映画パロディの煉獄・『ヘボット!』44話「劇場版ヘボット!って、ナニそれ?」の元ネタをあらかた、ざっくりと解説する記事
皆さん…………『ヘボット!』観てますか?
なにそれ、って、2020年8月の頭からyoutubeで毎日1話ずつ無料配信されて、パロディとギャグと不穏と不安で視聴者を狂わせていたホビーSFアニメのことですよ。
元の放送は2016年~2017年9月24日だったのが、今年になっていきなり無料配信がはじまって「ついにサンライズの偉い人の頭が……」「こんなもの毎日観たら死ぬぞ」と言われたアニメのことですよ。
コロコロ系ギャグアニメだと思ったら、大人すらすぐにはわからないパロディが無数にブッこまれ、ハハァンそういう作品かと考えてたら世界の背後に潜む不穏がジワジワと染み出てきてついに波となって押し寄せてきて、39話くらいからは登場キャラたちも視聴者のハートも大変なことになっていくアニメですよ。
さて本日、2020年9月14日に無料公開(※来週の21日まで観れます)された44話は、
「劇場版ヘボット!って、ナニそれ?」
もちろん『ヘボット!』は無法のアニメなので、今流行りの「テレビ放送の再編集版」とか「オリジナルストーリーを劇場公開した」とか、そういう事実は一切ありません。43話の予告でいきなり「劇場版ヘボット」と言いはじめました。
初回放送時は「ナニそれ? って、こっちが聞きてぇよ」と思ったサブタイでしたが、これが以前に放送されたゲームパロディ回(しかも2回ある)に並ぶ映画パロディ回でありました。
で、前者の元ネタを拾い上げているすごい解説ブログはあるのですが、こちらの44話の解説を文章で読めるところがどこにもないっぽい。
ということでメモだけは先に準備しておいたのですが、こーいうのは早さが命だよな! と44話配信当日の朝に思い立ち、朝昼晩の3時間で夕飯もろくに食わずに突貫で書いたわけであります。
(※この序文は最後に書いており、書き終えたのは休憩終了5分前の18時55分でした)
なおゲームパロディ回よりネタ数が少ないのですが、それはパロディをやってる裏や表でとんでもないシリアスパートが繰り広げられつつ、パロディのくせして主人公2人の絆の物語をちゃんとやっているためです。
『ヘボット!』は終盤でも、パロディ、ギャグ、シリアス、全部止まらない!! 怒濤の終盤に投擲された雑多なパロディのモツ鍋を喰らえ!!!!!
①ネジが島漫画祭り
みんな存外に見逃してるけど、映画館のポスターの上に書いてあるぞい。もちろん懐かしの&最近復活した「東映まんがまつり」のパロ。
②ポスター 左から
1.新海誠の巨大ヒット作『君の名は。』そのまんまやないか。怒られるで。
ちなみに細い字で真ん中に「あいつがネジでネジがあいつで」は、児童小説の古典『おれがあいつであいつがおれで』のもじりかも。
2.ネジ拳ボキャフェス in ネジが島 完結編
はてこれって、前回中途半端に終わった43話のサブタイだったはずでは……と、あんまり深く考えはじめると戻れなくなるよ!(byネジル)
本作は「完結編」らしいので、「テレビシリーズの最終回は……劇場で!」とぶち上げてBPOに怒られた仮面ライダーを思い出したりする。
3.せがぁるvsじゃっきぃ
「沈黙の○○」シリーズでいまだ現役、最強の男スティーブン・セガールと、アクション映画界の生ける伝説ジャッキー・チェン……っぽい人たちの夢の共演作。
せがあるは口に葉っぱをくわえていて、じゃっきぃは口に長いヨウジをくわえている。岩城(『ドカベン』)と木枯らし紋次郎であろうか。
「vs」って書いてあるのに笑顔で握手してるのは東映のスーパーヒーロー大戦やスーパー戦隊映画で「最初は対立するけど巨悪のために共闘して友情が芽生える」テンプレを思わせる。
③宇宙船に書いてある「すぺーすまりーん」
そのまんま「宇宙海兵隊」の意。特に元ネタはなさそう。
④作品の内容に触れる時に右端にいるやつ
『ジャイアント・ロボ』顔である。『ジャイアント・ロボ 地球が制止する日』は以前のゲームパロディ回でさんざんネタにされたぞ。
⑤「誰だか知らんキャラがいきなりつらい過去話語ってお涙ちょうだいとか! とりあえず人気あるヤツなら誰でもいいみたいなチョイスが見え隠れして!」
おいマジっぽい批判はやめろ。
⑥「お笑いコンビの意外な見せ場」
25話のゲスト回からちょくちょく再利用されるナマモノフリー素材・『ヘボット!』親善大使ことお笑い芸人「流れ星」のお二人。『ヘボット!』はゲスト芸人すら使い捨てない、地球に優しいアニメやで。
⑦NGシーン集
ジャッキーの映画やコメディ作品などでおなじみ、エンドロール中に流れるやつ。かなり大きなグリーンバックなので大規模なCG・合成を使っている様子。けっこうな超大作なのか?
