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空飛ぶ汽車とサラの夢 第1話

「小鳥さん、おはよう。木も草も、みーんなおはよう!」

そこは、自然がいっぱいの、空気のきれいな森の中。

「サラ、おはよう」
「お兄ちゃん!おはよ〜う」
「サラは本当に、朝の散歩が好きなんだね」
「うん、だって、スーって息を吸いこむと、木や草とお話ししているような気分になれるんだもん」

ふもとの村に住むサラが朝の散歩をしていると、いつもこうして同じく朝の散歩をしている「お兄ちゃん」と一緒になりました。
「お兄ちゃん」は、村の子どもたちみんなに慕われ、大人たちからも一目置かれる物知りな少年で、名前をケイといいました。

「10歳になっても自然の声が聞こえるなんて、サラはすごいなぁ」
「自然の声?小鳥さんの声とか、葉っぱが風で揺れる音のこと?」
「ん~、それもそうだけど・・・。たぶんサラは、自分でも気づかずにもっと深く、自然の声を聞いているんだと思うよ」
「ふ〜ん、サラが知らないのに、サラがお話してるの?へんなの!面白〜い!」

サラは笑って駆け出しました。スキップしたり、クルクル回ったりと、森をスルスルと進んでいきます。

そして、気がつけば、
「サ〜ラは誰かと話してる〜♪ 知っらない間に話してる〜♪ いっつでもどっこでも話してる〜♪ 」
なんて、ヘンテコな歌を歌っています。
お兄ちゃんは、サラの思いつきの歌やヘンテコなステップに笑っていましたが、やがてハーモニカでよりそうように伴奏しながら、サラの後を歩いていきました。
サラが歌い、お兄ちゃんがハーモニカを吹く。毎日違ったメロディが、朝の森の鳥たちのさえずりの間に聞こえるのでした。


さて、このサラたちの暮らす村には、1つだけ普通の世界とは違う不思議がありました。それは、この村が決して晴れない村だったことです。だから、いつでも空はモクモク曇り空。

晴れの日の気持ち良さを知ってる人は、
「え〜、ポカポカなお日様がないなんてかわいそう!」
って思うかもしれないですね。
でもこの村は、ずーっとずーっと曇り空でしたから、誰もそんな風に思ったことはありませんでした。
曇り空なら「いい天気」で、雨の日だったら「悪い天気」。それだけのことなのでした。

ある日、学校が終わった後のこと。
「ね〜、ハカセ。なんか面白い遊びしたいな〜」
村で小学校に通う子どもは、全部で7人。物知りなケイは、子どもたちから「ハカセ」と呼ばれていました
「ん〜、じゃぁ今日は、みんなで森に秘密基地を作ってみようか!」

次回へつづく
《 第2話へ 》


原作・ 絵 Ayane Iijima 
原案 Mariko Okano


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