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【本】2024年9月に読んだ本

リヴァイアサン - ポール・オースター

一人の男が爆死した。主人公ピーターは、その男がかつての親友サックスであることを直感し、彼が爆死に至ったその経緯を語り始める。
かなり強烈な導入ではあるけれど、そこでまんまと引き込まれ、最後まで集中力を持って(持たされて)読むことができた。でも、これは要するにどういう物語なのか、という事はよく分からない。もちろん私の理解が及んでいないのは大前提にあるけれど、要点でまとめるとか、そういったことができない類の本だと思う(多分オースター作品全般がそう)。物語が提示されて、それを受け手がスリムにしていく作業とは真逆の、定点観測的なものなのかもしれない。
あと、ちょっと内容に触れてしまうんですが、ピーターとサックスが初めて出会ったバーで酒を酌み交わし、酔っ払ってよろけたピーターをサックスが「四本の腕で支えてくれた」と表現されているところで、なぜか妙にグッときてしまった。酔っ払った時のテンプレ表現というか、ともすればギャグなんですが、それを大真面目に書いているあたりが滑稽で、豊かで。そこで「ああ、この本(著者)好きだ」となり一層引き込まれたんですが、著者から「どこで引き込まれとんねん」、と言われてしまいそうな気もします。


幽霊たち - ポール・オースター

「ニューヨーク三部作」の二作目。全然順番には読んでなくて、「ガラスの街」「リヴァイアサン」と読み、私にとって三作目のオースター作品だったのですが、また尾行してた。まだ読んでない本はたくさんあるけれど、もしかしてオースター作品って全作尾行とか監視をしてるんじゃないかしら、みたいな気がしてくる。
ホワイトからの依頼でブラックという男を監視することになった私立探偵のブルー。ブラックの住む部屋の向かいの建物(の一室)に住み込んで、監視と依頼者への報告を続けるが…。
一見ミステリーな面構えではありつつ、「ガラスの街」同様、煙に巻かれるというか、いや勝手に物語らしい物語を期待してたのは私なんだけど、と少し反省すらしてしまう。でもこれは「つまらない」という感想ではないです。わかりやすさから遠く距離を置いて、私を迷子にしてくれる本。そんなふうに思いました。


朝からロック - 後藤正文

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが、朝日新聞で連載するコラムを書籍化した作品。著者にとってこんな感想は心外というか、何も届いてないな、とがっかりさせてしまうかもしれないけれど、私は文章から感じられる後藤さんの人柄が強く印象に残った。
自分自身の選択が何かに加担している可能性を知らず、或いは知っていて見て見ぬふり(これは自戒の念も込めて、私も含む)をする、そんなふうに腹を決める事もできなければ、現実に対してある種の野生的なリアクション(それが絶対の正解ではないけれど)をとる事もできない。その間で打ちのめされ、思考に囚われながら、それでも考えて、言葉を紡ぎ行動を起こしていく姿は、テレビの中のロックスターではなく、間違いなく自分の暮らしの延長上にいる実在の人間だった。だから、この本に書かれているような社会や政治、そしてそれらを形成した自分自身への問いは、「私」と切り離されている筈がないのだと、心からそう思えた。

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後藤正文さんを中心に設立された「APPLE VINEGAR -Music Support-」のクラウドファンディングページ


政治の絵本 新版―学校で教えてくれない選挙の話 - たかまつなな

本当に恥ずかしい話だけれど、私は政治や選挙に参加をすることに消極的な人間だった。選挙には行くけれど、候補者の情報を一定以上リサーチすることはなかったし、そもそも選挙ってなんなのか、という事すら漠然としていた。(今だってすぐに混乱するし分からなくなる)
そんな私の意見なので、大いに間違っている事もあると思うけれど、私は本作の著者であるたかまつななさんに、後藤正文さんと同じものを感じている。それは多分、間違えながらだとしても、自分を更新しながら、今できるアクションを起こしていく。両者にそんな姿勢を感じているからだと思う。
本作はまさに「小学生から読める政治の絵本」という内容で、興味や関心が義務感へスライドしてしまう事なく読み進めることができた。
私のような学び直しを考える人や、膨大な情報の前に立ちすくんでいる人に最適な一冊だと感じつつ、なぜだろう?という違和感や問いが、何かを考えること、行動することの原動力であることを再認識した。

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たかまつななさんのyoutubeチャンネル


あとがき

後藤正文さんとたかまつななさんの欄に、それぞれクラウドファンディングとyoutubeチャンネルのリンクを貼っています。本とは関係がないと思えるかもしれませんが、個人的にはすべて繋がっていることだと感じたのでシェアさせていただきました。

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