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卓球とピンポン

  卓球が好きです。最近は、パリの選考会の終わり際の一悶着から世界選手権での躍進と、世間の注目を集める機会が多かったですね。
  甲子園や、そこを目指した球児達が1球1球ああでもない、こうでもないと言いながら野球観戦するのと同じような感覚で、卓球を見ることが出来る程度には、基本的なことを知っているつもりで楽しんでいます。

  さて、卓球をやったことがある人、ラケットを握ってピンポン玉を打ったことがある人はどのくらい居るでしょうか?
  日本人にとっては馴染みのあるスポーツの1つですし、体育の授業や温泉宿等で触る機会があった人も多いように思います。
  とりあえず台を挟んでラリーをしてみれば、それは卓球と言っても良いのかもしれません。ですが、今日テレビで見る卓球とはかけ離れたもので、昔からそういうものは、温泉卓球とかピンポンとか呼ばれている気がしています。
  私はピンポンが嫌いなわけではないです。ですが、好きなものは卓球なのです。
  球が弧を描き、相手の手元で常に変化しながら、その駆け引きを以てラリーの中で点数を取り合い競う競技。私が好きなのは、卓球なのです。

  話は変わって、最近友人が、デジタル版の遊戯王を始めました。MasterDuelとかいうやつです。
  私はかれこれ2年ほど前に別の友人に誘われ、そこからデイリーとイベント消化くらいはこなすようにしています。あまり課金していませんので、流行りのテーマを全て持っているわけではありませんが、黎明期からエルドリッチ ドライトロン 天威勇者 烙印アーティファクト イシズティアラメンツ 烙印ビーステッド クシャトリラと、流行りの一角を担うデッキを殆どフルパワーの状態で握っていて、現在はロルバ型ラビュリンスと罪宝スネークアイを併用する形で日々楽しんでいます。
  現在催されているような競技会形式のイベントでも、1次予選は毎回それほど苦労することなく、楽しみながら突破させていただいています。KONAMIさん、ジェム配布本当にありがとうございます。

  卓球と遊戯王の話を今回並べたのは、新規で始めた友人を見て、その上で自分の楽しみ方を考えたときに、この2つに共通項が多いように感じたからということと、この気付きが無かったことが昨年、一昨年のコミュニティの解散や脱退に大きく影響したのではないかと考えたからです。
  普段雑談している私的なDiscord上でだらだらと文字を羅列したのですが、いかんせん上手く纏まらなかったので、改めてこちらにまとめていきたいと思います。
  以下ある程度卓球と遊戯王の知識が最低限ある人向けの話になってしまうと思いますが、その点ご了承ください。

  先ず遊戯王ですが、特に現代遊戯王と呼ばれるカードゲームは、主に2種類のカードがあります。
  『汎用札』と『テーマ』と呼ばれるものです。
  原作を読んだことがあるという程度の人には、『テーマ』の方が分かりやすいと思います。これは要するに『ブラックマジシャン』とか『ブルーアイズホワイトドラゴン』といったエースモンスターと、そのエースをサポートするカード群、例えば『ブラックマジック』や『ドラゴンを呼ぶ笛』等が有名でしょうか、こういったカードのことを指します。
  そして『汎用札』と呼ばれるもの、これも有名なもので言えば、相手の場の全てのモンスターを破壊する『サンダーボルト』や、敵味方問わず墓地に眠るモンスターを自分の場に呼び出すことが出来る『死者蘇生』と言った、とりあえずデッキに入れておけば強いカード群のことを言います。

  現代遊戯王は基本的にデッキの4割程度を汎用札、そして残り6割をメインテーマ+出張ギミック(メインテーマと相性の良い別のテーマ)といったバランスでデッキを構築することが多いです。
  例えば、原作で主人公の遊戯とその親友の城之内を苦しめた迷宮兄弟の『ゲートガーディアン』を主軸にしたデッキは、『ブラックマジシャン』をサポートするカードを1部採用した構築が主流になっています(同じ魔法使い族かつ主力モンスターがレベル7で共通なため、相性が良い)。

