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2歳児と私を繋ぐ魔法のコトバ

スピッツの歌詞は私にとって難解だ。
『ロビンソン』も『チェリー』も、春の小道をスキップするような軽やかなメロディーと陽だまりのような暖かな歌声に魅了されて、歌詞の意味はよく分からなくてもつい口ずさんでしまう。
ただ『魔法のコトバ』という曲は違った。
(初めて聞いた時にああこういうことを歌にしているんだなとすぐ思いついた。
もちろんそれが合っているかは分からないけど。)

魔法のコトバ二人だけにはわかる♪

一緒に長い時を過ごすと何気ない言葉に二人だけの意味が加わる。

例えば数年付き合った恋人との会話。
「今年もお花見の季節だね」
と男性が言ったら
「じゃあ稲荷ずしが食べれるね」
と女性に返される。
二年前のお花見に男性が作った稲荷ずしが好評で去年も桜の木の下で食べたのだ。
”お花見”は二人だけには稲荷ずしを食べるイベントになっている。
そんなロマンチックでも詩的でもない例えが浮かんだけど、つまりそういうことをスピッツは歌っていると私は解釈している。

恋人と自分だけには分かるくすぐったくなるような魔法のコトバ。
「ハチミツとクローバー」という少女?女性向けコミックの映画の主題歌だったので、愛らしい恋の歌だと思って聴いていた。

ただ、最近二歳になったばかりの娘と私との間でたくさんの魔法のコトバが増えている。
言葉をようやく話すようになった娘。
二語文、たまに三語出てくるようになった。

わんわん、いる
ママ、抱っこ、ほしいー

一生懸命自分の気持ちを言葉で表現しようとして、通じるととっても得意気で嬉しそうな娘の表情が可愛い。
言葉を通じて、気持ちが分かるようになって育児はぐっと楽になったし、コミュニケーションがとれてとても楽しい。
一時保育に行ったり、実家に帰省したり、人と関わったり刺激に触れるとどんどん言葉が増えていく姿に驚かされる。

「みて、ヒコーキ」
ベビーカーに乗った娘がそう言う。
空を見上げると確かに飛行機が空を横切っていて、私よりもずっと視野が広くて感心する。

とはいえ、まだまだつたないので何を言っているか分からないことも多い。
何度も何度も言っても私に通じないと怒って癇癪を起こすこともある。

まるでクイズや難解な問題のように娘の言葉が何を指すか考え込むこともある。

色々な思い出を振り返って娘の言いたいことにたどり着けるととても嬉しい。

「コロコロ」
と言えば、どんぐりのことだったり。どんぐりの童謡を良く歌っているからすぐに分かる。

「おばけ」
そうアイスクリームを見つけて言うのは白いおばけがアイスになるお気に入りの絵本があるから。

「バスくる」
と、夕暮れの送電塔を指して大興奮している。となりのトトロで猫バスが走っていた姿を思い出しているのだろう。

私だけには分かる。くすぐったい、甘い、愛おしい言葉たち。
育児に積極的な夫に話しても意外と気遣いないことが多くて面白い。

今回この記事を書く前に『魔法のコトバ』の歌詞を改めて読んでみた。

魔法のコトバ 口にすれば短く
だけど効果は 凄いものがあるってことで
誰も知らない バレても色あせない
その後のストーリー 分け合える日まで
花は美しく トゲも美しく
根っこも美しいはずさ
魔法のコトバ 二人だけにはわかる
夢見るとか そんな暇もないこの頃
思い出して おかしくてうれしくて
また会えるよ 約束しなくても
会えるよ 会えるよ

スピッツ『魔法のコトバ』

思い出して おかしくて うれしくて

そんな後半の歌詞にはっとした。
魔法のコトバで通じ合った日々は過去になるのだ。

そして、きっと、私はこんな風に娘と会話をした日々を思い出すのだろう。
この歌詞が言うように約束しなくてもまた会えるのだろうか。

残念ながら小さな娘とはもう二度と会えないのだろう。
だからこそ、この日々が大切な宝物だなと改めて思う。
魔法のコトバを忘れないように拾い集めたい。

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