甲子園の余韻
夏の甲子園が終わった翌朝、僕は部屋の窓から差し込む朝日を眺めながら、心の中にぽっかりと穴が開いたような感覚を覚えた。テレビ越しに見ていた球児たちの熱戦、その歓声や汗、土の匂いがまだ脳裏に焼き付いている。しかし、その興奮も今は遠い過去のように思える。祭りの後の静けさに似た、ある種の寂しさが僕の胸を満たしていた。
夏は確実に終わりに向かっている。秋の足音がかすかに聞こえてきても良い頃だが、それでも外に出れば、まだ蝉の声が響き、肌を刺すような酷暑が続いている。まるで季節が迷っているかのように、夏と秋の狭間で時間が止まっているようだ。日々の生活に追われる中で、季節の移ろいに対する感覚が鈍っているのかもしれない。
でも、それでも確実に、何かが終わり、そしてまた新しい何かが始まろうとしている。甲子園のグラウンドに舞った最後の土埃が静かに沈む頃、新しい季節がゆっくりと訪れるのだろう。その移り変わりの一瞬一瞬が、僕にとっては無意識のうちに積み重ねられていく時間の層のようなものだ。
一抹の寂しさを感じながらも、僕はこの季節の狭間に身を委ねてみようと思った。どんなに暑くても、やがて風は冷たくなる。その時にはまた、新しい感情や記憶が僕の心に刻まれていくのだろう。そしてそれは、今のこの瞬間にはまだ知らない、未来の僕にとってのかけがえのない一部となるに違いない。
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