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はじめて学ぶ「動物実験」②動物実験をなくすためには?

*①の続きです。




動物実験の代わりにどうしたらいい?——さまざまな代替法


和崎 では動物実験がいけないのであればどうしたらいいかについてですが、「動物実験は良くない」という声が増えたり、動物実験に反対する人たちの世論が高まってきて、それを受けて研究開発され始めたのが、動物実験の代替法です。

 1959年、イギリスの研究者のラッセルとバーチによって、「人道的な実験技術の原則」が提唱されました。それは後に、研究会における「3Rの原則」の指標として定着し、近年の実験動物福祉に関係する各国の法律や、指針だけでなく国際指針にも採用されています。そして代替法という研究分野の誕生発展へと繋がってきました。

「3Rの原則」というのは、①「リファインメント=実験方法を改善することで、動物たちの苦痛の度合いを軽くする」、②「リダクション=実験に使う動物の数を減らす」、③「リプレイスメント=実験に生きた動物を使わない」の三つのRです。リファインメントとリダクションは動物の犠牲自体をなくすものではないので、JAVAが目指す代替法はリプレイスメントになります。

 次に、代替法にはどのようなものがあるかですが、ここに挙げたのは本当に一例ですが、ヒトの細胞を使った方法、コンピュータシミュレーションを使ったものなど様々あります。

 昔から行われてる病院での臨床実習、疫学調査、献体利用なども、動物を使って行われている研究や実習の代わりになり得る方法です。最近では、小さなチップの上に臓器の細胞を載せて体内の作用を調べるボディ・オン・チップやAIを使った方法なども研究されてきています。

 代替法ですとヒトの細胞を使って行うので、ヒトのデータが得られるというメリットがあります。費用や時間についても、代替法だとそれを短縮・節約できるというメリットがあります。例えば化学物質一つの安全性を確認するのに、動物実験ですと約3年、2億円の費用がかかるとされていますが、経済産業省が開発した細胞を用いた方法だと、1ヶ月、100万円以下でできると言われています。

 少し具体的に紹介しますと、先ほど化粧品の実験としてご説明した、ウサギを使った皮膚刺激性試験です(写真左)。これに対する代替法には、3次元培養表皮モデルを使った方法(写真右)などがあります。この写真の代替法は、このモデルの表面に被験物質を15分間適用して洗浄し、さらに42時間培養して、その後、生きてる細胞の数を計測し、50%閾値として皮膚刺激性の有無を予測するという方法で、この方法は国際的にも日本でも正式に認められている代替法になります。

 それから下の写真は、獣医大学での実習で用いられる代替モデルです。

 左は犬の吸入麻酔ガスを正確に気管に入れる練習をするための気管挿管モデルです。こういった実習を以前は生きた犬を使ってやっていましたが、この練習モデルに切り替えると多くの犠牲がなくせます。ただ当然モデルだけで練習しても臨床の現場には立てませんので、モデルで練習した後に実際に動物病院で教官の指導のもと臨床実習をすることになります。

 右側のモデルは、牛の子宮構造で、人工授精の方法や妊娠の判定方法を学ぶことができます。このモデルを使っている獣医大学では、このモデルがまだなかった頃、子宮の構造を紙に書いたものを参考にして、本物の牛の体内に手を入れて練習をしていたそうです。


動物実験の義務付けをやめる——政府や企業への働きかけ


和崎 別の方法に切り替えるという代替法以外に、「これまで法律で義務付けていた動物実験をやめる」という選択肢もあります。

 例えば、新しい農薬を作る際に法律で義務づけられている毒性試験には、ここに挙げたように、かなりの数の毒性試験が義務付けられています。どれも動物を使う試験です。

 JAVAと海外の動物保護団体が連携して日本の農林水産省に働きかけたことで、1年間犬に薬を飲ませ続けるという非常に残酷な実験が義務付けのリストから削除されました(※赤文字部分)。その理由としては、同じような試験実験に90日のものもあるので、両方やる必要はない、という主張が認められたことでした。

 これ一つが削除されたとしても、まだまだたくさんの動物実験が残ってるので解決には程遠いわけですけれども、それでもこのように義務付けられている試験を1つ削ることで、かなり多くの犠牲を減らすことができます。

 代替法の採用や動物実験の削減の努力というのは、医薬品のガイドラインでも行われてきています。こういった様々な代替法が開発されて、公的に認められた代替法が増えてきたことで、企業は動物実験しないで化粧品や薬用化粧品を作ることが十分できることになります。

 この一覧にまとめたのは、これまで私達の働きかけで動物実験を廃止したり、廃止を公表した大手化粧品会社です。やはり資生堂は日本で最大手ですので、JAVAが働きかけて資生堂が廃止をした後、同じく動物実験をなくすための活動を行うアニマルランツセンターやPEACEと一緒に「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」を作り、この3団体で大手化粧品メーカーに次々と働きかけ、これまで多くの大手化粧品会社が廃止宣言をしました。

 これを見ると、「日本の大手企業がやめたのだから、化粧品の動物実験はもう過去の遺物ではないか」と思われるかもしれませんが、残念ながら、原料の段階で動物実験が行われるなど、サプライチェーンにおける徹底がおろそかだったり、医学研究と称して化粧品成分のための動物実験を行うなど、まだ完全に過去のものとなっていないのが現状です。

 上の表は、JAVAの働きかけで実験の廃止を決めたり、もしくは既に廃止をしていてそれを公表してなかったけれども、働きかけたことで公表をしてくれた食品会社になります。化粧品以外での分野でも、このように廃止の動きが出てきています。

