UXとUIデザインの分離、事業全体のユーザー体験をデザインする
ユーザー目線の違和感
私は「UIデザイナー」という肩書きで仕事をしています。主な役割はUIをデザインすることです。
でも、プロダクトの開発に日々取り組む中で、ふと疑問に思ったことがあります。
「あれ?プロダクトとウェブサイトの印象がなんだかチグハグだな。文章のトーンも違うし…。そういえば、営業メールや解約業務の印象も少しズレているような気がする。」
これって、ある意味仕方ないことなのかもしれません。開発部、営業部、マーケティング、総務…。それぞれ異なる部署で動き、統括している上司も違えば、日々の業務で求められる成果も異なります。
結果として、アウトプットから受ける印象がバラバラになるのは自然なことです。
でも、ちょっと待ってください。
ユーザーはそれぞれのイベントをすべからず体験する可能性は大いにあります。
顧客がサービスを使うライフサイクルは点ではなく線でつながっています。認知、利用、解約といったすべてのイベントが、顧客体験の一部なのです。
UXってなに?
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが製品・サービスやブランドと関わる中で得る体験全体を指します。
見た目や操作感といった目に見える要素だけでなく、期待感や信頼感、利用後の満足感といった感情的な側面も含まれます。つまり、UXは単なるデザインやインターフェースの課題ではなく、企業やブランドとの関係を通じて感じる価値そのものです。
UXデザインは何すればいいの?
UXデザインは、次のような活動を通じてユーザー体験を設計します。
ユーザーリサーチ
ユーザーの課題やニーズを調査・把握するプロトタイピング
試作品を作成し、仮説を検証する情報設計
情報の構造やナビゲーションを整理するインタラクションデザイン
ユーザーとのやり取りをスムーズにする仕組みを作るサービス設計
サービス全体の流れを最適化する
これらは、プロダクトのインターフェース設計だけでなく、サービスフローや顧客対応など、ユーザーとの接点すべてを含みます。
UXはプロダクトだけではない
ユーザー体験は、プロダクト利用前から始まり、利用中、そして利用後まで続きます。認知、契約、サポート、解約といったすべての接点が体験の一部です。
たとえば、契約プロセスがスムーズであっても、解約時の対応が冷たければ、ユーザーはその企業全体に失望するかもしれません。
すべての接点を一貫性を持って設計することが求められます。
すべての業務がユーザー体験を支える
優れたユーザー体験の実現には、UXデザインはデザイナーだけの仕事ではありません。営業、総務、カスタマーサポート(CS)など、あらゆる職種がユーザー体験を支えています。
たとえば、営業資料の言葉遣い、請求書のフォーマット、サポート対応の丁寧さ。これらすべてがUXに影響します。各職種がユーザーの視点を理解し、自身の業務に反映させることで、企業全体として高いUXが実現します。
会社をプロダクトとして考えてみたらどうなる?
優れた体験を提供するには、事業全体を一つのプロダクトとして捉える視点が必要です。認知から解約まで、統一されたトーンやメッセージでつなぎ、一貫性のある世界観を構築します。
たとえば、解約時に丁寧な対応をすることで、ユーザーは再契約や別サービス利用を検討するかもしれません。短期的な利益に目を向けるだけではなく、ユーザーとの長期的な信頼を築く姿勢が重要です。
分断された業務をつなげるUX
多くの企業では業務が細分化され、部門間の連携不足が課題となっています。これにより、スピード感の欠如や、体験の分断が生じることもあります。
これを防ぐには、事業全体を俯瞰し、一貫性のある体験を設計する仕組みが必要です。ユーザーの視点で事業を捉え、統合的なUXを目指す体制を整えることで、分断を解消できます。
まとめ
UXはUIデザイナーだけの領域ではありません。それは、事業全体を通じてユーザーが得る体験のすべてです。認知から解約までのすべてを一貫性のある視点で設計し、長期的な信頼を築くことが重要です。
業務の分断を乗り越え、全体を俯瞰する視点を持つことが、真のUX向上につながります。ユーザーの信頼を軸にしたUXデザインが、企業ブランドになり企業文化となっていくのではないでしょうか。
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