⑧ケンカするネジルとヘボットの背後
『ゴミラの逆襲』なる映画のポスターが貼ってある。中央に陣取るのはまんま『シン・ゴジラ』のゴジラさん。タイトルはゴジラシリーズ第2作『ゴジラの逆襲』からか。
あとアンパンマンにゴミを食べる「ゴミラ」ってキャラがいますね。なお『それいけ!アンパンマン ゴミラの星』では『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』まんまなシーンが見れます。本当です。
⑨「映画トル」「映画ミル」
盗撮・違法DL防止の宣伝でおなじみ「No More 映画泥棒」のカメラ男とパトライト男のパロディ。
今までの回でもこういう感じで「介入」が行われていたこと、そして間接的な介入では間に合わなくなりつつあることがわかるちょっと怖いシーンでシネマ。
なお最初は役柄が逆だったけど、「私……語尾が『カ チンコ 』なのは……ちょっと……」という声優さんの申し出により中の人が代わったのであった。
⑩【理力を信じろ!】
10話にも出てきたスター・ウォーズの名言。「理力」は「フォース」の、最初の劇場公開時の訳語。なかなかいい訳だと思う。
⑪「なまつばゴックン!」
80年代の流行語。主に男が、エッチなものに対してちょっと興奮した時などに使っていた。完全な死語である。
⑫「うーん、まぶしいヘボ……」「うーん、まぶしいのだ……」
はい、さっき怒られるでと書いた『君の名は。』が、今パロディ回のメインでありました。ますます怒られるで。
なおこの話の制作時には、まだ配信もソフト発売もされていなかった。それを頭に入れて観ると「アニメーターの記憶力ってすげぇーっ」と感心できるのだ。
⑬「定番ネタでシネマ!」「パクリじゃねーか!!」
ホントだよ。
⑭「魔法のチケットじゃよ」
アーノルド・シュワルツェネガー主演『ラスト・アクション・ヒーロー』。不思議なチケットの半券の魔法で、人気アクション映画シリーズ『ジャック・スレイター』の世界に入ってしまった孤独な少年と映画の主人公ジャックの交流、そして悪人どもとの戦いを描く。
メタなギャグとパロディ、熱すぎるクライマックス、そして虚構と現実の止揚を描く素晴らしさは『ヘボット!』を思わせる。これ、メッチャいい映画なんですよ。みんな観てね。
なお、チケットを差し出してる爺さんの頭部が何故か「はらぺこあおむし」。理由は特にないと思う。
⑮オールディス「お前、大丈夫か?」……
オールディスの中の人の井上和彦さんは、『君の名は。』でこのまんまな役回りの瀧君の父親役をやっている。台詞もこのまま。無法の極みである。
⑯「ネジが落ちてくる」……
以下の展開は『君の名は。』のネタバレです。いや豚は焼けないけどね。ソフト発売直後にネタバレをするな。
⑰イボンヌとマッコイ
これは元ネタがあるのかないのかわからない。詳しい人知ってる人、解説よろしくね(丸投げ)
⑱牛恐竜「サウンド・オブ・サンダー!」
05年のSF映画『サウンド・オブ・サンダー』。「タイムトラベルするけど、余計なことはするなよ! 絶対にするなよ! ちょっとしたことで未来が激変するからな!!」と言われたのにやらかしちゃう作品。原作はブラッドベリの短編「雷のような音」
⑲牛恐竜
口の中のギザギザは『アタック・ザ・ブロック』(2011年)の団地襲撃宇宙生物っぽい。
⑳恐竜撃退センター
もう5回くらい出てきてる「ロックマン」のワイリー城。エコなアニメである。
[21]『ネジラジック・バイオの黄金2 悪の科学者 真紅の暗号秘伝説 ミニ』
ジュラシック・パーク+バイオハザード+ハムナプトラ2 黄金のピラミッド 安直に混ぜるな。
[22]完全に一致
似ている画像を並べたり、全然似てない画像を強引に似ていることにする際に使うネット用語。最近見ないッスね。
[23]超磁力兵器によって……
宮崎駿『未来少年コナン』(2020年9月、NHK総合日曜深夜にて絶賛再放送中)のOPナレーションまんま。なお今後の話で宮崎駿本人の発言がパロられることになるので、お楽しみに!
