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沁みる絵本

【プロローグ】
とりわけこの半年ほど、メンタルの落ち込みがきつかった。メンタルケアのWEBサイトで自己診断するとだいたい『うつ傾向』がはっきり出る状態で、これ以上落ち込むようなら、医療機関のお世話になった方が良いという自覚もあった。大好きだった絵本でさえ、なかなか手にする気が起きない。SNSも投稿はおろか、見ているだけでもココロがざわついて苦しい、そんな状態が続いた。

原因は、家族のメンタルケアや、子どもの健康や進路の問題、不登校のこと、親との関係性やら、私の仕事の定年とその後のキャリアのことなどなど。一筋縄では行かないことばかりで、根本的な解決になかなか至らない。つまりは《抗う》のでなく、《許容》していくしかないのだ。

「難有難し」とはよく言ったものだが、受け止めていくうちに、事態が少し好転したり、人との出会いで救われることもあって、ココロのバランスも少し戻ってきた気がする。
SNSも見られるようになってきたし、自分自身もまた発信したいと思い始めた。特に絵本のことについてだ。

そこで、自分のココロに『沁みる絵本』を探すことにした。本屋さんに足を運んで、新刊の絵本を時間の許す限り読んでみる。そして、その日一番ココロに沁みた絵本を自分のために買うのだ。

2022年10月7日㈮ 丸善丸の内本店 滞在時間70分 14冊読了

東京駅OAZOにある丸善丸の内本店。3階にある児童書コーナーに久しぶりに立ち寄りました。メンタルが平静だったころは、定期的に通って、新刊絵本をチェックしたものです。

入口のディスプレイには、酒井駒子さんの画集の展示があり、心が躍ります。これまでなら、とにかくたくさんの絵本が読みたい、一冊でも多く読みたいと気が焦りますが、今日は慌てない。チェックではなく、出会いが肝心なのです。

入り口あたりに置かれている店員さんおすすめ絵本をまず3冊読了。そして新刊絵本コーナーに移動して、直感で気になる本から順に読んで行きます。本日は、滞在時間70分、読んだのは14冊。その中で10冊目に出会った、一番ココロに沁みた一冊を購入しました。

『あのこ』
作:樋勝朋巳 ブロンズ新社 2022年9月25日初版
沁み度数:68%(すこしづつじんわり)
ほっこり度数:80%(まず表紙にやられる)

どう沁みたのか?

そもそも、樋勝朋巳さんの『クネクネさんシリーズ』が私は好きです。絵を見るだけでほっこりします。「凡庸な在り方が、実は何よりも大事」そんなメッセージを私たちに教えてくれるような気がしています。

本書では、主人公の《あのこ》が、いろんなものを持ってきてくれます。《あのこ》は身体が小さくて、どれくらい小さいかというと、ネコよりも小さいくらい。だから《あのこ》が持ってくるものも当然に小さい。鳥やラッパや魚とか、本当にいろんなものをもってきてくれるけど、みんなみんな小さいんです。それは、受け取る側も戸惑ったりするくらい。

そんな《あのこ》とのふれあいを感じながら読んでいると、私がこの半年のメンタルが不調なときやココロがざわついていたときでも受け取ることができた『ちょっとした良いこと』がとてもありがたいものに思えてきました。

例えば、家族が時折見せる笑顔であったり、ありがとうの言葉であったり、飼いネコが自分の側で寝てくれる時間だったり、絵本の活動をしているドンハマ★の話を喜んで聴いてくれる人たちの姿だったり、仕事の成果を分かち合える仲間の存在だったり。

ひとつひとつは些細なこととも言えます。立ち行かない問題の大きさからすると押しつぶされてもおかしくないことにも思えます。それゆえ、そのひとつひとつがなんとも愛おしく思えるのです。

沁みる絵本との出会いに感謝。
ちょっとした喜びをこれからも大切に感じられる自分でありたいと願うのでした。


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ドンハマ★
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