算命学余話 #U46「宇宙と運勢を比較する」/バックナンバー
前回の余話で調舒星と龍高星の中殺をテーマに挙げたところ、短い時間に購読者が殺到したので、やっぱり読者に関心の高い話題であることが知れました。余話の読者は算命学履修者の初級・中級レベルを想定しておりますが、同時に調舒星・龍高星のある宿命の持ち主ほど易学に関心を寄せる傾向が強いので、需要と供給がうまく噛み合ったものと思われます。ご購読ありがとうございます。
前回も申し上げた通り、調舒星と龍高星はその星を持たない人からは全く理解されず、十大主星の数からいえば十人に一人しか理解者候補が得られない計算になりますが、この避けがたい現実を活かすか殺すかは、本人の心掛け次第となります。
理解者が十人に一人しかいないと嘆くか、十人に一人はいるのだと安心するかでは、えらい違いです。或いは自分は十人に一人の逸材だと悦に入るか、十人に一人なんて大して珍しくもないとスルーするかでは、えらい違いです。このどちらに振れるかについては、算命学は論じておりません。どちらに振れても算命学の陰陽思想としては同じことなのです。算命学はその人の心境にまで干渉しないので、自分の宿命を良しとするか悪しとするかは本人の心が、或いは理性が決めることなのです。ましてや他人がとやかく云って甲乙をつけるべきものでは全くありません。
算命学の初級者によくある間違いとしてよくあるのは、こうした「ちょっと特異な」星や命式があるとそれに飛びついてしまい、それ以外の要素がまるで存在していないかのように見えなくなってしまうことです。「調舒星があるから自殺だ」とか、「魅力性があるからモテる」とか、「刑があるから礼儀を知らん」とか、そんな一要素だけで人を判断するなどという軽挙は上級者ならやりませんから、そういう発言を聞いただけでその人の見識の浅さが知れてしまうというものです。
以前にも採り上げたように、生年月日が同じ人というのはこの世に何千何万といます。その何千何万が全く同じ人生を歩むと考えること自体無理があり、多少似た部分は出るにしても一人として同じ人生の者はいないことは、常識的にも判ることです。そうした常識の備わっていない人が鑑定を行うと、占い師全体の評判が落ちてしまいます。占いの技術などなくとも常識の備わっている一般人の方が、常識のない鑑定者よりよほど世間を知っていることになるからです。
鑑定者の心得については余話#U36に書いたので、興味のある方はそちらを読んで頂くとして、今回は具体的な命式からやや離れて、鑑定を行う上で参考になると思われる世界の捉え方について、宇宙論的な話を展開してみたいと思います。
例えば、皆さんは学校で地球の地軸の傾きを23.4度と習ったと思います。太陽を公転する地球は独楽のように揺れながら回っているため、常に23.4度というわけではなく、厳密にはフラフラと前後に若干の誤差を生み一定してはいないのですが、あまり傾き過ぎると横転してしまうこと、傾きがゼロだと四季が生じないことなどから、人類が知恵をつけて算命学の基礎となる思想を展開し始めた頃には、既に地球がこの傾きで定着していたことは容易に想像がつきます。(「常識」でいうなら人類発祥前からそうだったでしょう。)
我々は近代教育の影響で、天文学のより正確な知識は西洋が最初に気付いたと思いがちですが、算命学の起こった数千年前の中国では、地球が太陽を一年かけて回っていること、地軸が傾いていること、その角度が23.4度あたりであることはとうに知っていました。西洋社会がつい最近まで天動説に固執していたことを考えれば、驚くべき早さです。
なぜ地軸の傾きを知っていたと判断できるかといえば、自然思想に基づく算命学では四季という揺るがぬ現象が思想基盤の一つとなっており、そのひと廻りを12で割ったものが十二支であり、十二支の最初の子を時計盤の12時に当てた場合、1時は丑、2時は寅となり、この1時と2時の間を丑寅(艮=うしとら)と呼び、これは日本でも古来より「鬼門」と呼ばれる東北の角度に当たります。1時と2時の間は厳密には30度から60度の間なので23.4度には合致しませんが、算命学の発祥地はおそらく中国の中原の辺りだとされていることから、その緯度を考慮すると概ねこの数値が算出されると考えられるのです。
中国広しといえども、当時の中国人が北極や赤道にまで進出して天体観測できたとは考えにくいので、その辺りは割り引かなければなりませんが、いずれにせよ何百年も天動説を常識としていた西洋に比べて、中国では何千年も前から地動説はもちろん地球の傾きとその角度までが常識となっており、その傾きこそが世界に四季を与え、四季が人間生活に多大な影響をもたらすことから、特にその角度の先端である「うしとら」を鬼門、反対側の西南方向を裏鬼門として注目したのです。
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