【禍話リライト】「デスセックス」
とある中年の男性Gさんの体験談。
秋も深まり徐々に冬に近づくある夜のこと。
借りているマンションの自室に帰って早々に、隣室の開け放された窓から何か物音が聞こえてくるのに気付いた。
よくよく聞いてみると、その物音というのが明らかに男女のまぐわいのそれだったのだという。
更に女性の出している声というのが艶めかしい扇情的な喘ぎ声などではなく、「ア‘‘ァ‘‘~~~ッ‘‘!ギモヂィ…」とデスボイスとでも形容すべき悪声であった。
(なんでこんな窓開けて…寒いじゃん!聞かせたいのかよ!)
自室の窓さえ閉めてしまえば騒音対策はある程度出来るものの、Gさんは元来エアコン等の空調設備は得意ではなかった為、普段からよく窓を開けて過ごしているとのことだった。
その結果必然的に、隣室の情交を結んでいるその音を聞く羽目になり、(嫌だなぁ~)と思いつつ、そのことをTwitter(現:X)に投稿したのだという。
後日Gさんは、大学時代の後輩のCさんとドライブをしていた時に、「Twitter見た?」と件の話題を挙げてみた。
「あ~見ましたよ。大変ですね。隣がね、若いカップルだとね」
「そうなんだよ。今日もなんかカップルがね、またエッチしてるよ。デス声でね、もういい加減にしろよって感じだよ」
Cさん曰く、Gさんの話しぶりから察するにどうも一度だけではなく、その日以降も何度かその物音や声を聞いているらしく、知らぬ間に隣室の些細な物音に過敏になってしまっているような様子だったという。
しかしGさんはカップルへの愚痴だけに終わらず話を続ける。
そのことを以下にまとめると次のようになる。
(やだなぁ、隣のカップル…)
とその日もそんな風に思いつつ次の朝を迎えた。
するとその隣室に人が引っ越してきた。
(えっ!?ん?おぉ!?ん!?)
大いに混乱、驚愕する。
その間にも、次々と引っ越しの業者が荷物を持って隣室にやってくる。
(アレ?アレアレ?)
困惑していると
「こんにちは~!よろしくお願いしま~す!」
と隣室の入居者らしき人物が話しかけてきた。
その入居者の声は、明らかに自分の聞いたあのカップルの声と似ても似つかない。
知らなかった。
気付いていなかった。
隣室は暫く前から空き室だった。
二人きりの車内。
Gさんからこのことを知らされたCさんは、何とかフォローしようと思い、
「つまり、ほんとに『デス声』だったってことですね!」
とCさんなりの気を利かせたジョークを口にした。
それを聞いたGさんは「うん…」と小さく頷き呟いた。
「そうなんだよ…『死人の声』だったんだよ…」
Gさんのその一言に、Cさんもそれ以上何も言えず、ただ「はい…」と返事をする他なかった。
暫く車は、気が沈んだ中年男性二人を乗せたまま、とあるスーパーの駐車場に停車し続けていた。
出典:【禍話R 第二夜】
(2018/10/18)(03:45~) より
本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。
題名はドント氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。
【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。
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