いちばんやさしいアジャイル開発の教本の現場から 第二話: 参考文献の歩き方 #アジャイルのやさしい本
はじめに
この記事はいちばんやさしいdora_e_mの Advent Calendar 2020、要するに一人アドベントカレンダーの15日目のために書いた記事だ。
この記事では、「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」を執筆するにあたり参考にした書籍について紹介していく。
参考文献マップ
私が執筆した1-3,5章で参考にした文献(書籍のみ)を、以下の2軸で分類した。
・アジャイルと直接的に関連しているか/間接的な関連か
・プロセス・チーム寄りか/プロダクト・ビジネス寄りか
図中の色は、下記のような分類になっている。
緑: Chapter 1
黄: Chapter 2
赤: Chapter 3
緑: Chapter 5
このマップを見て、違和感を持たれた方もいらっしゃるだろう。例えば「7つの習慣」はビジネス寄りじゃないのか?など。このマップについては、本文中でどのように参照したかという文脈と、私がその書籍をどう捉えているかという偏見に基づいて作成している。
「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」の次に読むなら?
さきほどの参考文献マップを、ざっくり3つに分類した。
赤が「アジャイル開発への理解をさらに深める/ノウハウを取得する」もの。
青が「チーム開発、開発プロセスの改善を推し進める」もの。
緑が「開発するものに価値を付与するビジネス視点を得る」もの。
どれも自分自身が参考にした書籍だ。どれを読んだらいいですか?と問うならば、「全部!参考文献、全部!」と返したくなる。が、それはぜんぜん「いちばんやさしい」行いではないので、各分類で「次の一冊」としてとっつきやすいものを紹介していく。
アジャイル開発への理解をさらに深める/ノウハウを取得する
アジャイル開発自体をさらに理解し実践していきたい、となれば次の一冊は「カイゼン・ジャーニー」を推す。
これは共著者たちが執筆しているからということではなく、純粋にとっつきやすいからだ。ストーリー仕立てで、開発のどの局面でどういったプラクティスが必要になるか、を自然に学ぶことができる。
また、今年増補改訂版が出た「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」も次の一冊としては適切だ。タイトルどおり「スクラム」に絞った内容だが、その分、入門書でありながら深い内容になっている。増補改訂版で追加された、第一線で活躍するスクラム実践者たちのコラムは必読だ。
チーム開発、開発プロセスの改善を推し進める
チーム開発の観点では、「Team Geek」を推したい。
チーム文化、サーバントリーダーシップ、有害な人への対処方法、そしてHRTの原則…200ページ弱のコンパクトなサイズに、チームづくりのエッセンスが詰まっている。私はこの本をチームで読み合わせることを複数回実施した。それくらい、考え方の根底を形作ってくれた本だ。
開発プロセスの面では、The DevOpsハンドブックを手元に置いておくといいだろう。
アジャイル開発とは親戚のような関係(だと、私は思っている)のDevOpsに関するハンドブックであり、分厚い。「通読しよう」と思って手に取るとくじけてしまいそうなので、「知りたい部分をつまみぐい」という風に読むのがいいだろう。私の同僚は非エンジニアでありながらこの本を手にとり、「めちゃくちゃ刺さります!いいですね!」と激賞していた。
開発するものに価値を付与するビジネス視点を得る
価値あるものづくりをするためには、WHYの探求が不可欠だ。タイトルからしてズバリそのものな「FIND YOUR WHY」はそれをサポートしてくれる。
そして「つながり」の創りかたもお勧めだ。LTVを上げていくためには、顧客との関係構築が重要だ。「リカーリングモデル」というともっぱらWebサービスが想起されるが、この書籍ではAmazon、テスラ、Netflixと並んで、東京都町田市にある「でんかのヤマグチ」が紹介されている点がユニークだ。
書籍以外の参考文献
ソフトウェア開発にまつわる情報の取得先は、書籍に限定されない。むしろ最新の情報を取得したいのであれば積極的にWebを参照することが求められる。そしてそれはアジャイル開発でも例外ではない。
私のナレッジベースを形成してきたWeb上の情報は数えきれないほどあるのだが、その中でも本書執筆にあたって考え方に大きな影響を及ぼした3つのWeb上のコンテンツを紹介する。
ryuzeeさんのこのスライドは、何度参照したかわからない。自分自身が理解を深めるために、チームメンバーへアジャイルの導入を説明する際の説得材料として…様々な場面で活用してきた。
kawashimaさんのこちらの資料は、本文中で紹介している「YAGNI」を実践しようとする際にはぜひ参照してもらいたいものだ。タイトルのとおり、YAGNIの名のもとに思考停止になっていないかは点検したい。
そしてt_wadaさんの「質とスピード」。綺麗な設計/コードのほうが、テストを書いていたほうが、つまり質を高く保っているほうが結果としてスピードにつながる。おそらく、日ごろからリファクタリングやテストに時間を割いている人であれば経験的にも納得できる「質とスピードは両立する」という主張が、これほどわかりやすく言語化されているのは本当にありがたい。
PR:次の一歩を踏み出す前に、まず最初の一歩をね。
いちばんやさしいアジャイル開発の教本を執筆する上で参考にした、自分自身の考え方を形成していった書籍・資料について紹介してきた。
「いちばんやさしい」のさらに先へ行きたいという方は、ぜひ今回紹介したものに触れてみてほしい。
そして、まだ「いちばんやさしい」アジャイルに触れていない、という方。
ぜひとも、「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」を手に取り、一歩踏み出してもらいたい。
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