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算命学余話 #U87「火母に従う」/バックナンバー

 前回の余話では複合原因からガンに結実されるまでの過程の一例を見てみました。複合原因については何も病気だけでなく、あらゆる事象について同様のことが云え、鑑定に際しては1つくらいの要素があっただけでは早計に結論を下さず、その要素を後押しする別の要素が組み合わさっているかどうか、後天運を含め多角的に判断していきます。
 要素の組合せにしても、同じテーマで相反する命式というのがよくあります。例えば一般に牽牛星は貞操観念が強く、多情や不倫を嫌う性質であるとされていますが、もし同時に陰占で春水と出ていた場合は、春水は多情や多産の命式ですから、牽牛星の堅い貞操とは相反しています。この人が本当に貞操が堅い場合は、春水の命式は結婚は1回限りの多産へと向かうでしょうし、ゆるい貞操の場合は、陽占で牽牛星の輝き(勤労や名誉)が鈍るような現象が見られるようになります。いずれにしても宿命を見ただけではどちらに振れるか判断は難しいので、より的確な状況判断をするためには実情聴取が有効となってくるわけです。
 注意したいのは、貞操と多産は矛盾しないという点です。牽牛星の結婚観と春水の結婚観は、結婚や生殖というテーマで論じると180度反するように見えて、実は微妙に接点があり、180度からはズレている。なぜズレているかは、牽牛星と春水それぞれの性質やそもそもの成立ちを考えれば、180度対極にある冲動のような明確な背反関係ではないことは明らかで、そうした微妙な相似点と相違点を正確に把握することで、正しい命式判断を導き出すことができるのです。

 この種の微妙なズレは、算命学の特徴の1つです。というのは、陰陽説をとる算命学では、陰陽という二元論や五行という五元論、四季の四元論や三分法の三元論、更には惑星の円運動といった具合に幾何学的で数学的な法則性に強く依存している一方で、惑星の軌道が厳密には楕円であることや、四季の長さが緯度によって伸び縮みすることなど、自然現象が醸す数字では割り切れないゆらぎのようなものをも同じくらい重視しているからです。
 従って、算命学を算数のように割り切れるものと捉えている人はゆらぎの理解が乏しくなりますし、ゆらぎ一本で押し切ろうとする人は数学的な明快さを欠くようになります。どちらに偏っても正確な鑑定からは遠くなります。毎度繰り返しになりますが、決め手は両者のバランスなのです。

 ところで、古代中国で生まれた算命学が木火土金水の順に移行する五行をこの世を構成するエレメントと考えたのに対し、西洋或いは西アジアで広まった古代思想では、火・土・風・水の四元素を採用し、やはり占星術などで活用されています。私は算命学以外の占術はよく知りませんが、その世界観によれば、火を消すのに使われるのは土だそうで、火は土に弱いという見立てをするそうです。おそらく砂漠など水が貴重な土地では、消火に水を使うという発想が育たなかったのが原因でしょう。
 算命学ではもちろん「水剋火」、つまり炎を消すのは水の役目ですから、水火の力関係は水が上位ということになります。同じ地球上に生まれた思想でもこのように土地柄によって見方が違ってくることは、算命学がどこまで通用するのかを考える上でも意義がありそうですが、このテーマは別の機会に論じましょう。

 今回のテーマは、火と土の関係性についてです。算命学における火と土の関係は「火生土」ですから、土にとって火はありがたい存在です。火が土によって消されるのではなく、火が燃えることによって灰が残り、それが土壌となるという発想です。農業技術としての焼き畑が普及していた土地では、このような火と土の関係性の方が理解しやすかったのでしょう。
 五行説では木火土金水の順に相生関係が生まれますから、火と土に限らず、全ての五行が1つ前の五行をありがたく感じる関係にあるのですが、その中でも特に火と土の関係は密接で、俗に「火母(かぼ)に従う」と呼んで特別扱いします。なぜ特別なのかは、前回の余話で少し触れた三合会局にも関係することですので、今回は三合会局を説明しながら火性と土性の特殊な関係について考えてみます。

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