[24]『ネジメタル・ファイヤー 炎の給食当番!』
これとこの後の戦争アクションみたいなのも元ネタがあるのかないのかわからねぇ。詳しい人知ってる人、解説よろしくね(丸投げの天丼)
背後のホワイトボードに「This is a pen」とあるのは「ペンパイナッポー」か。でも一回チギルがやったよね。
なお全く関係ないけど、今年2020年には『劇場版 おいしい給食』という映画が公開されたよ。世の中には、いろんな映画があるね。
[25]人間大砲からの花火
カルト映画『江戸川乱歩 恐怖奇形人間』。タイトルからもわかるようにこう、ちょっと、内容が内容だけにソフト化されてなかったけどここ数年でDVDになり配信もされるようになった。えぇ時代や。「人間大砲? 花火?」と思った人は借りて観てみよう。
[26]マンホールから溢れるネジ、映画館への侵入
宇宙生物スリラー/ホラーの快作『ブロブ 宇宙からの不明物体』(88年) ドロドロの宇宙生物が人を襲ってとって喰うのだが描写や展開に容赦がないのでスゴいんダヨ~! みんな観てね!
[27]『アタック・オブ・ローリングネジと七人のとけない雪ダルマが女王』
ロゴの感じを見るに、アタック・オブ・ザ・キラートマト+七人の侍+アナと雪の女王 安直に混ぜるな。怒るぞ。
[28]『ネジはある朝突然に……』
『フェリスはある朝突然に……』(86年) 自由な高校生フェリスが「今日は仮病使って学校サボっちゃおうぜ」と友達2人を連れていろんなことを体験する青春映画。なるほど突入してくるのが自由きままなナグリ王妃なのはつまりそういうことか……(どういうことだ)
[29]巫女ユーコさん「そいそいそそーい!」
31話の再利用。元ネタはゲーム『奇々怪界』
[30]「あれはファントム!」「僕は宇宙パルサーさ!」/「憎い……! あいつが憎い……!」/「あんたなんかにー!……」
東宝創立50周年記念作品として、『七人の侍』『切腹』『日本のいちばん長い日』など数々の名作を手掛けた邦画界最高の脚本家・橋本忍を監督に迎え(兼 脚本)、最強の布陣で製作された映画『幻の湖』(82年)
……ところがどっこいフタを開けてみれば、
「ソープランドで働くマラソンが趣味の女が愛犬を殺され、燃え上がる怒りと共に犯人を執拗に追い回し、途中、戦国時代に悲劇的な死を遂げた女性の逸話が披露されたりして、色々あって主人公は走って逃げる犯人を追い越した直後に持っていた包丁で刺し殺し復讐を遂げ、最終的には宇宙空間の琵琶湖の真上に笛が設置される」
という、ちょっとよくわからない映画となってしまった。どうしてこうなった。まぁ、橋本忍の監督としての力量不足とか、初監督作にしては難しすぎた内容とか、なんかそーいうのが絡み合って出来上がっちゃったんでしょうね……
どうかしている内容ではあるけれど、「虐げられてきた『女たち』の無念は小さな復讐となって実を結び、そしてその怒りと哀しみが宇宙レベルで弔われる」という真面目な話なんですよ。このスケール感は『ヘボット!』にも似て……まぁ似てないかな……
これだけ力を入れて紹介したということはつまり、皆さんに観てほしいからなんですね。世の中にはこういう映画もある、あるぞ、と。あるんだぞ、と。僕は言いたい。是非、ご覧ください。
[31]「助けて五万くん!」「待ってろライララーイ!」
名探偵コナンの劇場版である。「ライラライ」は「毛利蘭」のもじりであろうか(自信なし)。なお背景にはゲーム『メトロイド』のカプセルがある。なんなんだこのアニメは。
[32]「スナイパーが、狙っている!」
43話でナグリを狙った、ゴルゴ13を下敷きにしたスナイパーキャラの有効再活用。ちなみにゴルゴ13は高倉健/千葉真一により2度実写映画にされている。映画そのものはあまり面白(自粛)
