ぬいぐるみ小説集「スーパーの廃墟のレジに立つ犬」(半分)#シロクマ文芸部
※こちらを含む「ぬいぐるみ小説集」をkindle出版しましたので、公開済のものの内容を半分程度にしております。
懐かしい顔に会う。その犬のぬいぐるみは廃墟となった巨大スーパーのレジに立っていた。食料品を提供するこの手の店は、ぬいぐるみ従業員の導入に最も積極的な業界でもあった。私が廃墟を撮影する旅を始めた頃に出会った彼と、変わらぬ姿であった。あてもなく旅をしているうちに、元の場所に戻ってきてしまったようだ。
「久しぶり」と私は彼に声をかけた。
「いらっしゃいませ」私は商品