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詩:流れ星 #シロクマ文芸部参加作品

流れ星のように
フロントガラスを雨粒が流れてゆく
交差点に近づき
僕は
ブレーキペダルをゆっくり踏んだ
 
あの角を折れて少し行けば
君と過ごした思い出の場所
きしむ音のする階段を上れば
奥から2番目の扉
今はもう知らない誰かの
生活が始まっているはず
ウィンカーに触れた指を外し
強くハンドルを握りしめた
 
前を向いたまま通り過ぎるけど
心はいつも振り返っていた
君と二人で夢を見ていた
君と二人で 君と二人で
 
雨に濡れながら歩くのが
好きだと言う君に合わせて
誰もいない道を二人で
畳んだままの傘を絡ませて
ゆっくり歩く僕に君は
「早く早くおいでよ」と急かすから
びしょ濡れになったスニーカーを見て
僕は笑うしかなかった
 
そんな思いが浮かんでくるのは
心の区切りがまだついていないから
 
いつの間にか止んでいた雨
止まったワイパーを追いかけて
フロントガラスを伝う雨粒が
まるで流れ星のように流れて
浮かんだ願いの言葉は
叶わないと分かっているけど
最後の願いは
「もう一度君に会いたい」
「もう一度だけ君に会いたい」


初めてのシロクマ文芸部参加です
よろしくお願いします。
 
もともと「メテオのように」という2年前に創ったオリジナル曲なのですが、流れ星から始まる詩に少し書き加えました。
メテオ(METEOR)は「流れ星」の科学的な表現です。


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