人格焼 #ショートショート
その人の人格(器)を作る事が出来る工房(窯)が、愛媛県砥部町にある事をご存じだろうか。
砥部町は、町内に73窯が集中している焼き物の里であり、近隣にも11窯が営まれている。
砥部焼は、愛媛県を代表する伝統工芸品で、白磁の肌に藍の絵模様がスタンダードなデザインである。しかし、最近では若い後継者達が、新しい感性で、多くのデザインが見られるようになっている。
そんな流れからだろうか、「人格焼」を行なう窯が現れた。
失敗や反省ごと、不安、恥ずかしいこと、辛かったこと、未熟だったこと、無駄な時間をも、自分の思いを土に練り込むことで、人格の宿った「器」を作り出すことが出来ると言うのだ。
人生における失敗事を糧に、人は大きく成長して行く。
そんな思いを心に刻み込みながら、一心に土を練り込み、焼き上げる際に、髪の毛を1本、一緒に燃やすことで、その「器」は完成する。
しかし、窯元の住人は知っている。その「器」に人格が宿るのではなく、練り込む行為そのものによって、その人物の心の奥深くに人格が刻まれていくことを。
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