音楽随筆集「雨の日の散歩」ニッポンお風呂バンド
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年末近くになり、急激に仕事が忙しくなった。その忙しさの中には、人手不足で苦しんでいる支社へのヘルプも含まれていた。昨年抜けた人手の穴を埋めるために新しく入った人は誰も定着しなかった。人手と時間がかかる仕事が入った際には、私の所属する本社からヘルプに入ることで、その場をしのいでいる。本社は本社で、新しく始まる仕事もあり、ベテランを揃えてないといけないため、ヘルプには一番新入りの私が立て続けに行くことになった。ヘルプ作業は、肉体を使う単純な仕事の繰り返しである。一回あたり一時間半から二時間かかる仕事を三回繰り返す流れが続いた。
久しぶりにエナジードリンクの力を借りたり、後半のいつ終わるともしれない片付け作業は立ったままする必要もない、と座り込みながら仕事と回復を同時にこなすことで乗り切れるようになった。しかし作業中の一番の助けとなるのは、頭の中で流れる音楽であった。その時その時お気に入りの曲や、早朝に何かを書きながら繰り返し聴いた曲を頭の中で流し続けると、単純作業の苦痛もやわらいだ。十何年か前に、日雇い仕事で食品工場のライン作業についている際に手に入れた技だった。その頃はTHE BACK HORN「美しい名前」を脳内で歌えるようにするために、歌詞を暗記したりしていた。なかなか進まない時計の針を、歌とともに進めていった。
ヘルプ二日目の私の脳内で繰り返し再生されていたのは、ニッポンお風呂バンド「雨の日の散歩」であった。彼らが何者かというのを説明するために、You Tubeの概要欄を引用する。
要は素人集団であるが、彼らの参加するオフ会のレポートマンガ
を読んで「何だこの人たちは」と興味を持ってYou Tubeを覗いたのが今年の9月。「雨の日の散歩」に強く惹かれ、そのことを書いた。
その「雨の日の散歩」がSpotifyでも聴けるようになり、早速リピートして聴いていたのが、ヘルプ二日目の早朝だったわけだ。普段の私はあまりYou Tubeに触れないが、Spotifyで毎日音楽を聴く。「カラオケ歌うま選手権」みたいなテレビ番組で、めちゃくちゃ歌のうまい女子高生が「雨の日の散歩」を歌って「なんだこの名曲は?」みたいな流れになり、ニッポンお風呂バンドの奇人たちがテレビに出て大炎上、までの流れを妄想していた。
ヘルプから本社に戻ると、そちらの仕事もまだ終わりが見えておらず、珍しく残業をした。その流れはまだ続くようで、本日も私のヘルプ出向である。しかしヘルプでの働き方にも慣れて、身体の痛みや引きずる疲れもない。その要因の一つは、愛する一曲のおかげでもあった。そういうわけでこの文章を記してみた。
(了)
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