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意思決定の遅延とネガティブケイパビリティ


不確実性からは早く抜け出したくなる

こんにちは。今日はネガティブケイパビリティについて書きます。
散歩しながらこの文章をかいているのですが、地図を見ないであまり知らないエリアをうろついており絶賛迷子中です。めちゃくちゃ不安。下記のような不安が胸を去来します。

  • 家に帰り着くことができるだろうか

  • チームの朝会に間に合うだろうか(そう、今は平日の朝です)

  • 財布持ってないから何かあったら詰む

出発した時刻と現在時刻、家にいるべき時刻を鑑みながらできるだけ知らない道を選んでいく。スリル満点なのでぜひ試してみてください。

閑話休題。なにも散歩の話がしたかったわけじゃない。日々の仕事においても、僕らは地図を持たず生きるすべも何も持たず戦場へ行くことがままあります。
大枠で向かいたいゴールはある。道筋はわからない。そんなときに大切なのがネガティブケイパビリティ(あいまいさ耐性)であり、勇気をもって行う意思決定の遅延です。

自分の経験で道筋を描くあやうさ

札幌市の中心部で長く生まれ育った人がいます。札幌の地理ならお手の物、どこからだってテレビ塔にたどり着ける。藻岩山だって登っちゃう。
そんな人物が、東京在住の友人に「遊びに来てよ」と誘われます。田園調布にある友人宅を目指し出発しますが、いつまでも目的地にたどりつくことができません。確かに田園調布駅で降りたのに…。

ここで札幌駅周辺の地図と、田園調布駅周辺の地図を見比べてみましょう。

札幌駅周辺の地図
田園調布駅周辺の地図

札幌駅周辺は格子状、田園調布駅周辺は円を描くような形状で道路が整備されています。札幌駅周辺しか知らない人物が頭の中にある札幌の地図をイメージして田園調布を歩くと、見事に迷子になってしまいます。(ものすごく極端な例として示しているので、「そうはならんやろ」というツッコミはご遠慮ください)

「田園調布で札幌の地図を広げて歩くなんて、そんなことはしないよ」と思われるでしょう。確かにそうですね。しかし仕事の現場では「違う場所の地図でゴールを目指す」ということをやってしまいがちです。
以前はこの方法でうまく行ったから。
毎回こうやってるから。
経験に基づいてゴールまでの計画を立てる。そうすると安心するんです、道がわかったような気になるので。でも実際にはその地図と今目の前に広がるフィールドは全然別物なので、気がつけば袋小路に入り込んでしまいます。

最終決定を遅らせよう

なので、意思決定はできるだけ遅らせたい。この道でたしかだとわかるまで遅らせたい。
アジャイル開発を実践する現場では直近の計画づくりは綿密に行うけれど、遠い未来のことは詳細化しない。これは意思決定を遅延させる行為にほかなりません。

ネガティブケイパビリティをもつ

こういった「未来のことは今は決めない」ということには不安が伴います。

たとえば、海外旅行するのに二泊目以降の宿を取ってないと言われたら、旅慣れてない人は不安になります。筆者の友人にとても旅慣れてる人がいるのですが、その人は一泊目の宿しかとらないで海外へでかけていきます。私からするとそんなことは怖くてできないのですが、その友人から印象的なエピソードを教えてもらいました。

10月後半、その人は単身ヨルダンへと旅立ちました。ペトラ遺跡をめぐり、現地の人々と交流し帰ってきた彼女はいいました。
「本当はイスラエルも巡ってくる予定だったんですけどねー。戦争が始まって橋が封鎖されちゃったから、ヨルダンだけの工程に変更したんですよー。」
隣国で戦争が始まっているところに旅行するというのがそもそもすごいな・・・と思ったのですが、もし予め宿をとっていたり、工程が定まっているツアーパックだったのなら旅行そのものが中止になっていたでしょう。未来のことを細かく決めなかったことで大胆に方針を変更し、旅行を楽しむことができたようです。
ちょっと事例として極端すぎるので参考になるかわかりませんが、こういうこともあります。

どうやって不安を消すか。ネガティブケイパビリティを持つか。先述の「地図を見ないで迷子になる」は個人的にはおすすめのアクティビティですが、仕事の中でネガティブケイパビリティを獲得する方法について考えてみます。

新しい概念が現れた時、どうしたらその概念を受け止められるでしょうか。それの意義が感じられた時、効果を実感した時です。

スプリントの成果から学び、将来の計画を書き換える必要がでたとき。その経験の積み重ねはネガティブケイパビリティをもたらします。

スタート時点では不安を解消するために、先々の計画をしてもよいでしょう。でもそれは絶対のものではなく、こういうことが起こったら変更することもあるよ、と申し送りしておく。そうすると計画があることで安心が得られますし、「こうなったらそうなる」という経路がわかっていれば想像のつくことなのでこれも安心できます。
こうして安心の中で変化を起こし、徐々にネガティブケイパビリティを高めていく。そうすれば、他の街の地図をあてはめるような計画をつくるのではなく、つどゴールと現在地をまなざしながら地図を更新しつづけるようになれるでしょう。

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