空飛ぶ汽車とサラの夢 第3話
森から村へと帰る道で、ある子がケイにききました。
「ねぇハカセ。ハカセももうすぐ中学校でしょ?将来はなにになるの?お医者さん?先生?ハカセは頭がいいから何にだってなれるって、うちのお母さんが言ってたよ」
「ん?そうだな〜。村のお医者さんや先生もいいけれど、僕には夢があるんだ」
「夢ってどんな?」
「ね〜、教えてよ〜」
子どもたちが口々にたずねます。
「......うん、僕の夢はね、もっときれいな空を見つけることなんだ。僕たちの見ている空のもっと遠くに、きっともっときれいに輝く空がある。光る玉が浮かんでいると思うんだ。それを見てみたい。できることなら、この村にも、そんな空を連れてきたいんだ 」
「もっと......きれいな空?」
「ハカセ、大丈夫?勉強しすぎで頭おかしくなったんじゃない?なんでそんなこと考えつくの?」
「おれのおばあちゃんだって、空は昔っから変わらず灰色だって言ってたぞ」
「人間が偉いのは、この世で唯一、光る電気を作れるからだって、うちのパパも言ってたよ」
子どもたちは、口々に思ったことを言いました。
サラは黙って聞いていました。
ケイは、言葉を選びながら答えました。
「この村の図書館にある古い本。そこに置いてある物語の挿絵にね、山から顔を出す大きな黄色い丸い玉が描いてあるんだ。ほら、朝になると明るくなって、昼になるともっと明るくなって、夜には暗くなるだろう? 僕たちの見ている空の向こうに光る玉があるんじゃないか? それが、昼の間だけ空に浮かんで、夜にはどこかにいなくなる。そう考えると、この世界に昼と夜があることに納得がいくと思ったんだ。だから、この目で確かめたい 」
「ふ〜ん」
村の子どもたちはみな、ケイの説明がわかりませんでしたが、ケイが本気なことは十分にわかったので、これ以上なにも言いませんでした。
「いいな〜。空にキラキラ光る玉!見てみたいね〜」
サラがのんびり言って、また一人で変な歌を歌い始めました。
「空にキラキラ光る玉〜。ラララキラキラ光る玉〜」
「ギャハハ、なんだその歌〜」
みんな笑いながら、変な歌をマネします。
その話はこれで終わりになり、みんな、それぞれの家へと散り散りに帰っていきました。
次の日、サラは森への散歩に行きませんでした。かわりに向かったのは、家の裏手のニワトリ小屋です。
「ね、今日はサラに卵を分けてちょうだい」
サラは、卵を集めているお母さんに向かってお願いしました。
「お兄ちゃんに、オムレツ作ってあげたいの 」
《第1話こちら》
《 第2話こちら》
原作・ 絵 Ayane Iijima
原案 Mariko Okano