  ゲームを触ったことがある人なら御存知かと思いますが、MasterDuelでも現実のカードでも、基本的に『汎用札』はレアリティが高く設定されています。
  どのデッキにも入れることが出来るため、1度手に入れてさえしまえばずっと使いまわすことが出来ます。デジタル版であれば、物理的な抜き差しも必要なく、例えばデッキを3つ持っておきたいと思った場合でも、9枚ではなく、3枚あれば充分です(遊戯王は、同じカードを3枚までデッキに入れることが出来ます)。
  そして、汎用札の多くは相手のライフを直接奪うことは少ないものの、ボード上の形成を一気にひっくり返すほどのパワーを持つカードが多くあります。
  相手が何枚ものテーマカードでコンボを決めて、やっとの思いで場に出したのエースモンスターを『サンダーボルト』で破壊し、『死者蘇生』で自分のものに出来る。この1文だけで、とてつもないパワーを感じ取ることが出来ると思います。
  要するに、現代遊戯王は4割程度の汎用札は固定で、残りの6割程度を流行りの中で自分のやりたいことを選択し、入れ替えながら決闘するカードゲームになっているのです。

  そして、現代遊戯王に於いて、最も重要な汎用札は4種9枚(あまりに強力過ぎて、3枚入れられないカードがある)あり、デッキを作る上でとりあえず入れるその9枚を手に入れることが、ある種スタートラインに立つということなのかもしれません。これが冒頭で書いた、ピンポンと卓球の違いなのかな?と感じているのです。

  卓球もはっきり言えば、道具がすごく重要です、ラケットですね。
  ラケットは主に板とラバーで構成されています。厳密に言えば板も種類がありますが、今は世界的に競技選手の7割程が桐をベースにしたカーボンプレート入りの合板のものを使用しています。そこに自分の戦型に合うラバーを表裏の2枚貼って、ラバーと打ち方の違いで生じる回転の変化を軸に戦う競技になっているのです。
  有名選手で言えば、伊藤美誠のバックハンドは一般的な平らなラバーではなく、粒粒がたくさん出ている『表ソフト』と呼ばれるものですし、早田ひなのフォアハンドは『粘着裏ソフト』と呼ばれ、手品みたいにピンポン弾がラバーに吸い付く、中国選手が良く使うものを使っています。
  一般的に見る機会が多い『裏ソフト』と比較して、『表ソフト』は相手の回転の影響を受けにくく、ドライブよりスマッシュを重視した型向けで、『粘着裏ソフト』はその逆で、相手の回転の影響を受けやすいものの、自分も回転を掛けやすく、大きなスイングが出来る背の高い選手向きであると言われています。各々の選手の特徴を考えると、2人の戦型を象徴する道具選びをしていると言えます。正しく卓球をしているように思います。

  冒頭でお話ししている通り、私はピンポンが嫌いなわけではありません。友人と温泉に行き、そこにあった卓球台とボロボロのラケットで軽い運動をする。それは良いと思うし、動いて汗をかいたらまた温泉に浸かる。温泉って、そういうものですよね。
  遊戯王を始めたばかりの友人と、安く揃えられるカード群だけの限定構築で遊ぶのは、それなりに楽しいんですよ。
  そもそもどちらかと言えばMasterDuelは1人で延々とランクマッチして、自分の構築と相手の情報の読みを磨いていくゲームなので、どうしてもダイア帯やマスター帯等の高レートになってくると強いデッキとしか当たりませんから、自ずと自分も強いデッキ、勝てるデッキを使いがちです。そういう勝利を追い求めるだけの決闘ではなく、純粋に触ったことないカードを触って、見る機会の少ないコンボを決める/決められるのは、新鮮さがあります。
  それが未来のランクマッチでの1勝に繋がるきっかけになることもあると思います、見たことがあるというのは情報戦に於いては非常に大きな要素です。
  ただどうしても、お互い強力な汎用札が無い、無いことが分かっていることで、普段生じている遊戯王の一番の醍醐味である駆け引きが発生しないのです。それは多分現代遊戯王ではなく温泉遊戯王なのです。
  楽しい、楽しいけど、いつまでもピンポンをやっている状態は本当に楽しいのだろうか?ということを思ってしまうのです。

