隠蔽体質
100万年後の地球を訪れた生命体は、その星の歴史を調べるため、地層の調査を開始した。
そして、高等生物が生息していた痕跡を見つけ出した。
数百メートルの高さがあったと思われる建造物が集中した「都市群の遺跡」の発見である。
その都市群の周辺には、比較的低い建造物と、広い平地を有している文化施設らしい物が点在していた。
この建物は、中央の高層ビル群を取り囲むように配置されており、食料を生産して中央部へ送り出す施設ではないかとの仮説が立てられた。
広い平地で作物を育て、建造物の端っこにあるコンクリートで囲われた「くぼみ」で洗浄した後、建物内で加工処理していたのではないか、と。
少しして、石碑が発見された。
そこには「学校」の文字がかすかに読み取れたのだ。
石碑に残された文字の解読が進むと、そこは若い生命体に知識を教え込む施設で、広い平地は「運動場」と呼ばれ、若い生命体を鍛えるための広場であり、生産物を洗浄する貯水槽と思われた「くぼみ」は、排泄物を溜める、いわゆる「ぽっちゃん便所」だと分かった。しかし、あまりにも当初の研究との違いに、上層部からは箝口令(かんこうれい)が敷かれ、この事実は葬られてしまった。
地球を訪れた生命体も、かつて地球上に繁栄していた人類と同じように「隠蔽(インペイ)体質」があるようだ。