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裏道の発見
朝晩の気温が確実に下がり始め、秋の訪れが近いことを感じさせる季節になった。だからまだ気温が上がる前に、久しぶりに家の近所を散歩することにした。朝の空気は清々しく、足取りも自然と軽くなる。今日の散歩は、少しだけ冒険してみようと思い、今まで一度も通ったことのない道を選んでみた。いつもは大通りを歩いていたけれど、今日は路地の裏道へと足を向けたのだ。
その裏道は、驚くほど静かで、まるで時間が少し遅れて流れているかのようだった。ここに何年も住んでいるはずなのに、まるで知らない街の一角に迷い込んだような気分になった。小さな庭先に咲く見たことのない花、古びた木の塀の向こうにある静かな家々、少し薄汚れた自転車が並んでいる駐輪場――それらはすべて、僕の目に新鮮に映った。
「人生というものも、こういうものなのかもしれないな」と、ふと考えた。あまりに身近なものは、見過ごされることが多い。慣れ親しんだ場所、いつもの日常。それは僕たちの目の前にずっと存在しているのに、僕たちはそれに興味を持たず、知らないまま通り過ぎてしまうことがある。まるで、今日歩いたこの路地のように。
人生もまた、裏道を歩くようなものかもしれない。普段通らない道に足を踏み入れれば、新しい景色や発見が待っているのだろう。少しだけ勇気を出して、いつもと違う角を曲がるだけで、見慣れた日常が一変する。それはどこか、僕たちが普段見過ごしている小さな幸福や驚きのようなものに似ている。
そう考えると、少し嬉しくなった。この散歩が、ただの散歩ではなく、僕に何か新しい気づきを与えてくれたからだ。そういった小さな発見の積み重ねが、僕たちの人生を豊かにしていくのだろう。
家に戻る頃には、少し陽が高くなり始めていた。空は青く澄んで、秋の風が頬を優しく撫でる。部屋に戻り、冷たい水を飲みながら、今度はどの道を歩いてみようかと、少しだけ楽しみに思った。