いちばんやさしいアジャイル開発の教本の現場から 第五話: 出版されてからのはなし。 #アジャイルのやさしい本
はじめに
この記事はいちばんやさしいdora_e_mの Advent Calendar 2020、要するに一人アドベントカレンダーの18日目のために書いた記事だ。
「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」の現場から、最終回は「出版されてからのはなし」。
5/1 緊急事態宣言下での出版
これまで身に着けてきたノウハウを言語化し、参考文献の助けを借りて質を高め、伝えたいメッセージを強靭にするため書いたものを捨て、レビューで磨きをかけー。心血を注いだ、私にとっては初めての著書が、ついに発売された。
時は2020年5月1日。例年であれば本格的なゴールデンウィークに突入する直前というタイミングだが、今年は様相がまるで違っていた。
そう、緊急事態宣言である。
「本屋がやってない」という究極の逆風、明日どうなるかわからない不確実性の極致に、この本は世に放たれた。
すこし感染者数の増加がおさまった5月中旬、近所の本屋でようやく自分の著書と対面した。
出版社から見本誌をいただいていたし、Amazonで販売されているのも確認していたが、このときにようやく「本当に出版されたんだ!」という感慨がこみあげてきた。
感想が気になって仕方がない日々
いざ出版されると、読んでくれた方の感想が気になってしかたがなくなる日々が続いた。自分としては自信がある内容に仕上げたつもりだが、果たして本当に役立つものになっているだろうか…そもそも、感想を上げてくれる人がいるのだろうか…。
しばらくはAmazonのレビューに張り付く日々だった。ありがたいことに、高い評価をしてくださる方が多く、それはそれで気分をよくするためにAmazonレビューに張り付く要因となるのだった。
イベントでの発信
出版する前から著者陣で決めていたことは、「出しっぱなしにしないこと」だ。イベントなどでフォローアップしていこう、と決めており、実際にいくつかのイベントで発信を行っていった。
発刊記念イベント。
読んでくれた方々によるトークイベント。
現場攻略をテーマに話したり。
BPStudyにお邪魔したり。
イベントで話すために情報を整理すると、新たな気づきが生まれてくる。自分が書いた本から自分自身で学ぶ、というある種不思議な体験があった。
周囲の変化
自分の周囲でも、「読んだよー」という声や「チームで読み合わせたよ」という声があがるようになっていた。なかでも、この本に書かれている手法を実際に試してみた、というのがうれしくてしょうがなかった。身近な世界を、ちょっとだけ動かすことができたのだ。
自身の変化
まず、出版した書籍に対して自信を持つことができた。そしてそれは結果として、自分が歩んできたアジャイル・ジャーニーを肯定するものにほかならなかった。
日本全国を飛び回り、様々な現場でアジャイルと向き合う人たちとは、自分は違う。一つの会社で、小さなチームとともにアジャイルを実践し続けている、ただそれだけだ。そんな自分が本を書いていいのか。そんな自分が書いた本は、役に立つのか。執筆することになってからずっと付きまとっていた卑屈な考えは、だんだんと影を潜めていった。
さらに学ぶ
そして、「アジャイル開発」に関する本を出版した結果として、もっとアジャイル開発を知りたい、習得したい、という気持ちが湧いてくるようになった。
スクラムフェス大阪やXP祭り、アジャテクなど様々な勉強会で刺激を受けつつ、本もたくさん読んだ。今年はアジャイル本の当たり年なのでは?というくらい、数多くの名著が出版された。(ここに紹介していないものもある)
おわりに
本を出版してからのよもやま話、とりわけ自分や周囲に起こった変化について書いた。いまふりかえってみても、執筆の日々はかけがえのないものだった。
これまで身に着けてきたノウハウを言語化し、参考文献の助けを借りて質を高め、伝えたいメッセージを強靭にするため書いたものを捨て、レビューで磨きをかける。
その行為自体が自らの知恵となり、さらに本を手に取った人の背中を押すものになる。執筆というのは、偉大な行為だ、と改めて思う。
ドモホルンリンクルの製造過程のようにシトシトと溜めていたノウハウは、今回全て言語化してしまった。しかし、またあとを追うように次のノウハウが溜まり始めている。いつかまた、これらを言語化する機会がくるかもしれない。そのためにも、日々noteで指を鍛えておこうと思う。
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