【本】2024年11月に読んだ本
うそコンシェルジュ - 津村記久子
電車の中で軽く泣いた。それぐらい素敵な本だった。
300頁弱あるので一見して身構えてしまうかもしれないけれど、その実は11篇の短編集から成っており、そこへ津村さんの眼差し・言葉とくる訳だから、ひたすらに読み易く、無限に味わい深い。
小さな社会の中に私と様々な人がいて、ちょっとした事件が起きる。それ自体はコメディだったりするが、コメディに関わる(或いは織り成す)人それぞれの誠実さやどうしようもなさが浮き彫りになって、全員の思いが交差はしなくても少しずつ(良かれ悪しかれ)干渉し合い、また「私」でいられるための何かを得たり、捨てたりする。
これは本作のどの短編に対しての要約でもないし、個人的には小説を要約することほど愚かしい事もなかろうと思っているけれど、便宜上、仮の要約をする。
で、物語の後半(クライマックスではなく)に、そっと挿入された一、二行に、初めて本を読んだ日からその瞬間の、大袈裟に言えば私の人生で味わった悲喜交々の収束を感じたりする。
つまり"そんな瞬間"がふと訪れる本だということを伝えたかったわけで、"そんな瞬間"が移動中だったりしたから、"電車の中で軽く泣いた"のであった。
短歌になりたい - 絹川柊佳
知人からのおすすめで手に取った絹川柊佳さんの歌集。
絹川さんの短歌に対してではなく、短歌全体に抱く私の感想になってしまうのだけれど、短歌ってすごく難しい。詠むことは当然として、読むことも。
日常の中で歌人が体験し、感じたことを、それがありふれたことであれ特有のものであれ、私たちの日常の言葉使いとは異なる方法で表現し、読み手は考察したり、違和感をそのまま楽しんだり、テクニックに唸ったりする。
参加したことはないけれど、歌会をYoutubeなどで見ているとこのような流れである気がするし、実際、自分一人でも同じような思考を辿る(テクニックは分からないけれど)。その一連の中で自分の着眼点は否が応でも歌人の自意識に向かってしまい、勝手に思い込んだ自意識の強弱が作品に対する評に直結してしまう。どうしても。
何が言いたいのか。つまり私に短歌を味わう素養がないと言う嘆きである。
なので、素敵な作品であることに間違いはないのだが、それを言葉にすることが今はできない。時間をかけて、自分の読み方と感じたことに変化があれば、いつか別の場所でそれを書きたい。
みじかい髪も長い髪も炎 - 平岡直子
どうしようもなくタイトルに惹かれた一冊。
なのだけれど、やはり今は言葉にならない。ただ、あまりにも印象的な短歌があり、私の中で何かが少し変わった気がしたので、それを引用させていただきます。