噴火する山の右にいるのはゲーム『巨人のドシン』から。左にいるやつはたまに出てくる奇怪生物。
[33]「シーフー!」
カンフー映画でよく聞く単語。漢字で書くと「師父」、「師匠」という意味である。
タンクトップ仮面の背後には「一福星」。ジャッキーと彼の盟友サモ・ハン・キンポー&ユン・ピョウ共演の映画『五福星』『七福星』のパロディ。右には『カモン/ゴックンギャル』の文字。死語だってば。
[34]右上に出る「劇場版……」のタイトル
昔のテレビの洋画劇場ではねぇ、CM入りとCM明けに、この位置に映画のタイトルがこういう感じで出たもんなんですよ…………(遠い目)
[35]「またうなされてたぞ……」
また井上和彦さんを『君の名は。』と同じ役回りで使っている。このアニメに法はないのか。
[37]「探していた……そこに刺さるべき……」
小ネタだが、ビルの窓にでっかくネジルじゃない元のヘボットがいる。このポーズは大阪にあるグリコのランナーの人かな?
[38]ヘジル&ヘイミとネボットのおいかけっこの最中に……
また『幻の湖』。そりゃあまぁ確かに、あれもおいかけっこの映画ですが…………
[39]すれ違う電車
『秒速5センチメートル』にこんなシーンがあった気がするが、心の傷をえぐることになるので確認していません。
☆追記 『秒速~』ではなく、『君の名は。』にこういうシーンありましたよ、という指摘がありました。
[40]夕暮れの階段
『君の名は。』の終盤にも階段は出てくるものの、あれみたいなクッソ急な階段ではないのでこれは入れかわりモノの古典『転校生』(82年)からの引用かもしれない。男女が階段から重なってゴロゴロ落ちることで中身が入れかわってしまうお話である。原作あり。監督は先頃亡くなった大林宣彦。
[41]おしまい
『風の谷のナウシカ』のラストカットじゃねーか! いい加減にしろ!!
そんなわけで、元ネタ(らしき)ものをずらりと並べてみました。不明物体や取り落としもあるかと思いますが、そのあたりは各位でアレしてください。
2回もぶっこんでくるゲーム回が有名ですけども、『ヘボット!』は『ブレードランナー』『シャイニング』『ゾンビ』『ジョーズ』『羊たちの沈黙』などなどなど、映画ネタも大変に豊富。というか『ブレードランナー』のパロディキャラを重要な位置に座らせるとかどうかしてるぞ。
そのひとつの集大成として44話があると思います。直近の大ヒット作からある意味伝説の作品まで、どれも一見の価値ある代物ばかりですよ。取り上げられた作品、是非ご覧になってみてください。
いやぁ映画って、本当にいいものですね…………
…………と、綺麗にまとまればよかったんですが、なんとここから(ここまできて、である)、2話ばかり「これ……そのままやないか!!」と叫びたくなる話があります。
最終章に突入する47話までに、
『遊星からの物体X』(監督 ジョン・カーペンター 1982年)
『死霊のえじき』(監督 ジョージ・A・ロメロ 1985年) ※リメイク版もあるので注意。85年の元映画を観ましょう
を観ておくと、最終章~最終回までをかなりニヤニヤしながら鑑賞できます。どっちもいささか&かなりグロいですが、面白さは保証いたします。
しかしクリーチャーホラーとゾンビものが予習に必要なホビーアニメってなんだろうな? あっこれ『ヘボット!』だな。ヘボットなら仕方ねぇや。イインダヨ~。
それではとりいそぎ、よきヘボットライフを! 残りあと5話!! 感動! 君も泣け!!
あとたぶん、おそらくですけど、無料配信が終わる頃にソフトの再発売が発表されると思うんで、皆さんどうか冷静な行動を心がけてください。なんか前回は10セット買った人もいたらしいので!! 買うならひとり1、2セットまでですよ!!
【ポペップ。】