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実写版リトルマーメイド2回目観たい

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実写版リトルマーメイドを観た感想を記録として残したい。


 幼稚園児の私が近所の商店街のお店で買ってもらったリトルマーメイドのVHS。今でもレジの横にたってお会計をしてもらう様子を待ち遠しい気持ちで眺めていたことを鮮明に思い出せる。そして擦り切れるほど繰り返し視聴してすっかり自分が”海の仲間”気分に浸っていたことも覚えている。
 先週アメリカで公開された実写版リトルマーメイドを今日やっと観た。途中で涙が目にたまるのを感じた。主役のアリエルが緑の目の白人俳優が演じないことを多少なりとも残念だと思った自分が、なにも分かっていなかったことを思い知った。ただ正直なところこの映画は観てみるまでディズニーが公式に「この才能あふれるハリー・ベイリーを抜擢しない理由がない」と表明した理由がわからないと思う。ただ歌唱力があるというレベルではなく私が子供のときに観た、アリエルが自身の変えられない境遇(人魚であり、人間の世界への接触を親に制限されている)に苦しむ様子、そしてそれを歌で表現するその素直な様子に感情移入させてくれたように思う。今年でアラフォーになるにも関わらず、ハリー・ベイリー演じるアリエルが一瞬で幼少のころ繰り返し観たあのアニメのリトルマーメイドに没入していたときの気持ちを引き出してくれた。Part of Your Worldの歌詞のアレンジも自然で、まさに彼女の気持ちそのまま・・・まるでハリー・ベイリー=アリエルに思えるようだった。
 さらに、序盤のトリトンの城に人魚姫たちが集まるシーンではアジア系の人魚も登場した。アリエルの姉たちは様々な肌の色と尾びれの色を持ち、実に見た目に刺激的で魅力的にアレンジされていた。その中でもアジア系の人魚姫を見た瞬間にこれまで理解できなかった概念が一瞬にして自分のものになる非常に強い衝撃を受けた。なぜバービー人形にさまざまな肌の色、体形が採用される必要があるのか。なぜ子供向けテレビ番組に登場する医者が黒人女性であることが子供に勇気を与えるのか、などなど。自分がかわいいな、きれいだなと憧れのような気持ちを抱いた人魚姫の一人が実写版映画のなかで自分と同じ黒髪、黒い目、(黄色人種の)白い肌であったことでこう思った。「もし今回の実写版アリエルが自分に似た見た目(アジア系)であったらどんなに嬉しく感じただろう」と。まさに童心のあこがれだと思った。”五感による知覚のうち8割を視覚が占める人間という生き物”が見慣れた、自分に似た見た目をもつ存在に理屈抜きで特別な感情を抱くことは自然なのだ、と。ハリー・ベイリーもこれまで彼女が影響を受けた”黒人の女の子が演じたシンデレラ”同様に自身が影響を与えられることを誇りに思うと語っていたようだが、彼女は黒人以外にもup liftingな影響を与えてくれたように思う。
 王子エリックの母が登場した上に黒人女性だったという配役だけに関わらず、物語上もメッセージ性の強いアレンジがなされていた。平たくいうとアリエルは王子の顔を見る前に、自身と似た境遇でなんとか自身の道を切り開こうとする王子の話を聞いて関心をもち、その後に顔を見て恋に落ちていく。そして王子と積極的にコミュニケーションをとり、王子のことを知っていく。アリエルと再会する前の王子は海(アリエル)に向かって「僕をもう一度みつけて!」と切なげに歌ってしまう受け身君になっていた。アニメ版と殊更異なる展開なのは、王子ではなくアリエルが悪役であるアースラを倒し、さらに王子が無事なのを確認して王子を置いて父親の持ち物であるトライデントを取り戻しに行き、結果的にアースラに一度は滅ぼされた父親が蘇るところである。彼女は受け身ではなく自身の望みを叶えるためにリスクを冒し、信念を曲げずに行動する女性として描かれているように思う。この実写版にあえて注文を付けるとしたら、主役が魅力的すぎてアニメ版では相当に魅力のある脇役たちがだいぶ霞んで見えるところだ。アリエルを支えるフランダー、セバスチャン、スカットルはディズニーシーでそれぞれライドが作られるくらい(セバスチャンはレストランだが)人気のはずがコミカルになりすぎて可愛さが今一歩だった。それもそのはず、見た目は動物そのものになっていたのだから。思わず映画館で鑑賞につきあってくれた夫に「(これではキャラクターではなく)魚介類だよ!」と小声で叫んだことも致し方ない。
 ハリー・ベイリー演じるアリエルが歌うディズニー屈指の名曲Part of Your World、さらには幼稚園児の私が心躍らせたKiss the Girlの華やかな世界観をもう一度大画面、大音量で楽しむために来週映画館を再訪するつもりだ。








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