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俳句物語0031~0040 小雪降る積もらぬ白に文字記す

秋から冬に変わる時期。

飢えを凌ぐとかどうにか生き延びるといった想いが多い。

そんな中ジョナサンとディオはラグビーをしている。


0031

子が指した鮫に食われる風呂の中


 家には鮫がいる。UFOもいる。ドラえもんもいる。各種の鬼もいる。子どもが言えばそこら中に何でもいることになる。それに慣れてしまうと、本当に鮫が出た時も気付かないことがある。今回の「パパ、サメ!」は本当だった。気付いた時には手遅れに。


0032

冬うらら出てきた猫がすぐ戻る


 家族で散歩していた折に、猫を発見した娘が近寄った。飼い猫だったようで、道の脇にあった家にすぐに入っていった。子どもらに襲われると感じたのか、家を出たものの寒くてすぐに戻ったか。
 残念そうな娘に向けて、家で猫になった。ネギをくれた。


0033

小雪降る積もらぬ白に文字記す


小雨のような、埃のような、小さな小さな雪が降る。積もるものではない。現れては消える白の上に、雪よりも寿命の短い文字を記す。どこにも辿り着けない、誰のでもない物語を。
「どこへ?」
「どこにも」
どこかへ行かなければ。雪雲を追って歩く。


0034

ジョナサンとディオラグビーでは共闘し


 ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドー。やがて子孫まで続く戦いを繰り広げることになる両者だが、学生時代はラグビー部で共闘し、チームを勝利に導いていた。要はZガンダム時代のアムロとクワトロ、と考えることが出来る。


0035

小春日の子の指先の月の朝


「の」固めの句は好き。対象がどんどん絞られていくようで。始めは「朝の月」だったけれど、絞られていく対象が最後に広がる形にしたかったのと、「朝の月」自体が季語なので季重なりを避けて。
 四文字季語+「や」も避けたい。自分縛りが増えてきた。


0036

憂国忌転がるものは首に見え


 誰かの忘れた空気の抜けたボールが。無数の木の実が。墜落してゆくバルーンが。人形の尻や、道路の真ん中に転がる血の付いたヘルメットや、川上から流れてくる桃や、雪玉一つ一つが。
 まだあるな、と自身の首を撫でる。撫でたら落ちた。
 すぐに拾う。


0037

咳く(しわぶく)やキメたオジーが歌い出す


 ブラック・サバス「Sweet leaf」は、ボーカルのオジー・オズボーンの咳から始まる。MVを観ると、マリファナをキメまくった出演者がラリった行動を取っている。真似しないように。オジーはパーキンソン病を発症するもまだ存命である。



0038

冬菜摘む冬肉も摘む冬人も


 腹を満たすために、野山で冬菜を摘む。隣に生えていた冬肉も摘む。冬の間にだけ地面から生えるその肉は美味とは程遠い。ただの鼠と言う人もいる。同じ山で冬人もうろうろしていたので連れ帰る。そのまま住み着かせる。肉を食べた後に肉に包まれて眠る。


0039

暖房にあたる振りして生繋ぐ


 壊れっぱなしのエアコン、灯油を給油していないストーブ、果てはへし折れたマッチ。うちにある暖房器具は全て見せかけだけになってしまっている。それら全て機能している振りをして寒さを凌ぐ。明日まで生きていられたらいい。それを毎日繰り返す。


0040

見えないが膝毛布の上何かいる


 文章を書きながらいつの間にか寝ていた。私を気遣ってくれてか、妻が膝毛布をかけてくれていた。それはいいのだが、毛布の上が重い。見えない何かが居座っている。身動きが取れぬ。文章だけは書ける。そもそも膝毛布など家にはない。妻などいない。

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泥辺五郎
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