手をつなぎ、平和のための絵本をたがいの国で刊行しあうプロジェクトです。
和歌山静子さんは、田島征三さん、田畑精一さん、浜田桂子さんら日本の絵本作家のメンバーのひとりとして、このプロジェクトに参加しました。

国を超え、絵本作家同士がたがいの作品について議論をかわし、それぞれの絵本を作り上げていくという、異例の取り組みでした。

和歌山さんの作品は、『くつがいく』

「ざっ ざっ ざっ  ぼくたち くつは どこへいく」

和歌山さんは、兵士たちの「軍靴」を戦争の象徴として描きました。

軍靴は、となりの国の、ちかくの国の、みなみの国のひとびとのくらしや命をふみにじりました。そして、軍靴そのものも、軍靴をはいていた兵士たちもボロボロになっていきました。

絵本の最後、ひとりの少女が力強く決意を語ります。

「わたしは わたしの みらいを いきていく
わたしの みらいに せんそうは いらない」

幼いころに戦争を体験した、和歌山静子さん。
ほんとうの戦争の姿を描くことで、平和を守ることの大切さを伝えたい、和歌山さんの強い思いが伝わる1冊です。

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