  某漫画の好きな台詞に、『勝負事で、本当に楽しむ為には強さが要る』というものがあります。競技を楽しむには、競技を理解し、どう相手に勝つか、1歩だけでも上回るか真剣に突き詰める必要があります。そして、その突き詰めた先で最高の結果を得る瞬間が、勝負事に於いて最も楽しい瞬間であるように思っています。
  私は常日頃そう思っていますが、そうじゃない人が思っていたより多かったのかもしれません。

  ここで重要なのは、卓球をやるためのラケットを買う/汎用札を揃えるための費用とか時間を捻出するくらい、この先も楽しみたいと思いますか?ということだと、ここ最近思うようになりました。
  卓球で言えば、ラケットと流行りのラバー込みで、今だと大体10,000円前後で買えます。大体板が6,000円、ラバーが3,000円×2枚で、そこからまとめ買いだと2割引きといった具合です。

  Masterduelはどうでしょうか。
  先ず本当に必要な汎用札9枚のうち、1枚は格安で買えるので、残りが8枚。
  課金通貨約2,000円分でカードを80枚買えます(ガチャです)が、そのうち最高レアリティのものは2.5%で排出されます、ここは一旦2,000円で2枚は手に入るものとします。
  最高レアリティのカード3枚を何でも好きなカードに変換出来るので、狙ったカードを直で引けなくても、800枚分ガチャを回せば汎用札を揃えるが出来ます。20,000円ですね。
  そう聞くと高いですが、実はゲームを始めてチュートリアル等を少し進めると、約20,000円分の課金通貨を貰えます。
  そこから『テーマ』カードをを揃えるのですが、今は各『テーマ』の主要カードが固定で入っているパックが結構出ているので、最新のものに拘らなければ、残ったゲーム内通貨(足りなくても1パック1,000円程度)である程度揃えることが出来ます。
  となると、多少スタートダッシュしようと思っても、安く済ませたければ3,000円程度で"ラバー込みのラケット"を買える状態なのだと思います。

  後は、自分が揃えた道具に慣れて、その上で他の事試してみたくなったら違う種類のラバーの張替えをする。他のテーマカードを手に入れて、デッキの構築を変える。そして、また使いこなせるように練習をする。
  そういうことなんじゃないかな?と思っています。
  そして、卓球と遊戯王が似ていると思ったのは、ラバーは片側だけ変えるなら安く済むし板は据え置きだから安く済みます。
  遊戯王も『ブラックマジシャン』から『ゲートガーディアン』に変えるなら、ブラックマジシャンのテーマカードを流用出来るし、汎用札は据え置きなので安く済みます。
  勿論安いかどうかの感覚はその人次第なんですけど、ここでは全部交換が必要なものよりは明らかに安いということを理解していただければ幸いです。

  そしてこれは多分、卓球と遊戯王に限らず、他の多くのことに言えることなのだと思います。
  分かりやすくお金で換算しましたが、MasterDuelは課金しなくても、デイリーミッションやランクマッチの報酬、イベント報酬で毎月約20,000円分の課金通貨が配布されます。勿論、1日1回ログインして、2~3回決闘をするのが前提の設計ではありますが、他の多くの物事でも、お金か時間を費やすことでピンポンを卓球に出来ることは多いのではないかと思っています。
  そのお金か時間を費やすだけの価値を感じることが出来ますか?というのが本質的な部分なのではないかと思うようになりました。

  HeroWarsというゲームがあります。Youtubeで広告詐欺として有名なゲームですね。
  実はこのゲームも、少し遊んでいます。最初はパズルゲームかと思ったら違って、でも突き詰めていくと、結論から言えば札束で殴り合うパズルゲームでしたね。
  このゲームは、クランに所属した状態で、そのクランの誰かが大型課金をすると、その1部をメンバーが享受出来るというシステムを採用していて、とても幸いなことに、たまたま入ったクランに石油王みたいな方がいたおかげで、殆ど課金していないにも拘らず、リーダーボード上では大分良い場所に居ます。

