【03】今のあなたは、過去の適応の結果
動作学キーワード3「適応」
前々回、前回と、物事をマクロな視点で見られるようになる、動作学の3つの基本的な概念についてひとつひとつ解説してきました。
今回は、3つの概念の3つめ、「適応」についてです。
適応は一般にもよく使われる言葉なので、ご存知の方も多いと思いますが、ここでの定義は「生物が環境に応じて、それに適するように形態や性質を変化させていくこと」です。
これについてはわりと身近に体感したことがある人も多いかもしれませんね。
たとえば、筋トレ。
かなり大雑把な解説ではありますが、筋肉を使う環境に身を置く、つまりトレーニングを日常的にすると、筋肉をよく使うという環境に適するように体が変化し、その結果として筋肉が発達するといったことが起こります。
体についていえば、姿勢というのも適応のわかりやすい例かもしれません。
猫背やストレートネックなどは好ましくないとされる姿勢ですが、そのような姿勢をしたほうが適しているという環境が続いた結果として体が適応した状態と言えます。
では、ここで、今のあなたという人物を適応というレンズを通して見てみましょう。
「これまでの適応の結果かな?」と何か思い当たる節はあるでしょうか?
筋肉の付き方、脂肪の付き方、視力や体の柔軟性…いろいろと思いつくかもしれません。
体質や性格といった部分ではどうでしょうか?
そう、先に挙げたような体感としてわかる変化については自覚がしやすく、適応の概念を当てはめて見やすいのですが、たとえば内臓などの体の中でも適応は起こっていますし、もちろん脳、つまり考え方や思考の傾向といった領域でも適応は起こっています。
「私は人見知りだから」
「俺は怒りっぽい性格だから」
「冷えやすい体質だから」
そんな状態に今あるということは、もちろん先天的、器質的な要因もありますが、もともと備わった要因に、これまでの人生で体験してきた環境がかけあわさって、適応してそうなったとも言えるんですね。
そして、ここで強調したいのが、もし今のあなたが望む状態にないとしても、それは過去の適応の結果でしかないから、やりようによってこの先は変えられますよ、ということです。
それこそ性格や体質といった、一見変えにくそうに感じる物事でも変えられる可能性があります。
年齢のせいかも、と思っていることさえ、変えられる可能性があります。
いや、あえて言い切りましょう。
おそらくあなたが「これは変えられるものだ」と感じる物事の数より、さらにずっとずっと多くの物事が変えられるはずです、と。
では、どうすれば変えられるでしょうか?
そういうことをこの先、さまざまな方向から解説するのがこのマガジンの趣旨なので、ぜひ今後の連載を楽しみにしていてください。
今の時点では一言、「環境を変えることで変えられる」というポイントだけお伝えしておきます。
適応は時間をかけてゆっくりと起こる変化なので、一夜で大変身、というようなことは起こりませんが、変化は確実に訪れます。
その変化は生命(いのち)の営みとして自然に起こることなので、付け焼き刃ではない、無理矢理でもない、本質的な変化ですし、そもそもが生命(いのち)の自然な働きとして起こることなので、「あの人には起きたけれど自分には起きない」ということはありえません。
さあ、あなたは、どんな変化を起こしたいですか?
適応について押さえておきたいポイント:
・今の自分は過去に積み重ねた出来事に適応した結果である。
・今この瞬間に積み重ねている出来事に適応した結果が未来の自分になる。