 化粧品・食品ともに共通して言えるのは、企業は消費者の「動物実験をやめて」という声を意識して廃止したところが大きいと思います。

 上の図は、化粧品の動物実験の禁止や廃止をした世界の状況を示した地図なんですけれども、EUは2013年に化粧品の動物実験を禁止し、動物実験された化粧品をEUの中で販売することも禁止しました。EUの決定は非常に影響が大きくて後に続く国が次々と出てきています。

 一方、日本は禁止の動きはなく、自主的に廃止するメーカーも増えてきていますが、法的な禁止がされているというわけではないので、化粧品のための動物実験をやる/やらないはメーカー次第という状況が続いています。

 JAVAでは日本でも化粧品の動物実験の法的な禁止を実現したいと考えています。それにはやはり日本国内で化粧品の動物実験に反対する世論をもっと高めることが不可欠で、皆様にはJAVAの活動にさらにご協力いただきたいと思っております。


JAVAの啓発活動について


石島
 それでは私の方からJAVAの啓発活動の取り組みについてお話させていただきます。今、和崎から説明があったように、動物実験をなくそうという動きは進んでいるんですけれども、動物実験の実態については日本ではまだ知られていないことが多いというのが実情です。なので、日頃から様々な啓発活動に力を入れて取り組んでいます。今日はその中の、コスメガイドとSNSと動画の取り組みについてお話しさせていただきます。

 一つ目がコスメガイドです。こちらのJAVAコスメガイドは、JAVA独自のアンケートによって、化粧品メーカーを「動物実験している/していない」といったふうに分類した冊子で、動物たちにやさしいショッピングをしたいという方のためのガイドブックになっています。

 元々JAVAでは、今から約30年ほど前の1995年に、化粧品メーカーに対して動物実験に関するアンケート調査を始めて、その結果を消費者の皆さんに提供してきたのですが、1998年からこのようにガイドブックにまとめて、消費者の方向けに刊行を開始しました。Vol.1から始まり、現在Vol.5まで継続的に制作しています。

 内容は、上の表のように、動物実験をしていないメーカー一覧などを表にまとめたものになります。取り扱っている製品や購入場所なども、この1ページの中に書かれていて細かくわかるようになっています。

 そういった一覧の他にも、動物実験の結果や実態、化粧品の製造販売システム、海外の動き、動物実験代替法などに関する記事、皆さんに実践していただきたいアクションの事例なども掲載しています。

 Vol.5ができてから結構時間が経ってしまっているんですけれども、今新しいVol.6の改訂版を作っているところです。ざっと作る上での工程をこのようにスライドに書いただけでもかなりあります。その一つ一つがすごく膨大な作業になりますので、まだまだ時間はかかりますが、今頑張って進めてますので、ぜひコスメガイドVol.6が完成しましたら、皆様のショッピングのご参考にしていただけたら嬉しいです。

※ 今度出るのはvol.6です。



残酷で難しい内容をどうやってわかりやすく広めるか


石島 次にJAVAが啓発活動として活用しているSNSについてお話させていただきます。JAVAが取り組んでいる動物実験の問題は、内容が複雑で専門用語も多いので、人に伝えることがなかなか難しいテーマだというのを私達も感じています。また、それに加え、動物実験そのものが実験施設の密室の中で行われているので、和崎の発表のときに出てきたような写真が表に出てくること自体が最近は少ないんですね。

 そのため、JAVAは上のようにイラストを活用し、できるだけ短くてキャッチーな感じのテキストを組み入れた画像をSNSの投稿に使うようにしています。基本的にはイラストを使っていますが、右下の犬のように、実際の写真も使うこともたまにあります。ただ、あまりにも残酷なものとかですと、画像を見て体調を崩してしまうという方などもいらっしゃるので、できるだけ配慮して投稿しています。

 本当に1人でも多くの方に知っていただけたらという思いで、このような投稿をやっていますので、ぜひ皆さんもJAVAのアカウントを覗いていただいて、こういった投稿をシェアしていただけると嬉しいです。

*インスタグラム
https://www.instagram.com/java_animal/

*X
https://twitter.com/JAVA_ANIMAL



動画で学ぼう動物実験


石島 次にJAVAの動画制作についてご紹介させていただきます。

 JAVAでは海外の動物保護団体と連携しながら、様々な活動を展開しているのですが、その中で、海外の動物実験に関する情報を翻訳し、サポーターや会員の皆様に届けるといった啓発活動も行っています。

 こちらは、医師と科学者で構成されているドイツの団体が制作した動画で、ヒト由来の細胞を用いる革新的な研究方法の可能性について紹介した内容になっています。元々は英語の動画だったんですけれども、それをJAVAは許可を得て翻訳をして、字幕をつけて現在YouTubeにアップしています。

 また、JAVAオリジナル動画の制作もしており、1話から3話までYouTubeにアップしています。

 内容をざっくり言いますと、1話は動物実験の概要、2話は薬害や動物と人間の種差、科学的な問題について取り上げています。3話では動物実験の具体的な試験方法を紹介しながら倫理的な問題をテーマにしています。 動物実験というと専門性が高くてとっつきにくいところはあるのですが、動画にすれば再生するだけで自動的に情報を得られますし、できるだけ易しい言葉を使って見やすい動画になるように努力して作ってます。


*第一話

*第二話

*第三話



→③へ


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