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ロード・オブ・ザ・リング3部作

外出のしづらいゴールデンウィークも2年目になり、連休は雨模様が続いた。

上映は20年前であるが原作はその約50年前に発刊された、北欧の神話をベースにした長編小説であり、多くのファンタジー作品の古典とされた名作「指輪物語」を紹介する。

世界を統べるひとつ指輪を巡り、人間をはじめエルフ、魔法使い、ドワーフ、オーク、怪物の類が入り乱れる世界で起こる、人間が文明を築く現代のはるか以前の物語である。そのベースとなるのは人間社会というより、超自然的で複雑な共同体が辿る運命とそこに立ち会うものたちの生きざまだ。そして、彼らはなんらかの言語を持っている。

それぞれの支族の長の者が集結し、悪の冥王の企みを阻むため遣わされた魔法使いガンダルフを中心に旅の仲間を結成する第1部、一国の存亡をかけた戦争に発展していく第2部、人間の文明の滅亡を謀る冥王と人間の最終決戦が描かれる第3部となっている。

冒険や戦いは出来るだけ避けたい、日常の穏やかな暮しと食事を何よりも愛する「小さな人」、ホビット族。彼らが冥王復活の鍵を握る指輪の放棄という、重大な使命を任される。過去に堕落していった数多の「人間」からこの世の無常なるものを認めつつ、自らの愛するものを亡き者にしようとする冥王の力に、決然と立ちあがるものたち。勇気とはなにか、強靭であるとはどういうことかをかんがえさせられる。

二者択一に収まらない決断の連続、ことごとく打ち砕かれる勝利への希望が、暗い。だが彼らはどれだけ心が打ちのめされようと、それを表現するための、豊かな言語を繋げている灯を消すことは無かった。かつての人間の王の末裔アラゴルンとその周囲の人物たちは、いま自らの生きる時間を、永く続いてきた灯の最後だとは断固として信じない。絶えず責立てる圧倒的な力の差を彼らは理性で受け止め、かんがえる。そしてその遠心力ができるわけがないという絶望の中でも前を向き続ける大きな求心力を生む。終に巨大な悪の軍勢は倒れ、人間が王として大地を治める時が再び訪れる。

こうして映画の感想を記しながら、思うこと。それは、日常の細かなことに想いを巡らし言語化することに、生きてきた証を感じることの出来るわれわれの豊かさだ。映画のはじまりとおわりに描かれるのは、2つの世代のホビットが自らの冒険を筆に起こす為に机に向って模索している様子。これまでもこれからも、現実に冥王が現れて人間を亡き者にすることはないであろう。しかし、言語が溢れるこの時間にこそ、見えざる誰かに発する言葉には気を抜けない。思考しない沈黙は悪である。




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