  ところが、どうしても上の方に行けば行くほど避けては通れない課金コンテンツが1つだけあるのです。エレメントトーテムと呼ばれるものです。
  すごく簡単に言えば、このゲームは持っているプールの中からキャラクターごとの相性を考えて5人をピックして戦うのですが、エレメントトーテムと言うのは別枠で出せる6人目のキャラとでも言えば良いでしょうか。正直言うと、ピックする5人よりもこのエレメントトーテムの影響力が大きすぎて、これを最大値まで強化していない人は、クラン戦で大きな足枷を付けた状態になります。
  このエレメントトーテム、1~2本はイベントとかで貰えますが、全部で5種類あり、各6段階まで強化出来ます(全部で30本必要)。最低限1本強化されていれば良いですが、毎回手どれが手に入るかはランダムなので、狙ったものをストレートで強化出来るわけではありません。
  そして、1本手に入れるのに年に数回あるお得イベントが3~4本、各7,000円程。今すぐ強化したいと思った場合は1本30,000円程度必要になります。余ほど運が良く、また3年程度続けてもラケットを手に入れるのに50,000円以上、勿論相対的に強いことが求められるゲーム性ですから、より早くラケットを手に入れるには、より多くの資金が必要になってきます。時間で埋めることは出来ません。
  最初のうちは石油王様ありがとう!って感じで楽しんでいましたが、この圧倒的現実を突きつけられると、自分がやっていたのは、どこまで行ってもピンポンだったということを自覚させられます。
  とは言えこのゲーム、卓球をしてる人の方が少ないので、1日数回ポチポチする程度の暇つぶしをするのには程良く、なんだかんだ石油王の分け前でぶん殴れているうちは続けるとは思うのですけど、ただ書いてきた視点的な話をすれば、このゲームでラケットを買うような費用を捻出することはないし、時間も捻出しない。卓球を楽しんでいる人には申し訳ないけど、私はピンポンしか出来ないという感じなのだと思います。

  卓球やMasterDuelではラケットを手に入れてからが本当に楽しいと言いながら、HeroWarsはそうではないと言うのは不誠実ではないか。
  そう思ったことが、今回の一番の気付きであったように思っています。
 
  そういう視点が過去無かったから、去年のゲームコミュニティがうまくいかなかったのかな、と。
  どれだけ一生懸命、真剣に取り組んでも、結局"本物"のラケットを持ってる側からすれば、温泉宿に置いてある貸し出し用のボロボロの1,000円ラケットでやれるのはピンポンでしかないですが、そもそも競技用のカーボンラケットというものを触ったことがない、知らない人からすれば、一生懸命やって卓球を真剣に楽しんでいる状態なのかもしれません。
  私はゲームにおいては神髄を体験してきたと思っています。仲間と機会に恵まれて、国外大会も経験させて貰いました。
  そういった状態で、ゲームでピンポンして、最初は良いんです。集まって遊べば、楽しそうにしてもらえる。でも、それがずっと続くことに楽しさを見出すことが出来なかった。
  友達をピンポンに誘って、楽しい!って言ってもらえて、ならラケットも買おうよ!の上手い文言が無かったのかもしれないです。というより、勝手にラケットを買い揃えてきて、もっとやりましょう!って言う人と、そうじゃない人の温度差が何故生まれるのか良く分かっていなかった。好き、楽しいの中に差があることを知らなかった。
  今こうして俯瞰すれば、ピンポンは楽しいけど、そこまで入れ込むほどじゃない。そのハードルは私にとっては高い。ってことを口にはせず態度で云っていたのかもしれません。

  そうであれば今後どうしていくか、今こうして仮説ではありますけど、これが概ね事実に近いのであれば、今後誰かを自分の趣味に誘うとか、人に誘われたとき、曖昧で分かりにくいことはせずに、どういう姿勢で物事に向き合い、取り組んでいくんか誠実に伝えること。
  これが誠実さに繋がっていくのかなと思いました。
  人付き合いは、上手く行かなくなるかもしれませんけど。

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