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算命学余話 #R40「守護神#9 丙×春」/バックナンバー

 橘玲著『言ってはいけない』を期待して読んでみましたが、期待外れでした。どこかで聞いた統計データの繋ぎ合わせのような構成で、新しい説や知見は見当たらなかった印象です。引用したデータの多くが米国のものだというのも信憑性を下げました。これが日本人に特化した研究データだというならまだ信用してもいいですが、同じ人類だからというだけで、体質も文化背景も頭の作りも違う米国人から抽出したサンプルデータがそのまま日本人に適用できると考えるほどには、私は安直ではありません。
 医者だって欧米製の薬を日本人に処方する時は分量を2/3か半分に減らすよう指示していますし、日本人の体が欧米人に比べてアルコール分解能力が低いことや、麻薬の類を摂取しても快感を得にくいことは既に知られています。欧米人は、日本人の月当たりの性行回数が自分たちより格段に少ないことをしばしば笑うのですが、私に言わせれば他に喜びのない無趣味な欧米人をこそ嗤うべき対象です。

 残念ながら明治維新以降の西洋文化礼讃体質は現在の日本において健在であり、その延長にあるこうした図書がベストセラーになるのは嘆かわしい限りですが、当図書にも見るべきものがないでもありませんでした。それは人の人格(具体的には犯罪者になるかどうかなど)を決定するのは遺伝子の影響が大きいが、同時に成育環境の影響も見逃せないといった部分です。この説もどこか別の本で読んだ気がしますが、算命学は遺伝子については全く触れない代わりに、宿命(=生年月日)が人生の半分を、残りの半分を環境や努力が決めていくと考えています。前回の余話ではそうした点を事例を挙げて解説しました。
 私が算命学の説の方に説得力を感じるは、算命学の認める「恵まれた成育環境」というものが世間一般でいうところの(すなわち『言ってはいけない』で引用されているデータを解釈している人たちの価値基準である)経済的豊かさや両親の高学歴、幼少時代の学習機会の豊富さといった「将来の収入」に直結するようなシーンに限定していないところです。宿命によっては貧困や葛藤の多い環境に育った方が伸びる運勢というのは沢山あり、そういう宿命を持って生まれた人がへたに「恵まれた」環境に育つと却ってつまらない人生になる可能性が高まります。
 典型例としては身強と身弱の差がありますし(余話U番参照)、車騎星・牽牛星を多く持つ命式は、生ぬるい環境に育つと将来試練に打ち勝てない大人になる懸念が高まるとされています。車騎星・牽牛星は剋されることで生まれる星なので、そのそもそもの性質を大いに消化しなければ星は輝きません。「将来の収入」を気にして生きているのは「奪う」ことで生まれる星である禄存星と司禄星くらいのものなので、それ以外の星に支配されている命式の人が収入にこだわって生きる道理はないわけです。世界は口うるさく「多様性」を唱えているくせに、未だに禄存星と司禄星に利する価値観でしか人の人生を論じない社会に、算命学者はがっかりしています。

 愚痴を並べても仕方ないので、今回の余話のテーマは守護神の続きです。乙木が終わってようやく火性に入ります。十干の中でもその巨大さが際立つ太陽の星、丙火の守護神を春から順に見ていきます。
 丙火の第一守護神は一年を通じてほぼ同じで、これは他の十干と比べれば珍しい部類に入ります。通常、守護神は四季の影響を受けるので、季節によって変動していくものなのですが、丙火の守護神は第一から第二に後退することはあっても、守護神上位から外れることはありません。その大事なパートナーとは誰なのか、どうして年間を通じて有難いのか、その辺りも考えながら解説してみます。

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